57-06.抗争の真実
『でな! わしゃぁ言うてやったんじゃ♪』
アマノイワト怖れるに足らず。それがキッカケだ。
要約すると、抗争の原因はありふれた姉弟喧嘩だった。
スサノオ……様は、イメージに近い神だったのだけれど、アマテラス様の方はどうやらそうでもないらしい。話を聞いた感じ、神話よりもだいぶ喧嘩っ早い印象だ。
今のアマテラス様は、三貴子の中で一番年若いそうだ。代替わりして逆転してしまったのだ。
でもそうだよね。神話のアマテラス様ってかなり寛大なお方だもの。それがメグルとアマノイワトの改修計画を巡って喧嘩になっていたくらいだ。神話のイメージから最も遠ざかっていたのはアマテラス様だったのだ。
メグルの印象としてはアマテラス様も含めて神話の印象通りって話だったけれど、実際のところはどうなのかしら。姉弟だから態度が変わったり、客人の前だから冷静さを保っていたりなんて要素が積み重なった結果なのかもしれない。
「つまりなに? ただの張り合いなの?」
アマテラス様は黒歴史として記録から抹消したのかしら。それで抗争のキッカケをウズメが知らなかったの?
そんなくだらない真相なことってある?
『いつもの事じゃない』
それはそ……いえ。いつもって程じゃないわよ。
『ガッハッハッハッハ!!』
何がおかしいのやらだ。
「スサノオ。私たちは争いを止めに来たのよ」
メグルが若干呆れたように要件を告げた。
『安心せい。此度の戦も直に終いじゃ』
あらそうなの?
「何を以って戦争は終わるの?」
『無論白黒ついた時じゃのう』
絶対すぐ終わんないやつでしょ。それ。
「スーちゃ~ん! 仲良くしないとめー! よ~!」
『ぬっ!? ネクタル!? ヌシまでおったんか!?』
気付いてなかったの?
ネクタル……つまりイコルは、ずっとこの場に居たでしょうに……って、ああそっか。私好みに縮んでるんだった。あのボンキュッポンを想像してたらそりゃ違うわよね。
そもそも知り合いだったのね。この二人。
「めー!」
『う、うむ……しかしのう……』
「めー!!」
『はい……』
弱い……。
「驚きました。まさかあなた様がお越しになられるとは」
ツクヨミ様もイコルに気付いていなかったようだ。
「ツーちゃんたら~♪」
イコルも言いなさいよ。どうして黙ってたのよ。
ほんとにもう。これだから神々は。
『イコルの擬態が完璧過ぎるのね』
今は力も抑えてるし尚更かぁ。
『ネクタルよ。あやつはヌシを知らんぞ』
「そうね~」
……アマテラス様のことかしら。
そっか。この三柱は先代の、もしかすると初代のアマテラス様とも直接面識がある神々なのか。
今の若いアマテラス様には、何か思うところでもあるのかしら。
「スーちゃん♪ ツーちゃん♪ 手伝って~♪」
『「……」』
……なんだろう。この空気。
『ヌシの頼みとあらば……そう言いたいところじゃがのう』
「ネクタル様。あなた様が動く程の理由があるのですか?」
戸惑ってるのか。スサノオ様とツクヨミ様は。
「コハルちゃんが望んでいるからよ~♪」
イコルもあっさり答えるし。
『「……」』
絶句されてしまった。
『ヌシは知っておる筈じゃろうが』
「ネクタル様。輪廻を回すには必要な儀式です」
「そうね~」
え?
「イコル? どういうこと?」
『なんじゃ。おヌシ。知らんで姉者を連れ出したんか』
スサノオ様に呆れられてしまった。
『これは"とっぷしーくれっと"故、くれぐれも漏らすでないぞ』
教えてくれるそうだ。というか神々が秘密にしてるなら知ってるわけないじゃない。
『我らの戦とはのう。世界から零れ落ちし、彷徨える者たちを正しき輪廻に戻すために必要な儀式なんじゃよ』
……そっか。そういうことだったんだ。
だってそうよね。考えてみたら当然の話よね。究極的な救いってそれしかないものね。定期的に戦を起こしてわざと命を落とさせていたんだ。それらは神の手元で管理されながらに齎される死だ。この世界の間の海で永遠に魂が彷徨うことのないよう、死した者たちの魂を拾い上げてどこかの世界に流していたんだ。
彼らにとって争いの原因なんてどうでもよかったのね。だからバカげた言い争いなんかが戦争に発展していたのね。
人々はこれを神々の傲慢と呼ぶのかもしれない。けれど間違いなく慈悲を以って行われた行為だ。神の立場もよく知る私にはそうであると理解出来る。
「けれどおかしいわ。アマテラスは誰一人取り溢そうとなんてしていないわ」
『その通りじゃ。困ったもんじゃのう』
それって……。
『じゃから姉者が必要なのかと思うとったんじゃがのう』
「此度の儀が長引きすぎているものかとばかり」
『この姉者も抜けとるのう。末弟として頭が痛い』
あなたが閉じ込めたんでしょうが。
もうわけわかんないわよ……誰か一旦整理して!




