57-16.悪い魔女のとっておき
「アマノ、ウズメ、マグナ。同行して頂戴」
メンバーチェンジだ。ノアちゃんとメグルは私世界に残るって言うし、イコルが同行すれば警戒させてしまうだろう。
対してアマノとウズメはアマテラスの警戒を誘わない上にアマテラスやアマノイワトの情報に精通している。
そしてマグナもアマテラスとは知らない仲じゃない。加えてマグナの現実改変能力はイワトの封印に穴を開けられるかもしれない上に、アマテラスの理解を超えている……どころか力としてすら認識されていない可能性が高い。
おそらく三人とも、警戒されてはいないだろう。
「仕方ありませんね。どうしても一人は嫌だと言うなら私も同行してあげます」
「ううん。ノアちゃんは中にいて。ノアちゃんと私だと分断されちゃうかもだから」
最悪分断されても、マグナなら大概の状況は自分で切り抜けるだろう。幸運値マックスだからね。概念系には概念系をぶつけましょう。
「……ずるいです」
なんでやねん。
「ずるいずるい!」
パトラまで便乗しないの~。
「ノアちゃんは自分で残るって言ったんでしょ」
「撤回します」
も~甘えん坊め~。
「表層にいていいから」
「……仕方ありません。それで手を打ちましょう」
「イコルもね~」
「うん。一緒に見守っててね」
「は~い♪」
メグルは……何も言ってこない内に出てしまいましょう。
----------------------
四人で再びアマノイワトの散策を始めた。
「アマノ、ウズメ。ツクヨミ様の居場所くらいなら教えてくれるかしら?」
「「~?」」
検索中かしら?
「ダメ。繋がんない。ネットワーク切られちゃった」
あらま。
「ごめんね、旦那様~」
「ううん。気にしないで。予測できたことだものね」
アマノとウズメには普通に案内してもらいましょう。
「マグナはどう? 何かビビッとくる?」
そもそもまだ編纂機とは繋がっているのかしら? シーちゃんと同じように、接続が途切れてたりしない?
「こっちだよ。なんとなくそんな気がする」
どうやら変わりないようだ。流石エルちゃん特製だ。
『マスター。アップグレードを依頼するのは如何でしょう』
そうね♪ 次に遊びに行った際にはお願いしてみましょうか♪
『イエス! マスター!』
ふふ♪ シーちゃんも張り切ってるわね♪
マグナはズンズンと突き進んでいく。その足取りに迷いはない。やはり直感的に何か感じ取っているのは間違いない。
『不正を検知したわ』
げっ。アマテラスの声。
いえ、これはこれで狙い通りではあるんだけれども。
『その子は没収よ』
マグナの足元に穴が空いた。
『……なんですって?』
マグナは私の腕の中だ。ギリギリ抱き寄せ魔法が間に合った。
『今のは見た目通りの落とし穴なんかじゃないのよ?』
概念的に吸い寄せる効果でもあったのかしら?
「生憎だけど、私のこの魔法は特別なの。世界の壁すら越えて手元に引き寄せるのよ」
今回はマグナの幸運も関係しているかもだけど。
少なくとも、早々にアマテラスが声を掛けてきてくれたのは、間違いなくマグナのお陰だ。
『なら何故私やサグメに使わないの?』
「私が愛する相手にしか通じないからよ」
『マグナはツムギの恋人でしょ』
「あら。知らなかったのね。二人まとめて私の伴侶になったのよ」
『……嫁がせ先間違えたかしら』
「アマノとウズメは返さないわよ」
『そう。ならいいわ。精々大切になさい』
一応愛情はあるのね。あんな使い方をしていても。
『メグルとノアの姿が見当たらないわ。どこに隠したの?』
私世界のことを把握していないの? てっきりウズメを介して伝わっているものかと思っていたのだけど。
「二人は別行動中よ。ちなみに私が交渉担当なの。どうかしら? 今のうちに話を始めてみるのは。二人が情報を握ってからでは不利になるかもしれないわよ?」
『協力する気になったのなら、いつでも話は聞くわよ』
「協力したいとは思っているわ。ただわかるでしょうけど、私にも守るべきものがあるのよ。何でもかんでもってわけにはいかないの。これは報酬云々の話ではないわ。ラインを超えるには相応の理由が必要なのよ」
『そう。私を悪だと言うのね』
自覚が無いの?
「人としても神としても道を外れているじゃない」
『道ねぇ。先神や老害共が勝手に敷いた道をただなぞるのが善だと言うなら、確かに私は悪なのでしょうね』
思春期ねぇ~。
「なら言い換えましょう。あなたは体制に反しているわ。体制とは強者よ。強者に抗う者が善を名乗るには勝つしかないわ。よく言うでしょ。勝てば官軍って。悪と誹られるのが嫌なら力を示しなさい。中央を黙らせられる程にね」
今の中央に見逃されているだけの状況では、何を言ったって負け惜しみにしかならないもの。
『私は体制になりたいわけじゃないわ』
実に都合の良い夢だ。私も人のことは言えないけれど。
「だから隠れ潜むための土地が欲しいのね」
『皆が平和に暮らすにはそれしかないのよ』
天を照らす神々の皇たる主宰神がこのザマとはね。
代替わりシステム自体無茶があるのよね。ニクスだって名前に振り回されて散々苦しんできたものね。
力と格があったって、意識が伴わなければ意味が無い。その逆もまた然りだ。どれか一つでも見劣りすればバランスを崩すのは必定だ。
アマテラスなんて特に苦労したことだろう。先代のアマテラスの時点で本来の役割からは外れていたのだ。生まれた時からその大役を背負わされてきたのだ。
これは実体の伴わない名前だけの話じゃない。アマテラスには数千万の民が付き従っていた。最初から王であることを義務付けられてきた。
守護神たちの多くは世界に住まう人々を道具と割り切って世界の運営を続けてきた。けれどアマテラスは違う。人も神も等しく民として扱っている。私を半神と侮らず、ノアちゃんにアマノを差し出そうとしたのがその証だ。彼女は一般的な守護神たちとも大きく乖離している。スサノオ様と先代アマテラス様の意志を受け入れられないのも当然だ。
彼女に神としての傲慢さを持てと言う方が間違いなのだ。
「テラス。私と手を組みましょう」
『気に入らないわね』
「別に見下しているわけではないの。むしろ逆よ。私はあなたに惚れ込んでいるわ」
『……なんですって?』
ちちんぷいぷい♪
「……冗談でしょ?」
私の腕の中に現れたテラスが、状況を把握するなり胡乱げな視線を向けてきた。
「この抱き寄せ魔法は冗談で使えるものじゃないわ」
「本気で私を愛していると言うの?」
「ハーレム王はチョロいのよ♪」
「……意味がわからないわ」
ふっふっふ♪ 直に慣れるわ♪




