57-10.観光案内
「呼び出しがないわね」
あれから何日経ったろうか。アマテラス様は今日も沈黙を貫いている。
未だ答えが出ないのか、この時間稼ぎそのものに意味があるのか。まさか、私たちのいない隙にクオレリアを襲撃して人質に取ろうなんて考えてないわよね……。
「心配は要りませんよ。神アマテラスはそのようなタイプではないでしょうから」
ノアちゃんは呑気に唐揚げを摘んでいる。
「なにそれ美味しそう」
「どうぞ。屋台で買ってきました」
「いただきます」
うまうま。
「これ何の肉かしら。鶏なんて飼ってるの?」
それってつまり魂の循環があるのかしら? このアマノイワトの中でも。
「調べてみましょうか。どうせ暇ですし」
「そうね。それがいいわね」
メグルは既に散策中だ。なんなら夜しか帰ってこない。人に油断するなと言っておきながら、自分は連日歩き回っている。メグルらしい気遣いとマイペースっぷりだ。サグメさんとのデートが楽しいのね。情報収集? ついででしょ。
イコルは私世界で何やら悪巧み中だ。たぶんこっちの様子も常に覗いているだろうから、呼んだりピンチになったりしたら飛び出して来てくれるだろう。
『もちろんよ~♪』
ほらね。
「今回はウズメね。観光案内を頼めるかしら?」
「~♪」
出てきた♪ 今日も可愛い♪
「またデレデレしてますねぇ」
「ノアちゃんが一番よ♪」
ぎゅっちゅぎゅっちゅ♪
「セラフが反論してきませんね」
「セレネも一番よ♪ って私が内心思ったからじゃない?」
「わざわざ口にしないでください」
ごめんちゃい♪
「行きますよ」
「がってん♪」
「~♪」
私はノアちゃんとウズメに手を引かれ、巨大戦艦アマノイワトの探検に繰り出した。
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「アマノイワトってあの島国とも違いますよね」
「そうね~。もっと古い時代みたい」
あの島国は江戸時代くらいの文化だもの。けどこの船の雰囲気は精々平安時代くらいじゃないかしら。なのに服装は古墳時代? それでいて食文化は現代相応なのよね。他にもちょいちょい時代が入り混じってる感はあるかも。それぞれ好みを持ち寄った結果と言った感じかしら? なんとも雑多な感じね。もちろん悪い意味ではなくね。
「船自体は岩の塊って感じだったわよね」
力学とか一切無視の名前通りの形状してたわよね。案外本物の天岩戸をくり抜いて作り込んだのかしら?
「私たちもあの格好してみませんか?」
「いいわよ♪ もちろん♪」
ちちんぷいぷい~♪
私たちも周囲の格好に馴染むように服装を変化させた。
「~……」
ウズメが早くも窮屈そうにしている。いつもの踊り子みたいな露出度が落ち着くようだ。
「ごめんごめん」
私はウズメにかけた分の術を解除して、元の姿に戻す。
「~♪」
喜んだウズメが抱きついてきてくれた。
「アルカ。感想の一つもないのですか?」
ノアちゃんがむくれてる♪
「かぁ~わいい♪」
「今のは違うニュアンスが含まれています。やり直し」
あはは♪
「よく似合ってるわ♪ ノアちゃん♪」
「良いでしょう。ですがアルカはもう少し派手にしてください。王様みたいな感じで」
「目立っちゃうじゃない。皆に紛れて観光するんでしょ?」
「仕方ありませんね。それで満足してあげます」
ふふふ♪ 今日のノアちゃんはいつにも増して可愛いね♪
「あら。よく似合ってるじゃない」
え? うそ。アマテラス様? 普通に出てきたぁ。
「ありがとうございます。神アマテラス」
「硬いわ。もっと気軽に呼びなさい」
「テラスも散策ですか?」
いっきに距離縮めるわね。ノアちゃん。
「ええ。息抜きにね。色々煮詰まっちゃって。待たせて悪かったわね」
「いえ。こちらも楽しんでいます」
「そのようね♪ そうだわ♪ もう一人案内役を付けてあげましょう♪ アマノ。いらっしゃい」
アマテラス様の呼びかけに答えて、ウズメにそっくりな少女神が現れた。
「この子はノアにあげるわ。好きに使いなさい♪」
あらま。
「私は神でも半神でもありません。恐れ多いです」
「なら半神にしてあげるわ」
「待って!!」
慌てたイコルが飛び出してきた。
イコルはアマテラス様とノアちゃんの間に割って入って、アマテラス様の突然の暴挙を食い止めてくれた。
あっぶなかったぁ~……。今の本気でノアちゃんを自分の眷属にするつもりだったんだ……。
「なによ。邪魔しないでよ」
「ダメよ、アマ……テラス。言ったでしょ。私たちは混沌の原初神の一派よ。勝手に引き抜きなんかしたらこの船ごとぺしゃんこにされてしまうわよ」
「原初神ねぇ。本当に居るなら会ってみたいものだわ」
おっとぉ……。そういう認識だったかぁ……。
「今だって全然気配を感じないじゃない」
「今は引き籠って修行中よ」
「原初神が?」
「弟子を取ったの。きっともう直帰ってくるわ。私たちと仲良くしていれば会わせてあげられるわ」
「そう。楽しみね。まあいいわ。ならアマノの方もアルカにあげる。精々仲良くして頂戴」
「別に何か頂かなくたって仲良く出来るでしょ」
「そうじゃなくて。アマノったらウズメを忘れられないって言うのよ。新しいウズメじゃ嫌なんですって。我儘でしょ」
そこで同意を求められてもなぁ。
色々感覚ズレてるわね……人としても神としても。
「私は戻るわ。じゃあね。観光を楽しんで」
興が冷めたと、テラスは姿を消してしまった。
「主様。どうか此方とも契を結んでくださいませ」
アマノは私の返事を待たず、私の手を取った。
今度はイコルも止めなかった。相変わらず一方的に契約が結ばれた。
「ウズメ♪ ああ♪ ウズメ♪」
「~♪」
早速抱き合う仲良し姉妹。よきかなよきかな。
「アルカ。鼻の下を伸ばしている場合ではありませんよ」
ノアちゃんの顔がシリアスモードだ。
「テラスの無法っぷりは界賊王に相応しいものですね」
「流石に言い過ぎじゃないかしら?」
「私たちも情報を集めましょう。ああ。失敗しましたね。散策に同行してもらって引き出しておくべきでした」
観光は続けるのね。ノアちゃんも逞しいわね。




