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悪魔の生贄が救国の乙女になるまで  作者: らな


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第93話 ヨハンとセドリック

作戦会議の翌日の夜、セドリックがヨハンの部屋を訪れた。


「こんな時間にどうしたんじゃ?」

「実家の兄からこんな物をいただきましてね。」

セドリックは右手に持ったブドウ酒の瓶を少し持ち上げヨハンに見せた。

「ほう。さすがバルツァー伯爵家じゃのう。ブルゴー産の高級ワインか。」

入手困難なワインを見てヨハンが目を丸くした。


「決戦前に一度、先生とゆっくりお話ししたかったんですよ。」

セドリックの言葉にヨハンはワインからセドリックへと視線を移した。

かつて出会った頃は彼からそう呼ばれていたが、ここで再会してからはずっと”ヨハン神父”と呼ばれていたのだ。


ヨハンの視線にとまどいの色が混じったのを感じ、セドリックは苦笑した。

「他意はありません。今回の戦いは誰が死んでもおかしくないものです。最悪、全滅だってあり得る。だからその前に、もう一度先生としっかり向かいあいたかったんです。」

セドリックの言葉にヨハンは頷いた。


セドリックはヨハンの前の椅子に腰かけ、自らブドウ酒を注いだ。

その様子を黙って見ているヨハンを横目に、セドリックはヨハンと出会った頃のことを思い出していた。


                  ※

2人が出会ったのはヨハンが22歳の新米神官で、セドリックが12歳で神学校に入学したばかりの時だった。

平民出身ながら、高い神聖力を持ち優秀なヨハンは学生の中でも有名な存在だった。

明るく面倒見のよい性格もあり、学生の間では人気があった。


当時、ヨハンはセドリックのいるクラスで神聖力の授業を担当していた。

そして神聖力は非常に高いものの、その扱いが下手で苦労していたセドリックを根気強く指導してくれたのだ。

今のセドリックがあるのはヨハンのお陰と言っても過言ではない。

そういう経緯もあり、セドリックはヨハンに心酔し尊敬していた。


ヨハンはその実力で、神殿の中で順調にその地位を上げていった。

ところが、副大神官まで昇りつめてからが大変だった。


当時、大神官も副大神官もヨハンを除きすべて貴族出身の者だったのだ。

一般的に神聖力の高い者が他の者より優位になるため、長い時間をかけ貴族には平民より神聖力の高い者が多くなったという歴史がある。


セドリックはその時、地方の神殿に出向していたため仲の良かった神官から後から聞いた話だが、平民ながら高い位まで昇りつめたヨハンは妬まれ様々な嫌がらせを受けることになったらしい。

儀式で使う道具を隠されたり壊されたり、重要な情報をわざと知らされなかったり・・・。


ヨハンはそれらを全て実力でねじ伏せていたが、先の大神官が病に倒れ後継者を選ぶことになった時、事件が起こった。


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