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悪魔の生贄が救国の乙女になるまで  作者: らな


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第73話 魔界

ノアに案内され魔界に着き、まず目に入ったのは大きな噴水だった。

ちゃぷちゃぷと水を噴き上げる噴水を目で追うと、噴水の上の空に赤い月が浮かんでいるのが見えた。


「不気味な月でしょう?僕も最初そう思いましたが、すぐ慣れますよ。さあ、こちらです。」

ノアが指差す方に目をやると、石造りの古城が建っているのが見えた。

ゴシック様式のその古城は側にひろがる湖と合わせて一枚の絵画のように美しかった。

悪魔の居城と知りつつも、レイアは一瞬その美しさに目を奪われた。


「素晴らしい城ですよね。彼は美しいものが好きなんですよ。あなたも含めてね。」

ノアの言葉にレイアは彼を睨みつけた。

彼はレイアの弟だが、今まで顔を合わせたのはたった2回だけだ。

しかもその時は彼との会話は一言もなかった。


ソフィアは口を開けば意地の悪いことをを言うような子だったが、ノアも系統は違えどそうなのだろうか?

彼が発する言葉にいら立ちを感じながら、レイアはため息をついた。


               ※

古城につき中に入った。

館の中も外観を裏切らない非常に壮麗なものだった。


「レイア。よく来たな。」

上機嫌のアルベルトがレイアを出迎えた。


レイアが命をかけて放った神聖力でアルベルトは大きなダメージを受けたとノアが言っていたが、人外の美貌や纏う規格外のオーラは相変わらず健在だった。

ノアの命を使って回復したのだろうか。


レイアは無言で彼を睨みつけたが、アルベルトは軽く肩をすくめただけだった。

「今日はお前を歓迎する宴の準備が出来ている。まずは服を着替えてこい。」

そう言うとアルベルトはノアに視線を投げかけた。


「姉さま。こちらです。」

ノアに案内されたのは、女性用にしつらえた部屋だった。

床や壁に木材を使用しており、クリーム色の壁紙が貼られたその部屋は落ち着いた印象がした。

豪奢な館や華やかなアルベルトとはイメージが重ならない。


「気に入りましたか?姉さまのために用意した部屋です。新クルム公爵邸を参考にしたと彼は言っていましたが・・・。」

なるほど、レイアの部屋に似ているのだ。

レイアは返答をしなかったが、ノアは気にした様子もなく言葉を続けた。

「こちらが今日のために用意した服になります。着替え終わりましたら、このベルでお呼びください。案内の者が参ります。」

そう言ってノアは部屋を出て行った。


白地の絹に金糸で刺繍がほどこされたその衣装は、聖女の正装に似ていた。


魔界に連れてきて聖女の衣装を着せるなんて悪趣味ね。

祓魔されたい自虐願望でもあるのかしらね。


レイアは心の中で悪態をつきながら衣装を手に取った。

聖女のような衣装を見てふと思った。


以前より神聖力の高まったレイアならもしかしてアルベルトと互角に戦えるかもしれない。


でも、失敗したら・・・?


その時はレイアはもちろん、自分の大切な人たちにもアルベルトの魔の手が伸びるに違いない。

しばらくは様子を見て、彼の力を正確に見極めたり弱点を探したりするしかないだろう。


着替えが終わりベルを鳴らすと、ベルから黒いもやが現れた。

もやはみるみるうちに女性の形になり、こちらですというように扉の方へ向かった。

レイアは恐る恐る彼女について部屋を出たのだった。



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