56-10.当事者意識
「だいたい話はわかったわ」
流石はアマテラス様の勢力と言ったところかしら。
想像以上に界賊たちの現状が詳らかとなった。ウズメは本当に全てを話してくれた。そしてそれだけ多くの情報を握っていた。知りたいことは殆ど知れたと言えるだろう。
そして同時に致命的なやらかしにも気付かされた。
「マズいわね。ウズメって賄賂じゃない」
「今更何言ってるのよ。鈍いわね、小春」
最初から全部わかっていて止めなかった策士家気取りが何か言ってるわね。
「メグル。あなた私を利用したわね」
アマテラス様との仲直りに。
「全ては小春のためよ。いつまでも私とアマテラスが敵対していたら困るでしょ」
それはその通り。
「それにウズメも可愛いじゃない。小春だって早くもデレデレじゃない」
それもその通り。
「そんな言い方は可哀想よ。あなたは人間なのだから、人間の倫理観を手放してはダメよ」
「もちろんわかっているわ。けどそれはそれとしてよ」
「私を罰するのは後になさい。テミスが次に姿を表す前に対策を考えなさいな」
ノープランかい! そこはノープランなんかい!!
なんて片手落ち! 見切り発車が過ぎるわ! いくらなんでも!!
「マズいじゃない! アマテラス様ってグレーどころか真っ黒じゃない!」
「あら。小春は知らないの? グレーって二種類いるのよ。その一方は丁度色の真ん中辺りに立っているだけの者。少しだけ黒寄りに立っているだけの者。そしてもう一方が、真っ黒なキャンパスを上から白く塗り潰した者。どんな悪事をも誤魔化してしまえる善の体現者。その眩すぎる後光によって全ての影は取り払われるわ。例え自分の影であってもね」
何をドヤ顔で決めてやがりますかぁ!
言ってやったみたいな顔してないで少しは悪びれなさいよ!!
「安心なさい。最初に言ったでしょ。中央の連中もアマテラスを討つことだけは出来ないわ。決してね」
「そりゃそうでしょうけど! だからってこれから討伐軍を編成しようって時にその発案者が界賊王と繋がってましたは洒落にならないでしょうが!」
「あなたが自分で呼んだんじゃない」
「ここまでとは思ってなかったわ! メグルがそう言ったのよ! 彼女が界賊扱いされているのは不可抗力だって! あくまで目的は救済なんだって!」
「だから救済してるじゃない」
「やり方が強引すぎるのよ! よく今まで討伐されなかったわね! だいたい抗争だって本気でガチのやつじゃない! どこのマフィアなのよ! アマテラスとスサノオって!!」
「界賊王と革命軍よ。マフィアじゃないわ」
「わかってるわよ! 例えよ例え!」
「はいはい。落ち着いて深呼吸でもしてみなさいな」
こんにゃろう!
----------------------
「今後の身の振り方を考えましょう」
真面目に作戦会議よ。いつまでもメグルに当たっていてもしょうがないし。
「やっと気付いてくれたのね」
かっち~ん……。
『『どうどう』』
くっ……。
「(?)」
「ごめんね、ウズメ。大丈夫よ。あなたとの関係を後悔しているわけじゃないわ。安心してここに居て頂戴。私もあなたを手放すつもりはないからね」
「(~♪)」
可愛い。
「小春は流石にチョロすぎると思うの」
やかましい。
「スサノオの革命軍についてメグルの意見を聞かせなさい」
「ウズメが話した通りよ。ぶっちゃけ姉への対抗心ね。本気で中央の転覆を狙っているわけじゃないわ」
それはそれでどうなんよ。
「とはいえ馬鹿にならないでしょ。彼らの掲げる志だって」
そっちもそっちでよくぞ無事にいられたものだ。とっくに中央が滅ぼしていたとしてもおかしくないだろうに。
今そうなっていないのは、単に彼らが実害を出していないからだ。中央の領域には決して触れていないからだ。
「今はまだ積極的な討伐に乗り出していないのだとしても、私が軍を率いることになれば当然話は別よ。中央は革命軍の討伐を求めるでしょうね」
「むしろそれが本題なのよ」
「ラグナロクでも起こす気なの?」
「さながら古今東西神話大戦ね」
行き着く果ては複層世界の終焉かしら。
「洒落になってないわよ」
「群雄割拠。その時代の幕を開くのは他ならぬ小春自身よ」
「メグル。考えている事があるのなら素直に明かしなさい」
「違うよ、アルカ。メグルはただかっこ付けてるだけだよ」
「酷いわ、マグナ。バラすことないじゃない」
おいこら。
「本当に洒落にならないんだってば」
「困ったわね~。どうしましょっか~」
「私が! それを! 聞いてるの!!」
意見出せやゴラァ!
「スサノオ勢力なんて潰してしまってはどうかしら?」
「その心は」
「中央から要請されて動くからダメなのよ。小春自身の意思と策謀を以って盤面を整えましょう」
……一理ある。
「かといって、勝手に一大勢力を潰したら中央はブチギレるでしょうね。連中には今まで目溢しをくれてやってたのに、自らの末端に加わった小春たちが独断で潰したとなれば、中央の面目は丸潰れよ」
「間違っているわ。私たちは中央の下にはつかないわ」
「もちろんわかってるわ。けれど中央の派遣した神々を軍に編成するなら避けられない認識よ」
これも事実ではなく認識の話だと。
「ならダメじゃない」
「だから困ってるんじゃない」
一応真面目に考えてもいるのね。
まだ名案が浮かんでいないだけだと言いたいのね。
「完全放置は?」
「それはそれでマズいでしょうね。下手をすれば、革命軍と界賊王の勢力で小春の取り合いが始まるわよ」
なんでやねん。
「彼らからしても、混沌の原初神勢力は無視できないわ。アマテラスの動きの早さを見れば納得でしょ。呼ばれた途端に抗争までほっぽりだして飛んできたのよ。直接その目で確認して繋がりを作るためにね」
実際とんぼ返りしてたもんね。アマテラス様。
確かにあり得る可能性なのかもしれない。
「小春が台風の目になるのは間違いないわね」
なんだ。いつものことか。
……ちくせう。




