58-01.神器の真価
「姉者どもが随分と迷惑を掛けたのう」
スサノオ様は既に状況を把握していた。
私たちが一旦自分たちの世界に帰った間に、外界では随分と時間が経っていたようだ。そう考えると義理堅いものだ。私たちと会ったのは、スサノオ様にとって大昔の事なのに。
やっぱり先に寄るべきだったわね。考えが甘かったわね。うっかりしていたわ。複層世界での立ち回り方を理解できていなかったわね。反省しましょう。
「こちらこそ。顔を出すのが遅くなってごめんなさい」
「ガッハッハ♪ 律儀じゃのう♪ 気にする必要はない♪ 慣れたもんじゃ♪」
おおらかね。
「しかしまさか、下の姉者の言っとった代わりの補填が、上の姉者じゃとはのう♪ ガッハッハ♪」
別にツクヨミさんに貰ったわけじゃないけどね。むしろツクヨミさんは約束を忘れて色々持ってったくらいよ。ちゃっかりしてるわよね。敗者を生きて帰してくれたんだから、十分ちゃあ十分かもだけど。
「勘違いしてんじゃないわよ! 愚弟!」
もう。テラスったら。
「ガッハッハ♪ 元気じゃのう♪」
これじゃあ、お爺ちゃんと孫娘だ。
「あんたが補填なさい!」
「ガッハッハ♪ よかろう♪」
良いんだ。なんかごめんなさいね。うちの子が。
「それで! 何が欲しいんじゃ♪」
「あんたの革命軍を寄越しなさい!」
何を言うとんのじゃ。
「ガッハッハッハ!」
何を笑っとんのじゃ。
「要らないわよ。横着してないでまた一から自分で集めなさい」
「仕方ないわね! 取り消しよ!」
「ガッハッハッハ!」
なんかもう、何を言っても笑いそう。
「なら太刀と弓矢よ! 持っているんでしょ!」
もしかして神器の話してる? けどそれってオオクニヌシに渡しちゃったやつじゃない?
「無いぞ。下の姉者が持っていってしもうた」
あらま。いつの間に。というか本当にスサノオ様が持っていたのね。オオクニヌシが返還したのかしら?
たしか「生太刀」と「生弓矢」には死者を蘇らせる力があるって話よね。ツクヨミさんが欲しがりそうなものだわ。
「琴ならあるぞ」
「要らないわよ!」
「いや必要でしょ。それこそ」
世界中に言葉を届ける力があるとされるものだ。人を集めるにはそれこそ最適じゃない。
「ダメよ。あれには心を集める性質もあるわ。ただ言葉を届けるだけの代物ではないのよ」
えっと? つまり? 洗脳的な効果もあるってこと?
なるほど。だから頼りたくないのね。
さっきは革命軍ごと寄越せなんて言ってたのに。奪い取った革命軍の掌握は自分でやるつもりだったのね。
「決まらんのじゃな。ならば娘でも」
「要らないわよ! アルカには私がいるんだもの!」
……ちょっと残念。
「アルカ!」
ごめんちゃい。
「やっぱり琴を寄越しなさい!」
何に使うつもりかしら?
「ガッハッハッハ! ほれ♪」
伝説の神器が目の前に……ちょっと感動。
どうせなら草薙の剣とかも見てみたかったけど。
「邪魔したわね!」
「またいつでも来るがよい♪ ガッハッハッハッハ♪」
お邪魔しました。
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「またえらいもの手に入れてきたね」
ニクスは琴を手に取って眺めている。
テラスは何故か私に琴をくれたのだ。スサノオ様の試練になぞらえたのかしら? 私がオオクニヌシでテラスがスセリビメ? 黄泉の国と根の国って、どちらも黄泉比良坂に繋がっているのよね。つまりこの琴は嫁入り道具とか持参金的なやつなのかもしれない。
「まったく。そこまでしろとは言っておらんだろうが」
あらテミスさん。来ていたのね。
「この琴を証として、革命軍と界賊王勢力が私の味方についたと捉えてもらえるかしら?」
「ふざけるな。それがマズいと言っておるのだろうが」
だよね~♪
「安心して。界賊王の方は界賊王本人だけだから。傘下は丸ごと乗っ取られたわ」
「尚悪いわ!!」
もう。見なかったことにするって言ってたじゃない。
「大丈夫よ。迷惑はかけないわ。新しい拠点もあるし」
「それが一番の問題だ……」
な~るほど。
「見なかったことにして頂戴。あれを管理世界にするつもりはないから」
「なんだと……?」
「中央の口出しは受けないわ。あれは中立の地よ」
「ふざけるな。それこそ認められるわけがないだろう」
「なら戦争でもする? 私たちの土地を奪いたいと言うなら相応の覚悟を示すことね」
「……何を考えている」
「必要なことよ。今言えるのはそれだけね」
「お前たちは」
「いえ。口出しする権利なんて無いわよね。最初から中央は世界の管理者ではないんだものね。あくまで神々を管理する者たちであると、あなたがそう言ったのだものね」
「……」
これで少しは反省してくれるかしら?




