57-08.界賊王の見解
アマテラス様の拠点、アマノイワトが見えてきた。
「もう直ぐね。皆準備は良いかしら?」
「安心なさい。あくまで目的は話し合いよ」
「目的と結果が必ずしも一致するとは限りませんよ」
ノアちゃんの尻尾が警戒モードだ。何か本能的に嫌な気配でも感じ取ったのかもしれない。
「メグルから何か注意点はあるかしら?」
「こちらからは決して敵意を向けないことよ」
なるほど。わかりやすい。
「行くわよ! 皆!」
「「「がってん!」」」
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「先日ぶりね。アマテラス様」
「そう。首尾よく目的は果たしたのね。ご苦労だったわ」
ツクヨミ様を目にしたアマテラス様は、ホッとしたように笑みを浮かべた。
「目的? 何の話かしら?」
「惚ける必要は無いわ。最初からその子を連れ出すのが目的だったのでしょう」
全然驚いていないわね。本当に最初からわかっていたみたいだ。ウズメから情報を引き出したのだろうか。盗聴対策は施した筈なのだけど。
「それで? 引き渡して頂けるの?」
「ええ。御本人もそう望まれているから」
ツクヨミ様がアマテラス様の下へ歩み寄った。
「感謝するわ。愚弟の方も軍を引いてくれたし、あなたたちには感謝してもしきれないわね」
あら。スサノオ様は撤退を選択されたのね。
「このままうちに所属してもらえないかしら?」
まさかの勧誘。流石にそれはマズいでしょ。私たちは混沌の原初神に属する勢力なんだから。
「これまで通り仲良くして貰えれば十分よ」
「そう。振られてしまったわね」
これも驚いている様子はない。ダメ元といより、ただの軽口といったところか。
「手が空いたのならこちらも手伝ってもらえると助かるわ」
「界賊退治だったわね。いいわ。具体的な要望を聞きましょう」
これは知らないのね。
それとも知らないフリかしら。
とにかくこのまま様子を見てみましょう。仲良くなるのが先だ。スサノオ様との約定について踏み込むのはその後だ。
「計画を伝えるわ」
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「冒険者システムねぇ……」
あんまり芳しくない反応だ。ピンときていないのかしら。
「難しいわよ。界賊やそれに類する者たちが自由に外界を飛び回れるという認識には誤解があるわ」
というと?
「世界を渡れるからといって、望むがままに目的地を定められるとは限らないの」
「なら界賊たちはどうやって滅びかけの世界を見つけているの?」
「それぞれね。酷い場合なんて、適当に彷徨っていたら偶然通りがかって、なんてこともあるくらいよ」
世界を渡る方法は、界賊の数だけあるわけね。それぞれ違う世界の出身だから、扱う力も技術も別物なのだろう。それは言われてみれば当然だ。
「ルールを敷きたいなら先に足並みを揃えないと話にならないわ。誰も不利な土俵になんて上がりたくないもの」
ご尤も。
これは要するに、賞金稼ぎたちにある程度以上の技術を提供しろって話だ。つまり教育の場を儲けろ、それが行き渡って始めて人々は耳を貸すだろう、と。
そりゃそうよね。私たちはざっくりアマテラス様ならその辺もなんとかなるのではと思って頼ったわけだけれども。
流石にそんなに都合良くはいかないか。
けどまあ、これは全く想像もしていなかったというわけじゃない。ただ、ある程度の共通認識や共通規格くらいはあるのではないかとも思っていた。全く無いとなると正直困る。
「そう。その役割をうちに期待していたのね」
話が早くて助かる。
「手はあるかしら?」
「無理ね」
バッサリ。
「先ずそもそも不可能よ。世界を出て旅する連中なんて、神々に恨みを抱いている者たちが大半だもの。本人たちには賞金稼ぎだなんて揶揄されている自覚すら無いし」
おっとぉ……。
全く一切これっぽっちもコミュニティが存在しないとは、流石に想定していなかったわ……。
ウズメが知らないことを隠していると邪推したのは失敗だったわね。本当にそもそも存在しなかったのね。
ある程度以上に同種の者たちが存在するなら、何かしらのグループは自然と出来上がっているものと思っていたのだけど。或いはタカアマハラの者たちですら知らない何かがあるのかと思っていたのだけど。
アマテラス様のこの反応を見る限り、そもそも皆無という結論が真実っぽい。これは本当に困ったわね……。




