第68話 フェリクスとの対話
「あの・・・単刀直入に言わせていただきます。フェリクス殿下には王位を継いで、この国を導いて頂きたいと思っています。」
意外な事を言われたとばかりにフェリクスは目を見開いた。
「なぜ、そう思った?私は心の弱さを悪魔に付け込まれ、乗っ取られるような男だ。王に相応しいとは思えない。」
「悪魔が言っていました。勇者の血筋は心が熱く、それ故に魔に魅入られやすいと。その熱い心を国のために向けて頂きたいのです。」
「だが・・・」
「神殿にいた時、マルクス殿下や様々な重臣の方々からあなたのことを聞かされました。多少大げさに言っていたことがあったとしても、あなたが優秀で国の事をよく考えておられる方だということが伝わってきました。」
レイアの言葉にフェリクスは黙り込んだ。
「マルクス殿下に頼まれたからここに来たのではありません。辞退のお話を伺って、私自身がそう思ったのです。」
「レイア・・・」
フェリクスはしばらく無言でレイアを見つめていたが、やがて意を決したように口を開いた。
「わかった。王位継承権は辞退しない。私が出来うる限りを尽くしてこの国を導いていくと君に約束しよう。」
その言葉を聞き、レイアは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます。」
レイアの笑顔を見て、フェリクスもつられるように微笑んだ。
空気は和やかなものになったが、いまだに顔色が優れないレイアにフェリクスが気づかわし気に声をかけてきた。
「目覚めて間もない時期で、体調も戻っていないのに無理をさせてすまなかった。身体がつらいようなら、今からでも君の部屋まで送ろう。」
「はい。そうしていただけると助かります。」
体調が万全でないのは本当だ。
レイアも遠慮せず、その申し出を受け入れた。
「レイア。部屋へ戻る前に一つだけ君に伝えたいことがある。」
真剣な口調に、レイアはフェリクスに視線を向けた。
「君が悪魔と戦っている時、私は身体がすくんで何もすることが出来なかった。黒い鎖が君に襲い掛かった時もだ。エルフリードが君を突き飛ばし、代わりにその鎖を自分の身に受けたのを見た時、ああ、この男には絶対に勝てないと思った。」
フェリクスは自嘲気味に笑い、その後表情を引き締めた。
「君は今回の功績が認められ、クルム侯爵家は公爵への格上げが検討されている。君が女公爵に着任した暁には、エルフリードが夫としてしっかり君を支えてくれるだろう。彼との幸せを祈っている。」
レイアは目を見開いてフェリクスを見た。
フェリクスが淡く微笑み頷くのを見て、思わず涙がこぼれた。
「ありがとうございます。」
かろうじてそう答えた。




