57-14.作戦会議
「天岩戸について他に何か知っていることはある?」
取り敢えず深層で会議をすることにした。
メンバーは……大勢だ。私世界に居た有識者たちにも片っ端から声を掛けて連れて来た。皆説明されるまでもなく状況を把握してくれていた。
「先ず神話の天岩戸とこの巨大戦艦アマノイワトは別物よ」
「そうは言っても実際に封印を破れないじゃない」
「何かしらカラクリはある筈よ」
「編纂機との接続が途絶えたこともヒントになるかしら?」
「レイヤーに干渉する類の封印だとわかるくらいかしらね」
実質最上級じゃん。だとするなら力技で突破するのは不可能よ。維持装置を破壊するとかって方向性なら別だけど。
「マグナはどう見る?」
最もその手の技術に精通しているのはマグナたちだ。もちろんシーちゃんとアイリスも同等以上の知識を持っている。しかし特別な権限を有し、日常的に行使しているのはマグナただ一人だ。これはシーちゃんが編纂機そのものの管理者権限を所有しているのとは別の話だ。ユーザーとしてマグナ以上に実績のある者はいないだろう。
「これは仮説だけど、アマテも権限の一部を持っているんじゃないかな?」
なるほど。これは編纂機の力なのか。
そう考えればイコルが太刀打ち出来ないのも納得ね。
「アマテラスは今も編纂機に接続し続けているのかしら? それとも指示だけ出して自分も接触出来ない状態なの?」
「後者は在り得ないね。終了命令を送れなければ一生閉じ込められたままだもの」
「逆なのかもしれないわね。ここは岩戸の外なのかも」
「逆転させているの? アマテラスはアマノイワトの外郭に潜んでるってこと? そこを内側と仮定して?」
そんなの手の出しようが無いじゃない。
「或いは隙間があるのかも。どこかに扉を用意してあるだけでも構わないわ」
どれも仮説の域を出ないわね。
「やはり情報収集に動くのが先決では?」
「その前に。ノアちゃん。セラフ。セレネとの繋がりは?」
「『……』」
二人とも?
「……これはどちらなのでしょう」
『切れている感じはしないわね。応答も無いけど』
「シーちゃん。ノアちゃん世界に偵察機を送って」
『イエス、マスター』
これで外からも探れるかもしれない。
「小春も調子出てきたわね」
「メグルの活躍にだって期待しているわ」
「なら一つ提案よ。ヘルメスに頼むのはどうかしら」
「ダンジョンね。その手もあったわね」
なによ。意外と穴だらけじゃない。
「けど良いの? メグルはヘルメスさんに借りを作るのは反対なんでしょう?」
「そうね。出来ることなら避けたい手ではあるわね」
「なら最後の手段に取っておきましょう」
まだいくつか方法はあるみたいだし。
「いっそ平和的に解決しませんか?」
ノアちゃんは別案があるようだ。
「答えを示してしまえばいいじゃないですか。私たちであればテラスの夢を叶えることが出来るのですから」
「そうね。丁度今手元にないわけだし。私たちでなければ受け取れないものなんだから、横取りされる心配も無いし」
なんなら私は最初からその路線でも良かったのだけど。
「私だって明かすつもりだったわ。早とちりしたのはアマテラスじゃない」
「メグルの魂胆を見抜かれたからでしょうが」
「保証は必要だわ」
「だからって隷属契約はやり過ぎよ」
「どのみち結果は同じでしょ」
そりゃそうだけど。
「信頼を積み重ねてから示されるのは違うでしょ。色々と」
「それこそ裏切りだわ」
「論点がズレてきていますよ。二人とも」
「「……」」
「とにかくよ。情報を集める手は存外残されているわ。もしかしたら脱出するだけなら容易なのかもしれない。ノアちゃん世界から入ってセレネ世界から出れば、元の世界には簡単に帰れるのかもしれない」
それがわかっただけでも朗報だ。
「それはそれとして、私は誤解を解いておきたい。ノアちゃんの言うように、ただ伝えれば済む話なのかもしれない。或いはまた次の誤解や火種を呼ぶだけなのかもしれない」
だから慎重になろうっていうメグルの考えも理解できる。
「皆はどう思う? タカアマハラの行く末まで含めて一度考えておきましょう。本当に私たちで皆を救うことが出来るのか。本当に私たちがそこまですべきなのか。当然一度抱え込めば手放すことなんて出来ないわ。ツムギにただ押し付けて済む話でもない。もしかしたら中央世界と敵対する未来にだって繋がるかもしれない。そう理解して考えてみましょう」
薄情かもしれないけれど、出来るからってやって良いとは限らないものね。ニクスならきっと反対するだろう。これはそういう問題でもあるのだから。




