58-04.クランマスター会議・続
「アライアンスだぁ? それに何の意味がある!」
わかってない子いたじゃない。一人だけ。
他の人たちは既に納得しているようだ。ギルドが事前の根回しを済ませておいたのだろう。
逆にこの子はなんで知らされていないのだろう。そもそも何故この場に呼ばれたのだろう。確かに弱くはないのだろうし、クランマスターなのも間違いないようだ。
ジュジュの調査資料にも乗っていた。ならばギルドが土壇場で数合わせに入れたわけでもあるまい。
なにも丸っきり資格が無いというわけじゃない。わざわざアライアンスに加える理由は思いつかないけど。
「俺たちにこのガキを担ぎ上げろってか! 遊びじゃねえんだぞ! わかってんのか!? こんなガキに責任だけ押し付けんのかよ!? 胸クソ悪い! 何考えてやがるんだ!」
あら。私を心配してくれているのね。分かりづらいだけで良い子なのかもしれないわね。
「なら坊やが代わりを務めるかい?」
クックックと妖艶なお姉様が蛇を思わせる笑みを向ける。
「ふっざけんな! なんで俺らが責任なんぞ押し付けられなきゃなんねえんだ! そりゃギルドと国の役目だろうが!」
あ、この子ちゃんと理解してるんだ。
「おめえもボサっとしてねえでなんとか言いやがれ!」
また私に振ってきた。
「何がアライアンスだ! クランってのは所詮パーティーの集まりだろうが! ギルドの尖兵でも代理でもねえ! ギルドが矢面に立ちたくねえってだけじゃねえか!」
仰る通りね。
「ビビってんじゃねえぞ! 普段えらっそうにふんぞり返ってんのはその為だろうが! 俺らを好き勝手使うのはお前らの仕事だろうが! 俺らの仕事は魔物を狩る事だけだ! 俺らを使うのはお前らの仕事だ! 使い道まで俺らに委ねようなんざ虫が良すぎんだろうが!」
「ありがとう、ディアン君」
「っだ!?」
うん? なんて?
「あなたの言い分は理解したわ。その意見には同意します。そうね。アライアンスにはそういう側面もあるのでしょう」
「……んだよ。他に何があるってだよ」
ドサリと腰を下ろした。
話を聞く気になってくれたようだ。
「アライアンスの主導権はあくまでギルドが握る。その責任も。そういう話ではあるけれど、実際何か問題が起きた時に責任を取らされるのは同盟の盟主となるでしょう。ギルドがどのようなつもりでいようと、社会の批判というのはより有名な個人へ集まりやすいものだもの。責任を取ってギルド幹部が首を切りました、なんて言われても民は納得しないわ。その点、アライアンスの盟主なら話は別よね。だって個人としての知名度が違いすぎるもの。大きな立場を与えれば、より大きな責任を負わせることも出来るようになるわよね」
「……わかってんじゃねえか。ガキのくせに」
ふふ♪ ありがとう♪
「先日の騒動も、アライアンスを組んでまで対処に当たる必要があったのかついては疑念が残る。もちろん当事者であった私個人としては全く逆の意見を表明させて頂きたいところではあるけれど、傍から見て大げさだという見解も理解しているわ」
そういう意味では私たちこそが発案者みたいなものでもある。多少意図的にギルドの危機感を煽ったのは事実だ。
「私のクランには一騎当千の優秀な子たちが揃っているわ。けれどそもそもの数が足りていないの。今回は偶然間に合っただけよ。今後も手が足りるとまでは言い切れないの」
「六百年に一度の災いがそう何度も起きてたまっか」
あら。そこまで知っていたのね。
「私はこれから先、より大きな事件が続いていくものと考えているわ。先ずはその根拠を示しましょう」
事前にジュジュが用意してくれていた通りの文章を読み上げていった。
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「黒幕だと?」
ギルド長が訝しげに問いかけてきた。
事前の打ち合わせに無かった話だ。警戒するのも無理はない。
かといって私を止めるつもりもないようだ。むしろ内容に興味を示している。やはりこのギルド長は少々変わり者だ。
「全ての事件を裏で糸引く存在がいるの。六百年前から、或いはもっと前、それこそギルドの設立以前からね」
誇大妄想だと切って捨てるかしら?
そうされないだけの説明は出来たつもりだけど。具体的にはカルネの実験施設についてだ。十年前の事件で見つかった拠点以外にもいくつか痕跡を発見できた。それらを全て伝えたのだ。もちろんカルネと『雷光』の名は出していない。
「さて皆さん。今一度お考えを。私と共にこの巨悪を討つ覚悟はあるかしら? 敵は世界を牛耳る黒幕よ。ギルドの裏にも間違いなく潜んでいるわ。だから無理にとは言わない。聞かなかったことにしてもらっても構わない。或いは後ろ盾である誰かさんに伝えてもいい。皆さんの選択に任せるわ」




