56-22.恥知らずな提案
「ツクヨミの居場所か……」
再び訪れたテミスさんに心当たりを聞いてみた。
あまり芳しくない反応だ。これは紹介出来ないって意味ではなく、単に心当たりが無いのだろう。
「すまんな。居場所は掴んでおらん。調べてはみるが、ヘルメスにでも聞いてみる方が手っ取り早かろう」
「ヘルメスさんに? ツクヨミ様はダンジョンにいるの?」
「そうではない。ヘルメスはその職務上、広く情報を持ち得るというだけだ」
そりゃそうか。
「ありがとう。聞いてみるわ」
なんなら編纂機から情報を引き出せるかもだし。いっそエルちゃんに聞きに行くのもいいかも♪ また会いたいし♪
「ついでに『アメノサグメ』を探してみるといい」
「それは? 神の名前かしら?」
「そうだ。この系譜は名前がややこしくていかんな」
分かりづらいわよね♪ ギリシャ系のテミスさんからしたら尚更♪
「奴もまた、情報を握っている可能性が高い」
サグメだからかしら? 探目? 聞いたことのない神ね。
『天探女よ。天邪鬼と言い換えた方がわかりやすいわね』
え? 天邪鬼って神様のことだったの? 邪鬼なのに?
『神の使いを射殺せと唆した神なの』
……それだけ?
『捻くれ者なのよ。彼女は』
わざと唆したの?
『さあね。心情までは知らないわ』
まあ神話の話だもんね。
『そういうことよ』
「同じ系譜の神様で、中央世界務めの方っていらっしゃらないの?」
「もちろんいるさ。しかし管轄が違う。我ではアポ取りすら難しい」
へ~。そんなもんなんだ。
「アマテラス様やスサノオたちとドンパチやっても怒られないかしら?」
「心配は要らん」
ここはハッキリ言い切るのね。
「今更奴らに口出しする権利なんぞあるものか」
仲悪いの? アポ取り出来ないってそういうこと?
「アカルを連れてきた時は問題無かったの?」
「その件も含めてだ」
鎖国でもしているのかしら。
「そろそろ本題に入ってもよいだろうか?」
「ええ。そうね。ありがとう。助かったわ。進めましょう」
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ひとまず計画は順調と言ったところかしら。
取り敢えず、アマテラス様との協力関係については目を瞑ってもらえるようだ。もちろんそのように明言されたわけではないけれど、私に裁量を任せると結論を示してくれた。
「中央の出方は想定通りね」
「結構結構♪ これで動き出せるわね♪」
「なに笑ってるのよ。今のは嫌味よ。まさか本当に軍の編成は見送るなんて言い出すとはね」
「成果だけ欲しいんでしょ。そこまで含めて想定通りよ」
「想定していたからって、そんな恥知らずな提案を本当にしてくれば驚きもするわよ」
まあ気持ちはわかるけどね。もしかしたらって思っていた程度で、メインの想定ではなかったものね。
「職にあぶれた神々は際限無くこちらに回されるわよ」
そうね。元はと言えばそれを解決する為の軍だもんね。冒険者云々を先に提示してしまったのは失敗だったわね。なんでもかんでもお伺いを立てれば良いってものでもないのよね。先に新しい選択肢を提示してしまったも同然だったものね。それで済むなら中央が積極的に責任を負うこともないものね。
私たちが散々ゴネたから、意趣返し的な意味もあるのかも。「そこまで言うなら全部好きにやれ。我々は関与しない。しかし責任は取れ」というのが中央の返答なのかもね。彼らは結局英雄譚に加わることよりも、安全圏で見守ることにしたようね。テミスさんは少々過大評価していたのかも。ままならないものよね。
「猶予を付けてくれただけ温情ね」
「本当にわかっているの? 軍を編成するのは禁じられたも同然よ? 冒険者という仕組みを成立させられなければ、他の方法で責任を負わされるのよ?」
「そうね。全部ヒックリ返されちゃったわね」
「不誠実にも程があるわ」
「まあなんとかなるでしょ。向こうは口出しする権利まで手放しちゃったんだから」
「そんなの今だけよ」
「アマテラス様のとこに横流ししたら叱られるかしら?」
「いっそ革命軍の方にしなさいよ。全部集めて戦争起こしましょう」
あはは♪ メグルったらすっかりやさぐれちゃって♪
「何を呑気にしてるのよ。状況わかってるの?」
「ええ。困ったものよね。けれどこっちの方が性に合ってるのよ。私たちとしてはね」
「……それもそうね」
ふふ♪ メグルもそうよね♪
大丈夫。話は随分シンプルになったもの。むしろ手間が減ったとさえ言えるわね。こういう時はポジティブにいきましょう♪
さて。もう一度計画を詰め直しましょう。




