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異世界で始める白猫少女との二人暮らし ~だったのは最初だけ。最強の悪魔女が美少女ハーレムの主になって神々と世界を従えるチートな日常譚~  作者: こみやし
57.白猫少女と三貴子の計画

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57-26.神話の再演


「マスター! 目覚めてください! マスター!」



 シーちゃんが焦っている。ただならぬ声だ。


 快適とは言い難い目覚めだった。何かがおかしい。何かが乱れている。何か初めての感覚が全身を縛っている。


 気だるさを乗り越えて瞼を開く。


 シーちゃんの焦りと安堵の顔が視界いっぱいに広がった。



「マスター! 緊急事態です! 我らは敗北しました!」


 ……マジ?




----------------------




 深層に場所を移し、シーちゃんからだいたいの状況を聞き終えた。


 ノアちゃん……無事でいてくれるかしら……。



「問題ありません。ノアの内在世界に忍ばせた探査機が健在を確認しています」


 それは朗報だ。



「イコルとテルスは?」


「未だ行方知れずです。二人の方こそ心配は要りません。神ツクヨミは対処できずに排出しただけですから」


 なんなら二人が管制室を取り戻してくれるかも……なんて、流石にそう上手くはいかないかしら。



「これは厄介な状況ね。早くケリを付けなきゃイオスが戻ってくるわよ」


「その可能性は極めて高いかと」


 ブチギレるでしょうね。お気に入りの小春ちゃんが他所の系譜の若造に取られちゃったんだから。あっちのツクヨミさんは随分な無茶をしてくれたものだ。



「いっそ全て任せてしまおうかしら?」


「テラスの命は保証できません」


「最悪、神話大戦でも始まるかしら?」


「否定はできません」


 どうしてこうなったぁ~……。



「ノアちゃん以外の皆も無事なのよね?」


「最悪イコルならば屍鬼化を解けるかと」


 むむむぅ……。



「シーちゃん。仮によ。イオスが乗り込んできて船の冥界化が強引に破壊された場合。屍鬼化した皆は生者に戻るのかしら? 或いは消滅してしまうのかしら?」


「……後者の可能性が高いかと。より正確には、船の一部として取り込まれるものかと」


「……だとするなら、屍鬼化した皆の確保。冥界化の解除。イコルの……てそうだ。抱き寄せればいいじゃない」


「っ!!」


 シーちゃん気付いてなかったの?



「もしかして抱き寄せ魔法は屍鬼化も解けるんじゃない?」


「っ!?!?」


 驚きまくりね。シーちゃん。



「すぐに戻りましょう。先ずはイコルを呼び戻せるのか試してみましょう」


「イエス! マスター!」




----------------------




「コハルちゃ~ん!!」


 最初にイコルが現れた。



「役目を果たせず申し訳ございません、小春さん」


 次にテルスを呼び戻した。



「皆を救い出すわ。一人ずつ抱き寄せ魔法で呼び戻すから、イコルとテルスは屍鬼化の解除をお願い」


「「がってん!」」


 今度はノアちゃんを抱き寄せた。



「……アルカ!? 無事だったのですね!?」


 それはこっちのセリフよ。ノアちゃん。



 続けて、メグル、ウズメ、アマノを呼び戻した。



「サグメは呼び戻せないの?」


「流石に無理よ」


 私がいくらチョロいからって、殆ど話したことも無い相手を抱き寄せ魔法で呼び出せる程愛せる筈がないもの。



「いいわ。ならテラスを」


『君たちには本当に驚かされてばかりだね』


 ツクヨミさんの声が聞こえてきた。



「降参する気になったかしら?」


『ああ。だからどうか姉上だけはそっとしておいてほしい』


 勝手なことを言うものだ。誰よりテラス自身が一番それを望んでいないのに。



「あなたは誰のために動いているの? 自分のため? かつてのアマテラスのため? それともテラスのために?」


『……これは姉上の望みだ』


「それはテラスの望みじゃないわ」


『……そうだね。しかしあの子が救われる道もまた、この先にしかないのだよ』


「どういう意味?」


『姉上の望みは全てを取り戻すことだ。自ら黄泉へと渡り、母を呼び戻し、母を呼び水として父を取り戻す。二柱の助力を得て原初たる神を目覚めさせ、真なる高天原を創生する。それが計画の全貌だ』


「……戻ってくるつもりなの? 先代のアマテラスが?」


『その通りだ。君たちがテラスと呼ぶ彼女は器に過ぎない。いずれ姉上が戻るべき器だ。しかしそれは彼女が生者である場合の話だ。黄泉の国の住民となった彼女が姉上の器となることはないのだよ』


姉上アマテラスの望みだと言ったじゃない」


『望む全てが得られるのであれば、黄泉の側でも構うまい』


 ……そんな筈はない。今の話が本当ならアマテラスは高天原の在り方に拘りを持っている。アマノイワトの内に作られた偽物の箱庭に満足なんてする筈がない。



「あなたの言葉は矛盾しているわ。本当は自分でもそうならないと理解しているのでしょう?」


『いいや。これこそが唯一の可能性だ。我らの母上が黄泉の国を出ることは叶わない。我らの父上と現世にて再会する可能性は万に一つもありはしない。しかし父上を黄泉の国に引きずり込むことは出来る筈だ。他の神々を黄泉の国へと招くことは出来るのだ。原初たる神の力を借りずとも、高天原はここにある。そう姉上に示せばよいだけだ』


「そもそもイザナギは見つかっていないのでしょう?」


『現れるさ。何せ君がいるのだから』


 ……私?


天沼矛あめのぬぼこはここにある。渾沌たる君がここにいる。姉上が母上を連れ戻せば、あと足りぬのは父上だけだ。故に彼の神はこの地に姿を現すだろう。全てを初めからやり直すだろう』


 ……そう。そういうこと。


 黄泉の世界に新たな国を産み落とすつもりなのね。


 確かにそれなら、ここに生まれるのは偽物の高天原なんかじゃない。一から創造し直された、本物の高天原だ。


 高天原は天地開闢時点で生まれているから、その後の天沼矛で生み出されたものではないけれど、その程度は誤差の範疇だろう。求めているのは原初の神々が御わす高天原ではなく、その後のアマテラスによって統治された高天原の方なのだから。


 ただ世界が違うだけだ。今は仮想に過ぎない黄泉の国と言えど、イザナギとイザナミによる神話の再演を経た後であるならば、きっと確かな存在として成り立つのだろう。


 本当に原初神など呼び出す必要は無かったのだ。イザナギとイザナミは、原初の神々から既にその役割を請け負っていたのだから。そのための手段を持っていたのだから。


 あのツクヨミはアドリブで計画を書き換えたのだ。全ては私が現れたからだ。きっとスサノオ様だって知らされていないのだろう。これらは全て彼女の独断だ。


 だとするなら、何故サグメさんが手を貸したのだろう。ここまでした以上は、メグルへの仕返しだけが理由ではないのだろう。何か彼女なりに思うところがあったのだろうか。



 いや。今はそれよりも。


 問題はあっちのツクヨミが独断で動いていることの方だ。彼女は本心からアマテラスのためになると信じて行動している。だから何を言っても納得はしないだろう。例えイオスの襲来を警告しても、徹底抗戦を貫くのだろう。



「そもそも、本物の黄泉の国へと渡ったアマテラスがイザナミを連れ戻せるという根拠は? 彼女はイザナギの娘であっても、イザナミの娘なわけではないわ。イザナギが単独で生み出した筈でしょう? 本当に縁も無い相手を探し当てられるのかしら?」


『縁ならあるさ。私と姉上は黄泉の汚れから生まれたのだ。それは間違いなく母上との繋がりだ』


 ……そういう解釈になるのね。



「だとしても連れ戻せるとは思えないわ。ここは本物の黄泉の国ではないもの。よく似ているだけの偽物よ。地続きなわけじゃない。ここへ来るには必ず現世を通る必要があるわ」


『論外だ。当てずっぽうは見苦しいよ。その程度で揺さぶれるとは思わないことだ』


 ……そう。流石はトリスメギストスね。ここは本物の黄泉の国なのね。



「私とテラスの繋がりはどうするつもり? 私が混沌として分解されて国産みの礎となってしまえば、パスの繋がった彼女だって無事では済まないわ」


『誤算だった。パスの解消は難しい。だから反転させたのだよ。少しでも影響が小さく済むようにね』


 そこは一矢報いれたわけね。素直に答えてくれるものね。これは彼女なりの時間稼ぎなのだろうけど。もしかしたら誠意でもあるのかも。



「混沌の原初神が黙ってはいないわ」


『好都合だ。是非とも礎となって頂こう』


 イオスを素材にしようだなんて。豪気なものね。



「あなた知らないの? 原初神が一柱でも欠ければ時間軸ごと消滅するのよ?」


『この程度で完全な消滅に至りはしないよ』


 たとえ力の一部を削るだけに過ぎないとしても、いずれまた復讐されるのがオチでしょうに。


 完全な高天原を生み出した後でなら、対抗出来るとでも思っているのかしら?



「随分見切り発車な計画ね。素直にお姉さんの計画に従ったら? あなたそういう才能無いわよ?」


『姉上の計画通りに進めれば、君もあの子も無事では済まないよ』


 まさか私のことも救ってくれるつもりでいるの? あくまで目的は、私の持つ混沌の原初神の力だけってこと?



「あなたは随分優しいのね」


『姉上を悲しませたくないだけだ。それはあの子であっても変わらない』


「やっぱりダメね。テラスは返してもらうわよ」


『やめておくれ。どうかそれだけは。姉上はもう一刻たりとも待ちはしないだろう。あの子が生者に戻った瞬間に姉上もまた帰還するだろう。姉上本来の計画を進めるために』


 私の力が流れ込んだせいね。アマテラスはテラスが成長するのを待っていたのね。



「イザナミは既に確保していると?」


『姉上ならば間違いなく』


「ならどうして今のこの場に現れないの? ここが黄泉の国であるなら、いつだって姿を現せるのでしょう?」


『姉上は本来の計画に固執している。とはいえ私の計画に賛同してくれるのも時間の問題だろう』


 ツクヨミはそれを待っているのね。そしてそれこそが、私たちにとってもタイムリミットなわけね。


 私はそれまでにあのツクヨミを説得して考えを変えさせなければならないと。


 しかしどうしたものか。「それはどうかしら?」とこれ以上続けても意味は無いだろう。ツクヨミはとんでもない頑固者だ。これ以上の言葉での説得に意味があるとも思えない。


 ならテラスを強引に呼び戻す? 生者にした上で、乗っ取ろうとしてきたアマテラスを叩きのめす?


 そっちの方が話は簡単かもしれない。こちらにはイコルとテルスもいるんだから。アマテラスだってそう簡単にはテラスを乗っ取れないかもしれない。


 ただ問題なのは、今現在私がテラスの隷属下に置かれていることだ。アマテラスが乗り移れば、パスもそのまま引き継がれるだろう。流石のイコルとテルスも、私を人質に取られては動きが鈍るかもしれない。


 ……他に何か無いか。


 何か見落としていることは……。何処かに攻略の糸口は無いのかしら……。



「……あなたがテラスの記憶を書き換えたの?」


『何の話かな?』


「今のテラスが別天津神ことあまつかみを原初神と認識していることよ」


『……原初たる神の名は天之御中主神あめのみなかぬしのかみだ』


 そう。あなたも知らないのね。



「誰かの思惑が紛れているわよ。このまま進めれば最後の最後でひっくり返されるかもしれないわよ」


『……』


 ツクヨミが初めて戸惑った。



「先に原因を突き止めましょう。でないと取り返しのつかないことになるわ」


『……そのようだね』

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