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悪魔の生贄が救国の乙女になるまで  作者: らな


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第77話 ノアの回想

ノアは歴史あるクルム侯爵家の長男だった。

跡継ぎとして幼少時から厳しい修行や鍛錬を強制され、勉強でも優秀な成績を取ることが求められた。

父から叱責されることもしょっちゅうだった。


一方、2つ上の姉ソフィアは神聖力が乏しかったこともあり、訓練や勉強を強要されることも無く、好きな事だけして好きな物を望むだけ買い与えられていた。

我儘放題の姉は使用人たちに嫌われていたし、正直ノアも全く好きではなかった。


そんな姉は、その美貌を武器に第2王子の婚約者に収まり、ますます横暴になっていった。


神様は不平等だ、と思った。


努力もせず他者にも意地悪で、美しいこと以外取り柄のない姉が両親の愛情や王子の愛、権力を欲しいままにしている。

一方、自分は・・・。


そんな時、父からとんでもない話を聞かされた。


悪魔との契約。

代償はもう一人の姉。


ノアは会ったことの無い姉に同情と共感を覚えた。

両親からの愛情は無く、道具の様に扱われている。


自分と同じだと思った。

それどころか、悪魔の生贄にされるなど自分よりも状況は悲惨だ。


同情や共感を覚える一方で、その時はもう一人の姉に慕わしさなどを感じることはなかった。

ソフィアという姉の存在が大きすぎたのかもしれない。


特別な感情を持つことなく、姉と対面する日を迎えた。

そして初めてレイアを目にした時、大きな衝撃を覚えた。


寂れたクルム家の離れのホールに立つレイアはとても美しかった。

父に似た銀髪碧眼の容姿も、もちろん綺麗だった。

しかし、それよりもその身に纏う清廉な空気と内から放つ清浄なオーラに圧倒されたのだ。


救国の乙女・・・。


その言葉が真っ先に浮かんだ。

ベルナー王国に生まれた男子なら一度はその存在に憧れを抱くものだ。

直系の子孫であるノアも例外ではなかった。


この方が、僕の姉さまなんだ・・・。


恍惚とした思いでレイアを見つめていたが、程なくすぐ隣に立っていたソフィアに何か言われた。

「ノア。あなたもそう思うでしょう?あなたもお姉さまの存在を外で話しては駄目よ。クルム侯爵家の恥になってしまうわ。」

急に話しかけられたノアはびっくりして、ソフィアに愛想笑いを向けた。

「え、ええ。そうですね。姉上。」

ソフィアの言葉に、ノアはそう言って頷いた。


長年かけて培われた条件反射のようにノアがソフィアに答えると、レイアががっかりしたような表情で自分を見たのが見えた。

レイアの誤解を解きたかったが、父やソフィアの手前どうすることも出来なかった。


本館に戻ってからも頭の中はレイアのことでいっぱいだった。

今からでも、彼女を救うことが出来ないのだろうか。


大神官などに直訴すれば、悪魔を何とかしてもらえるかもしれない。

しかし、そうするためには父の悪事を明らかにする必要がある。

そうすればクルム侯爵家は終わりである。

うじうじ考えている間に、あっと言う間に1週間が過ぎた。


聖堂で初めて悪魔を見た時、その恐ろしさにノアは立っているのがやっとだった。

祓魔師として修業をしているノアには、その悪魔が非常に高位の悪魔であることや内包する魔力が凄まじいものであることが一目でわかった。


こんなの、どうしようもない。


正直、そう思った。

しかしレイアは悪魔を睨みつけ、身体中の神聖力を集め彼と対峙しようとしていた。

レイアの表情は険しいものだった。

勝てる見込みはないかもしれないが、諦めないで戦う。

その表情には、そんな彼女の意思が感じられた。


そして、状況は悪魔の一言によって一変した。

生贄はソフィアだったのだ。

それを聞いたソフィアはレイアのロザリオを奪い取り逃げようとした。


姉上らしいな・・・。


ノアは苦笑して状況を見守った。


そしてその後、ソフィアばかりかノアまで悪魔の茨に囚われた。

さすがにこの時は、ノアもパニックになった。

ずっと外野にいた自分が、いきなり舞台の上に引きずり出されたのだ。



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