57-20.結論
「……飛躍しすぎではありませんか?」
最初に反応したのはノアちゃんだった。
その一言をキッカケに、メグルの衝撃的な発言で固まっていた場の空気が再び動き出した。
「そうよ。原初神の性別や名前なんてその時々で変わるものでしょう? 神々ですら到底及ばない長い時を生きているんだもの。調べる内に情報が錯綜することくらいあるわよ」
「どうなの? テラスは昔からコトアマツを原初神と信じていたのかしら? それともつい最近知った情報で知識を上書きしただけなのかしら?」
「……私にとっての原初神はコトアマツカミよ。メグルにだってそう教えたわ」
……本当に? 勘違いではなく?
「ならばいつの時点で時間軸を渡ってきたのですか?」
「少なくとも私と別れた後よね」
ノアちゃんとメグルったら、切り替えが早いわね……。
そりゃあ今更、別時間軸絡みの人物が現れることは珍しくもないけれど……。
「それに随分近い時間軸から渡ってきたようです。おそらく隣接したどこかでしょう」
……本当にそうかしら。
原初神の違いって相当大きなズレじゃないかしら。所詮、各時間軸上に存在する原初神は端末に過ぎないとはいえよ。
「元のアマテラスはどこへ消えたのよ」
そうだ。その問題もある。
「パトラと同じなのかもしれません。記憶だけが渡って来たのやも」
「それがありなら、そもそも時間軸を渡ってきたなんて勘違いで、原初神の方から記憶を刷り込んできたって可能性はないかしら?」
彼らならそれくらい簡単にやってのけるだろう。偽神だって似たようなことは出来るんだもの。
……そうだ。ある程度の力を持つなら、他所の時間軸に手を出すことは可能な筈だ。
ノルンが別時間軸の私の記憶を見せてくれたように。
キッシュが別時間軸に記憶だけを送り込んできたように。
何も偽神のような特別な力なんて必要ないんだ。普通の神や人間でも、少し覗いて干渉するくらいのことは出来るんだから。
「やっぱり偽神の干渉かしら」
「やる意味がわかりませんね」
流石に遠回りが過ぎるわよね。複層世界を丸ごと戦火に叩き込む為だって言われても驚きはしないけども……。
「パトラはどう? なにか知ってる?」
『ううん。アマテラスって神様との接点は無かったよ』
「そう。向こうの時間軸ではそうなのね」
今回の事情は複雑過ぎるものね。前提条件が違いすぎて縁が結ばれることもなかったのね。
『アマテラス自身がキッシュと同じことをしたのではないかしら』
同じことを……けど向こうから渡って来たのではなく、こちらのアマテラスが別時間軸の記憶を引き出そうとした?
『そうやって上書きしてしまったのよ』
忘れてしまったのは事故だった……理由は? ……原初神の呼び出し方を調べるため?
『ありそうね』
「そもそもこの話、今の状況と関係あります?」
ノアちゃん……立ち直りが早いわね……。
「大ありよ。アマテラスの罪が軽くなるわ」
「ならないでしょ。例え全てが想像通りだとしても、こっちの時間軸でも他の時間軸でもやってきたことは同じなのよ」
メグルの楽観的な意見はテラス本人によってバッサリと切り捨てられた。
「そもそも現在のタカアマハラが数多の罪の上に成り立つものであるなら同じことです」
ノアちゃん厳しい。
「私は罪だなんて思っていないわ」
テラスの立場ならそうだろうけども。
だからってそうやって開き直るのはまた別というか。
「解決できない問題を延々と考え続けるのはいい加減やめませんか?」
またそういうこと言う。
「賛成よ。テラスもそれでいいわね」
「それはどういう意味よ」
「あなたの罪は私が許すわ」
「メグルは何様のつもりなのよ」
「そうね。私では足りないわね。なら小春が許すわ。それで話はお終いよ。一件落着。めでたしめでたし」
「ちょっと」
「良いじゃないですか。アルカはテラスを欲しているんですから。全て背負ってあげましょうよ」
そりゃそうだけど……。
「今更悪い魔女の悪事が増えたって大した差は無いわ」
えぇ……。
「これで界賊王の名はアルカのものです。堂々と勢力を増やしていくとしましょう」
「だからそんなことしたら中央が」
「黙ってるわよ。原初神が怖いんだもの。タカアマハラだって今まで放っておかれていたじゃない」
「私の伴侶を自称するなら中央なんかにビビってもらっては困るわね」
あっれぇ……。テラスまでそっち側に付くのぉ……。
「腹を括りましょう。アルカ」
「ケジメはどうしたのよ、ノアちゃん」
「小春がつけるのよ。精々働いてやりなさいな」
「軽く言ってくれるわね、メグル」
「その程度の覚悟も無しに求婚してきたの? がっかりね」
「くっ……わかったわよ、テラス」




