57-24.反撃の狼煙
『……なによこれ』
げ。起きちゃった。寝てる間に契約を済ませてしまおうと思ったのに。
私とテラスは、現在深層に設置された医療用カプセルに放り込まれている。深層の私は精神体に過ぎないので、本来であれば契約を結ぶのは難しい。それをシーちゃんの技術力で補うことにしたのだ。
今の私はただの精神体じゃない。シーちゃんたちの作り出した特別な肉体に入っている。もちろん本体程の力は無いが、これでも十分賄えると判断したのだ。カプセルは不足分を補うためのものだ。
もちろんイコルとテルスもすぐそばで契約のサポートをしてくれている。アマノとウズメも装置に繋がれて、シーちゃんにテラスの術式を解析させてくれている。
『大人しくしていてね。もうすぐ終わるから』
『勝手なことしないでよ』
良かった。言葉の内容はともかく、落ち着いてはくれたようだ。声音が元のテラスに戻っている。
『大丈夫。私が守ってみせるから。約束は必ず守るから』
テラスの大切なものは全て私のものだから。そう約束したのだから。たとえテラスが怒りで忘れてしまったとしても、私は決して違えないからね。
『……悪かったわね』
『ふふ♪ いいえ~♪』
『……協力するわ』
『ありがたいわ♪』
テラスまで協力してくれるなら成功間違い無しよ♪
「始めるわよ~♪」
『お願いね♪ 皆♪』
「「「「「がってん!」」」」」
イコル、テルス、シーちゃん、イロハ、ハルちゃんが同時に術式を起動した。
私とテラスの間にパスが繋がっていく。イオスがサクッとやってのけてしまうのと同じもの……とも言えないレベルのものではあるけれど、それでも五人のスペシャリストが織りなす極めて高度な術式は、一切の淀み無く着実に、思い描いた通りの結果を齎してみせたのだった。
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「上手くいったみたいね」
カプセルから出たテラスは、確かな手応えに頷いた。
「アルカ……? アルカ!?」
「問題ありません。マスターは負荷に適応するための眠りについたのです」
「けど~。ここでは限界があるわ~」
「そうね。こればかりは本来の肉体が必要よ。向こうに戻りましょう」
「時間稼ぎも必要ですね。そちらも私とイコルにお任せを。我々は死者に対して特に強い権能を有しています」
神の不死を司るイコルと、死者が還るべき大地のガイア。この二柱に屍鬼の干渉は通用しない。
「ハル、イロハ。我らはアマノイワトの権限を掌握します」
「「がってん!」」
「アマノ、ウズメ。あなた方はアマテラスと共に神ツクヨミの牽制を。何でも構いません挑発して気を引いてください」
「「はい!」」
「いっそ乗り込んでやるわ! 今の私なら負ける気なんてしないもの!」
「構いません。それくらい派手にやってください」
最低限のやり取りを済ませ、彼女たちは決戦の場へと戻っていった。
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「アルカは上手くやったようですね」
「ノア。お口チャックよ」
余計な事を口にしてツクヨミに気付かれたら台無しだ。向こうにはサグメだっているんだもの。まったく。あのバカな子にもお灸を据えてやらないとだわ。後で覚えてなさいよ。
「良いんですよ。サグメはどうせメグルのことしか見ていませんから」
「知ったようなことを言うわね」
その通りだけど。
ノアはよく見ているわね。短い付き合いであの子のことを随分理解出来たものだわ。あんなに分かりづらい子なのに。
「作戦は次の段階に進みました。予定通り我々はサグメの注意を引きましょう」
「そう簡単な話でもないのよ。あの子ったら気まぐれなんだもの」
「らしくないですね。弱音なんて。本当は戦いたくないのですか?」
「そりゃそうよ。折角家族になったんですもの。仲良くしたいに決まっているじゃない」
「残念ですね。向こうはそう思っていないようですよ」
「本当に残念だわ。ここで寝返って帰ってきたら抱きしめてあげるのに」
そろそろ三文芝居も十分かしら。
サグメの気が変わってツクヨミを止めてくれたら助かるのだけど。
とはいえあまりやり過ぎてもね。あの子は疑り深いから。少しずつ種を蒔いていく程度にしておきましょうか。




