58-12.新世界運営会議
酒池肉林の乱痴気騒ぎから、一夜明け。
私たちは再び会議室に集まった。
「何勝手に酒の席で決めてんのよ。というか私も呼びなさいよ」
ご尤も。
「ごめん、テラス。そういうわけだからさ。先ずはこの世界の時間流をどうにかしちゃいたいなって」
「そうね。それは必要ね。でないとイコルが役に立たないもの」
テラスは、「コハルちゃ~ん♪」と怨霊のように縋りつくイコルに目を向けた。
私たちの生きている世界で数日過ごしただけで、この新世界では数百年が経過してしまうのだ。このズレを埋め、尚且つ逆転されないよう抑えるのが先決だ。
「そのためにもやっぱりテラスには守護神になってもらいたいの」
「もちろん否は無いわ」
それは何より。
「手筈としては、まず苗木の成長を待つ。この世界に完全に根付いて、大樹になるまで見守る必要がある」
「それこそ何百年掛かるのよ」
「正直わからん。数年か、下手をすれば千年と掛かるやも。世界が生まれたばかりである以上、そう時間は掛からん筈なのだが……なにぶんここは発展が早すぎる。その成長速度に追いつけるか次第だ」
銀花お姉ちゃんが代わりに答えてくれた。
「成長すればする程時間のズレは無くなるわよ。多少強引にでも今のうちに済ませてしまいなさい。でないと迂闊に活動できなくなるわよ」
そうだね。この世界の時間が速く流れているのって、本当に今だけだもんね。間違いなく素質そのものはクオレリア以上だ。きっとすぐに追い抜くだろう。
そうなれば百年なんて待っていられなくなる。時間の掛かるものは今のうちに済ませておかないとだ。
「何かあれば遠慮なく言いなさい。協力は惜しまないわ」
「うむ。感謝する」
これで世界樹の件は一区切りかしら? 担当者は用意してくれるって話だったし。
「それで? テラスの議題って?」
「名前よ! いつまでも『新世界』だなんて味気ないわ! 立派な名前を付けなさい!」
いつもの。
「それだけ? 他に実務的な問題とかは?」
「ある筈ないでしょ! 誰が管理してると思ってんのよ!」
自信満々だぁ♪
「アルカディアでどうですか?」
ノアちゃん? もしかして全部にその名前付けるの?
「それは組織名でしょ! 世界の名前は別に考えるのよ!」
よく言った♪ テラス♪
「ならば『ノアズアーク』と」
「あんたのもんじゃないでしょ! 世界もアルカも!」
「アルカは私のです!」
「ノアちゃん。今回は諦めて」
「仕方ありませんね。もちろんアルカを諦めたりはしませんよ。今更言うまでもないことですが」
もう♪ ノアちゃんたら♪
「『ヨモツヒラサカ』なんてどうかしら?」
「没!」
あら意外。テラスは気に入るかと思ったのに。
それに意味的にもぴったりなのに。黄泉比良坂は、現世と黄泉の国や根の国を繋ぐ、異世界同士の交差点みたいな場所なのに。
「ツクヨミに奪われたものに執着するつもりはないわ! それに何より! 混沌の原初神の生み出した大地にはそぐわないわ! この地に根付かない名前に意味は無いわ!」
ご尤も。
「なら『トリヴィウム』?」
たしか三叉路って意味よね。トリウィアとも関係のある言葉だ。
「しっくりこないわ! 却下!」
厳しい。
「皆はどう? 何か名案ある?」
「ふっふ~ん♪ よくぞ聞いてくれました♪」
早速ホノカさんが名乗り出た。
「豊葦原の~♪」
「却下!」
「えぇ~!? なんでよ~!」
「話聞いてなかったの!? ミア! ホノカを抑えておきなさい! そのポンコツはあなたのでしょう!」
「善処するわ」
テラスのあんまりな物言いに慣れた様子で返すミアさん。
「影裡。あなたも何か答えなさい」
「そういうキスイこそ。この手の知識は豊富でしょ」
「ニューオーダーなんてどうかしら?」
「もう少し捻りが欲しいかな」
「ならやっぱり影裡が考えなさいよ」
「そうはいってもな~」
仲良し♪
「銀花お姉ちゃんは?」
「小春が付けるべきだ。名付けには意味がある」
「案出すくらいしてあげて。可愛い妹が頼ってくれてるんだよ。エリク」
「うむ……」
あはは♪ ありがとう♪ ユーシャお姉ちゃん♪
「……『アゴラスティア』はどうだろうか。ギリシャでは広場をアゴラと呼ぶ。地名風にアレンジしてみたのだが」
「今のところは一番マシね! ギンカは優秀じゃない!」
テラスは真面目な銀花お姉ちゃんがお気に入りらしい。
「ありがとう♪ 銀花お姉ちゃん♪」
「うむ。小春も改めて考えてみておくれ。やはり小春が決めるべきだと私は思う」
「あなた気に入ったわ♪ 私の片腕になりなさい!」
もうアマノとウズメがいるでしょうに。テラスには。
「ダメ。エリクは私の。誰にもあげない」
あはは♪ 流石ユーシャお姉ちゃん♪ 二人も仲良しね♪




