57-02.対抗意識
「人っ子一人居ないわね」
拍子抜けだ。まさかこんな光景を目にすることになるとは思わなかった。
上の階層も見事に蛻の殻だった。人っ子一人居ない居住エリアが広がっていた。
「完全にゴーストタウンね。こっちは最近じゃないわよ」
だね。スラムの方が直近に引き払われたってことは、下っ端を先に前線へ送り込んだって線は無さそうね。
かといって、町の人たちが引き払った後にスラムの人たちが移り住んできたというわけでもないようだ。ここに住んでいた人たちはいったいどこへ消えてしまったのだろう。
「抗争中とはいえ、町ごと引き払うとも思えないのですが」
そうよね。これだけの生活基盤を持っているなら、非戦闘員だって住んでいた筈だものね。この居住エリアに誰一人残っていないのは不自然よね。
「より上層に全員を集めたのでしょうか。最下層の住民は移住を許可されたのが遅かったのかもしれません」
それなら一応説明はつくかしら。
抗争と移住に直接的な関係は無いって可能性もあるわね。
「牢獄はもっと上なの?」
「そうよ~♪ 行きましょ~♪」
とにかく進んでみよう。どこかであっさりと答えも示されるかもしれない。イコルが言うには、ツクヨミ様の居場所までもう直ぐだって話だし。たぶんこの上くらいなのだろう。きっとたぶん。おそらく。だと良いなぁ。
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次の階層も空っぽの居住エリアだ。その次も、その次も、ただただ打ち捨てられた町並みが続いていく。全然もう直ぐじゃなかった。イコルってそういうとこあるよね。
「一つ仮説を立ててみましょう」
道中、メグルが気晴らしとばかりに口を開いた。
「そもそもこの砦は、元々革命軍の拠点ではなかったのかもしれないわ」
「昔は普通に人が住んでいて、けどなんらかの理由で空っぽになって、それを革命軍が利用してるってこと?」
「ええ。そうよ。最下層に住み着いていたのは革命軍のメンバーではなかったのかも。それを革命軍の者たちが見つけて討伐、或いは追放、もしくは同志に迎え入れた。そんな流れだったのではないかしら」
なるほど。これもまたあり得る話だ。
「元々革命軍メンバーの数は少数だった。この砦を賄い切れる人数なんて最初から居なかったのかもしれないわ」
ふむふむ。
「ならば大昔にこの地に住んでいた方々はどこへ消えたのですか? 彼らも神スサノオの庇護対象だったのでは?」
この砦、明らかにスサノオ関連だもんね。見た目も名前もヤマタノオロチだし。どっかから略奪した線はありえないわよね。きっとスサノオ自身が建造させたものよね。
「彼の守護世界が存在しないとは限らないわ」
そっか。革命軍は副業なのか。
ここに住んでいた人たちを別の拠点に移したのかも。
「この砦は移動要塞も兼ねているのかもしれないわね」
なんか生き物っぽい見た目してるもんね。外観だけは。
「神アマテラスのアマノイワトに対抗した形でしょうか」
「アマテラスとスサノオ。タカアマハラと革命軍。アマノイワトとヤマタノオロチ。それらしくなってきたわね」
実は革命軍っていうのも外から見た呼び方で、本人たちはまた別のカタカナネームとか付けてたのかもしれないわね。
「私たちも名乗りを決めておきませんか?」
「ナイスアイディアよ。ノア」
え~……。そこで意気投合するの~……。
「アルカディアで決まりです」
「異論は無いわ」
即決ぅ……。しかもそれ、我らが公都の名前じゃない。
「アルカ率いるアルカディア。シイナの船にも名前を付けましょう。いつまでもシーちゃんシップでは締まりません」
「ノアの方舟なんてどうかしら?」
「良いですね♪ メグルはセンスがありますね♪」
あかんでしょ。
「ノアちゃん。あれはシーちゃんが造ってくれた船よ。横取りするなんて酷いわ」
「シイナの物はアルカの物。アルカの物は私の物。何の問題もありはしません」
オール・フォー・ワン・ジャ◯アン。
「あの逸話は偉人ノアがコツコツ頑張って船を造ったことにも意味がある筈でしょ。ジャイアニズムの成果ではないわ」
「仕方ありませんね。ならばアルカが名付けてください」
しまった。藪蛇だった。
『どうぞ。如何様にもお呼びください。マスター』
シーちゃんまで乗り気だし……。
船の名前かぁ……。シーちゃんシップって呼び方気に入ってたんだけどなぁ……。
『対外的な名前を別で用意しましょう。正式名称はシーちゃんシップにて登録済みです』
つまり渾名を考えろと。
『お願いします、マスター』
は~い。
シーちゃんにまで頼まれたら仕方ない。
名前名前……。
「素直にアークでどうかしら?」
「せめてノアズ・アークにしなさいよ」
メグルが拘るなぁ……。
「アルカンシェルが良いです」
ノアちゃんまた違うこと言い出すし。リリカ◯なの?
「なんだかしっくりこないわね」
どれも安直なのよ。
「パンドラルカはどうでしょう?」
懐かしいわね。その名前。
「意味が合わないでしょ」
「それはそうですが」
「ノアちゃん、ちょっと面倒になってない?」
「話が進まなそうなので」
せっかちね。
「ノルンにあやかるのはどうかしら?」
メグルは空気読んで。どうぞ。
「一旦アークで通しましょう。そもそもの話、シーちゃんシップはギリ一般的な大型船の範疇よ。ヤマタノオロチやアマノイワトみたいに、数千万人規模の居住エリアを備えた化物戦艦とは別物よ」
「つまり作るのね!」
「我らの主力艦を!」
作らない~!




