58-14.名前決め会議
「『アルカディア出張所』は如何でしょう」
「没よ、ノアちゃん。真面目に考えて」
「冗談です。アルカが少々気負っているように見えたので」
「ありがとう♪ ノアちゃん♪」
流石私のヒロインだぜ♪
「別にギリシャに拘る必要もないんじゃない? 誰でもウェルカムなんでしょ?」
「ええ。そうよ、ホノカさん」
「別に他がダメだなんて言ってないわ!」
「わかっているわ、テラス。豊葦原は既に存在した地名だものね。あやかるにしても縁が薄すぎるものね」
「そういうことよ!」
せめて何か繋がりがないとね。あとは完全な造語にしちゃうのも手だ。
「『中央世界』と名付けましょう」
「流石にどうかと思うよ。ミアちゃん」
珍しくツッコミに回るホノカさん。
「冗談よ」
「ほんとにぃ?」
ふふ♪
「『新・中央世界』でどうかしら?」
「『真・中央世界』の方がよくない?」
キスイさんと影裡さん、それ伝わってるの?
「中央世界に喧嘩を売るのは無しよ。新秩序とかもやめておきましょう」
「「は~い」」
素直♪
「なら『ホノカちゃんキングダム』♪」
「私のよ!!」
どうどう。テラス。ホノカさんも冗談だから。冗談よね?
「え~? なら『テラスキングダム』?」
「王政でもないわよ!!」
組織名はアルカディアだもんね。もうあるもんね。
「じゃあ『コハルちゃんワールド』♪」
私世界と被るわね。
「ありゃ? ダメそう?」
ホノカさんって空気は読めるのよね。吹き飛ばすだけで。
「じゃあじゃあ♪」
ホノカさんは次なる案を考え始めた。
「女神の集い。集う地かしら……」
キスイさんは静かに呟いた。
「皆集うんだよ? 運営が皆女神みたいに美人ってだけで」
影裡さんが訂正する。
「重要なのはそこではありません」
ノアちゃんがもう一歩と口にする。
「集って何をするのかね」
ミアさんが答えを示す。
「やっぱり新しい中央世界? 成り代わる?」
ユーシャお姉ちゃんが話を戻す。
「究極的には避けられぬな」
銀花お姉ちゃんが肯定する。
「そうだね。刺激しないことばっかりじゃなくて、私たちの意思が伝わるような名前にしたいよね」
私の言葉に皆が頭を捻る。
「あまり意味を込めすぎたってブレるだけよ」
テラスが僅かに軌道を正す。
う~ん……。どうしよっか。
そもそも私たちが本当にやりたいことってなんだろう。
界賊を殲滅すること?
複層世界に平定を齎すこと?
中央世界と仲良くすること?
それとも中央世界を超えて成り代わる? 中央世界が神々の管理者を名乗ると言うなら、私たちは複層世界の管理者を名乗ってみようかしら?
ううん。違うのよ。私たちはそんな理由で集まったわけじゃない。そもそも何か特別な理由があるわけでもない。
皆で一緒にいるのも成り行きだ。気が合うから共に行動しているだけだ。
中央を引きずり下ろすだとか、界賊たちを滅ぼして複層世界に覇を示そうだとか、そんなだいそれたことを目論んでいる筈もない。
テミスさんにも伝えたとおりだ。私たちが目指すのはあくまでも中立だ。誰とも敵対せず、誰とも徒党を組まない。
本当に目指したいものとは、複層世界中のあらゆる世界を繋ぐ交易都市ならぬ、交流都市だ。
人も神も交わって流れゆく。一時の出会いに興じる地。
私はそんな世界を作り上げたいと思う。
界賊たちだって滅ぼす必要はない。その脅威が無くなるなら目的は果たせるのだ。この世界はそんな人たちだって受け入れよう。けれど決して留めるだけの場所にはしない。
中央世界に気を遣うって意味が無いわけでもないけれど、それ以上に皆には帰る場所があるべきだと私は思う。
私たちはその橋渡しを担っていこう。先代アマテラス様がスサノオ様と共にそう志したように。私たちは私たちなりのやり方で、この複層世界のためになることをしてみよう。
「決まったようだな」
「うん。銀花お姉ちゃん」
「いいよ♪ コハルちゃんので採用♪」
「ふふ♪ ありがとう♪ ホノカさん♪」
「小春様の想いを聞かせてくれる?」
「ええ。影裡さん」
この世界の名前は……。




