58-13.望むカタチ
「あらま」
「これは……」
「想像以上だね」
「おっどろいたぁ♪」
新世界の地表から遥かに遠い地下階層。
最初に苗木を植えた場所よりも更に更に低い場所だ。
そこには早くも広大な空洞が広がっていた。
中央には見上げる程に巨大な大樹が聳え立っており、その周囲を緑豊かな土地へと作り変えていた。
「……母さんもアニちゃんも張り切りすぎだ」
女神エーテルことエルちゃんと、アニムスさんの二人が何か仕込んでおいてくれたようだ♪
「「エリク~!」」
「キスカ! ファスタ! 来てくれたのか!」
「「きたー♪ きゃはは♪」」
銀花お姉ちゃんたちの世界で世界樹を管理しているのがアニムスさん♪ その娘である双子少女がキスカちゃんとファスタちゃん♪ 管理者って二人のことだったのね♪
「てことは♪」
「うむ! 繋がったぞ!」
やったね♪
「話が早すぎるでしょ。数年どころか一晩で終わってるじゃない」
ね~♪ びっくりだよね~♪
「あ♪ 皆も来たね♪ 皆なら大丈夫だと思うけど、あんまり近づきすぎないでね。それから直視も避けて。世界樹は情報の塊だから。魂が焼き切れちゃうよ」
なんて言いながら、世界樹の直ぐ側でなにやら作業を続けるシュリちゃん。一足先に始めていたようだ。
「おつかれ♪ シュリちゃん♪ テラスも連れてきたよ♪」
「もうちょい待って~♪ 守護神契約の前に仮の器作っちゃうから♪ 意思の疎通出来た方が手っ取り早いっしょ♪」
あらま。凄いのね、シュリちゃん。
世界樹から意識を引き出すらしい。つまりうちのレリアのような存在を生み出せるのだろう。
「シーちゃん。手伝ってあげて」
「イエス! マスター!」
二人がかりであっという間に肉体を生み出し、世界樹の意識を流し込んだ。
「……」
あ♪ 今ピクって動いた♪ もうすぐ目覚めそう♪
「結局この世界の名前はどうするのだ?」
「決めたわ♪ 『アゴラ・リマニア』よ♪」
「広場と港か。人が集まりそうだな」
あれ? 銀花お姉ちゃん、ちょっと微妙な顔してる?
「うむ。良いと思うぞ」
そう? ならよし♪
『意味被ってるじゃない』
大切なことなので二回言いました♪
『珍しく冴えが無いわね。浮かれすぎよ』
イロハも気に入らないの?
『テーマ性が弱いわね』
むしろ強くない?
『本当に主張したいのはそこなのかしら?』
う~ん……。
「作戦か~いぎ!」
私はその場の数名を深層に連れ込んだ。
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「あの子が目覚める前にもう一度会議を行います! 議題はこの世界の名前についてです! あの子にはその名前から一部をあげたいと思います!」
「うむ。付き合おう」
「ありがとう♪ 銀花お姉ちゃん♪」
「私の案もしっくりこんのなら無理に拾おうとせんでよい。小春の心に最も響いた言葉を選ぶのだ」
「うん! そうするね!」
「名前かぁ~。私そういうの苦手だから任せるよ~」
シュリちゃんはこの会議よりもシーちゃんと技術談義を続けたいようだ。うんうん♪ そっちも大切だね♪ 世界樹の管理に関する事でもあるし♪ その先の話もあるもんね♪ 任せたぜ♪ 二人とも♪
「なんならアルカディアでも構わないわよ?」
テラスが妥協案を提示してくれた。
「ううん。他のを考えてみる」
「そう。ここならいくらでも時間があるわ。気の済むまで考えてみなさいな」
「ありがとう♪ テラス♪」
新世界の成り立ちは複雑だ。元々はテラスとツクヨミさんの抗争に決着を付ける意味合いが強かった。二人の夢を叶えるには原初神の生み出した土地が必要なのだと考えた。
界賊対策の拠点としたのは成り行きだ。テミスさんにはそのためだと言い張っておいたし、表向きにはこっちの理由の方が大きいと言えるだろう。
そして今の私にとって何より大切なのは、この世界が皆で集まれる場所だという点だ。住む世界もバラバラな私たちがこうして集まれたのは、間違いなくこの新世界のお陰だ。だからどうしてもそっちの方に引っ張られてしまうのはあるのだろう。イロハの言う通り、私は浮かれているのだろう。
けれどそれだけじゃない筈だ。界賊の件もそうだし、中央との対立の話もある。この新世界に皆が期待するのはお祭り騒ぎだけじゃない。私たちがやるべきことはごまんとある。
本当に相応しい名前を考えよう。私たちの目指すべき未来を言葉にしよう。形にしよう。




