57-03.チョロインズ
「まだ着かないの?」
「もう少しよ~♪」
このやり取りも何度目だろう。私たちがヤマタノオロチの腹の中を彷徨い始めてから既に数日が経過している。
数十億年を超えて生きてきたイコルのもう少しって、いったいどれくらいを指すのだろう。数秒や数分の話じゃないのは確実だ。数時間でもない。数日以上だ。下手をすれば数週間、数ヶ月、数年と掛かるだろう。
私たちは長くとも数時間程度を想定していたのだ。
まさかと思うけど、道に迷ってるとかないよね?
「大丈夫よ~♪ 信じて~♪」
そりゃ信じてるけどさ~。
「そろそろこの首は終わりじゃない?」
だいぶ登ってきた筈だし。
『いえ。まだ半分にも達しておりません。マスター』
えぇ……。
「ちなみに神ツクヨミは大体どの辺りにいらっしゃるのですか?」
「この首の頂上よ~♪」
おいこら。
「もう転移使いません? バレたらバレたでその時です」
さんせ~……って言いたいところだけどね~。
クランマスター会議に間に合わなくなっても困るし……。
『問題ありません。マスター。時間流に差がありすぎます。ほぼ時間経過は発生しません』
なるへそ。こっちの方が速いパターンなのね。
やっぱり世界として根付いていないと違うのかしら。
「ノアちゃん。朗報よ」
「聞いていました。果たしてそれは朗報と呼べるのでしょうか」
「わかるように話しなさい」
いかん。メグルがムスッとしてる。
「時間無制限だってさ」
「なによ。知らなかったの?」
メグルは最初から知ってたのね。
「どういうルールなの?」
「重力を持つのは世界だけよ」
「けどここ普通に歩けてるよ?」
「そういう意味じゃないわ」
まあうん。わかってる。ちょっと言ってみただけ。
「この砦は外界と変わらないのね」
「そういうことよ」
しゃあない。腹括るか。
「ゆっくり行きましょう。確実に目的を達成しましょう」
「仕方ありませんね」
「重要な施設は全て頂上なのかしら。だとしたら、ツクヨミを回収した後はまた別の首に登り直さないといけないのかしら。先に目標を明確にしておきましょう」
だね~。
一応ツクヨミ様を回収したら、すぐに帰るつもりなんだけど。もしかしたら何か他にやるべき事も見つかるかもよね。
いっそスサノオの下に乗り込んでしまおうかしら?
「任せて~♪ どこへでも案内するわ~♪」
イコルってどうやって道を定めているのかしら。今まで一度たりとも迷う素振りが無かったのよね。実は来たことがあるのかしら。
「なんとなくよ~♪」
……まあ良いけどね。ここまでスムーズに上の階層へ上がってこれたんだし。もちろん信じてるわ。私の女神様。
「えへへ~♪ 嬉しいわ~♪」
「小春。私と契約しなさい。今すぐに」
メグル? 張り合ってるの?
またイコルが私の思考と会話をしていたから、面白くなかったようだ。
「今ここでは無理よ。何のために転移も使わず頑張ってると思っているのよ」
「後で必ずよ。忘れないで」
「ええ。もちろん。メグルさえ良いなら喜んで。マカイもフィリアスネットに繋いであげないとね」
「それは……やめておきましょう。この子はホノカの一部だから」
あらま。
ホノカさんの方と混線しちゃうかしら? それとも負荷が大きすぎる? ともかくやめておいた方が無難かもね。
「ならナナミを……ああ。ナナミは今、カルネのところだったわね」
まだ暫く外せそうにないのよね。
「ハルちゃんどう思う? マカイをこっちに繋いじゃっても問題ない? それともメタモルステッキのサポートでどうにかなりそう? やっぱりナナミにお願いするべき?」
『ナナミ』
『つかう』
「そう。ならそういうことで。追々ね」
『まかせとけ』
「今更あの子が受け入れてくれるかしら?」
あ~……。
一度はメグルの専属フィリアスになりたいって言ってたけど、マカイがいたから断念したのよね。それから暫く経つし、ハルちゃんとも上手くやってきたから、今更ってなっちゃうかしら? ナナミはそういうタイプでもなさそうだけど。
『ナナミ』
『きいてみる』
まあそうよね。先ずは本人の希望を聞いてみてよね。
「いっそ他の子にも募集は掛けておきましょう。カルネの方も暫く手がかかるでしょうから」
そうなると、ナナミはとことん運が悪いというか、間が悪いわよね。可哀想に。
「待つわ。それくらい」
「そこまで気にしなくても大丈夫よ。ナナミのことも受け入れてあげなさいな」
「無理よ。私はハーレムなんて作らないわ。マグナとマカイだけで十分なくらいだもの。ナナミ一人ならともかく、四人もだなんて手が回らないわ」
「アルカとも結ばれたばかりですもんね」
「ノアちゃん。からかわないの」
「四人じゃなくて五人だったわね。しかも一番手のかかる子をカウントしていなかったわ」
どうしてそっちに乗っかるのか。今私庇ったのに。
「ノアちゃんとメグルって仲良いの? 悪いの?」
「悪くはないでしょう」
「良いに決まってるじゃない」
なるほど。これはノアちゃんの方に問題があるわね。
「別にありませんよ。含みなんて」
「今のは私もわかったわ」
ドヤ顔メグルん。
「失礼。私としたことが少々遠慮があったようです」
対抗心や警戒心の間違いでは?
「聞こえてますよ」
「今のもわかったわ♪」
「ふふん♪」じゃないのよ。「ふふん♪」じゃ。
「これはきっとあれね。メグルはノアちゃんのことが気になってしょうがないのね」
「そりゃそうよ。リアル猫耳美少女だもの。誰だって好きに決まってるじゃない」
「……触りますか?」
チョロい……。
「嬉しいわ♪」
メグルも大概だぁ……。




