57-05.反転と失態
「スサノオ様はお怒りです」
……うん? あれ? つまり怒ってないの?
アメノサグメ。突如として私たちの眼の前に現れた一柱の女神。彼女はわざわざシーちゃんシップに乗り込んできた。
メグル曰く、彼女の言葉は全て反転しているそうだ。
『無事に逃げられました。おめでとうございます』は、『逃げるのは失敗です。残念でした』ってところかしら。
なら『どうぞお気になさらず。この身は何も致しません』は、『逃げられると思うな。私が阻止します』みたいな?
「東雲 環。見飽きた顔ですね」
メグルに関心があるの? それとも単に、久しぶりだと言いたいの? メグルの口ぶり的に面識があるのは間違いないけど……。ややこしいわね。普通に喋ってくれないかしら?
「ご挨拶ね。サグメ」
「どうにも誤解を与えたようですね。メグル」
『誤解なんてしてないでしょ。メグル』ってこと? もしかしてサグメって、メグルのこと相当気に入ってる?
「見逃しなさい」
「構いませんよ」
流石にダメだよね。
「スサノオは私たちと会ってどうするつもり?」
「始末します」
取り敢えず命だけは助けてくれるらしい。
「ツクヨミを返せとは言わないのね」
「兄君は奪わせません」
うん? 兄? てことはやっぱり姉なの? それとも固有のなにかを指す場合は反転しない? 普通に失礼よね。相手を男性か女性か意図的に反転させて口にするなんて。
しかも奪わせませんってことは、連れて行っても問題ないってことなの? ますますスタンスがわからないわ。
要約すると、スサノオは単に私たちに興味があるから会ってみたいということかしら?
「モニター越しで構わないなら挨拶くらいはしてやるわ」
「直接お越しください」
あら? 良いの?
「シーちゃん」
『イエス、マスター』
シーちゃんがサグメから情報を受け取ると、メインモニターに印象通りの大男が映し出された。
『おうおう! ようやっと繋がりおった! ガッハッハ!』
めっちゃ笑っとる。
『おんしらか! 囚われの姫君を救い出した勇者たちは!』
姫君……。
『姉者も元気そうじゃのう! ガッハッハッハ!』
自分で囚えておいて他人事ね……。
あとあっさり判明したわね。散々引っ張っておいて。やっぱりツクヨミ様は女神なのね。少なくとも今代は。
『いやわしは行かせとけ言うたんじゃがな! サグメの奴がどうしても一矢報いてやらにゃあ気が済まんなんていうもんでのう! ガッハッハ♪ そりゃもう悔しがっとったぞ♪』
「スサノオ様」
キレてる……サグメ……さんがわなわな震えている……。
『わしは失態も含めて気にせんで良いと言ったんじゃがな。サグメの奴は出し抜かれたのが』
ぶつん。
突然映像が途切れた。
サグメさんが何かしたっぽい。
「あなた、相変わらず捻くれてるわね」
「……」
ダメだってばメグル。サグメさん、なんか泣きそうよ。下唇噛み締めてめっちゃ堪えてるわよ。
「彼女可愛いでしょ。面倒くさいけど」
「……嫌い」
あらま。メグルったら。あなたも十分誑しじゃない。
「このまま連れて帰ってしまいましょう。サグメさえ向こうにいなければ潜入もずっと楽になるわ」
メグルったら。やりたい放題ね。けど悪くない手ね。
「……」
サグメさんは首を横に振るってから、再び映像を繋ぎ直した。
『でな。わしは言ってやったんじゃ。姉上のアマノイワトなんぞ』
「「「ちょっと待ったぁ!!!」」」
なんかめっちゃ大事そうな話してる!? 映像が途切れても気付かずに話続けてたの!? 肝心なとこ聞き逃した!?
なんでいつの間にかアマテラス様との抗争の件に話がシフトしてるのよ!? この短い間にどんな経緯を辿ったの!?
『なんじゃ。話の邪魔をするでない。今良いところで』
「「「最初から! 最初から聞かせて! 抗争の話!」」」
『しかたないのう♪』
良かった。話好きなお爺ちゃんで。




