第66話 お願い
部屋を出たエルフリードとマルクスは移動しながら話を続けていた。
「エルはどうするつもりなんだ?王宮としてはレイアにクルム家を継いでもらいたいという案が有力だ。侯爵家を昇格させ公爵にさせようという話まで出ている。」
マルクスの話に驚きはない。
レイアの功績を考えれば妥当な話だろう。
「レイアの意思が一番だから、彼女しだいかな。レイアはクルム侯爵家にあまり思い入れはないだろうしね。ただ、歴史的に重要な家だからなるべく説得はするつもりだよ。」
エルフリードの言葉にマルクスは目を瞬かせた。
「エルはそれでいいのか?」
「どういう意味だ?」
「いや。レイアが当主になったら、そこに婿入りするような形になるだろう?」
ベルナー王国では女性が当主になることは特殊で、かなり珍しいのだ。
もちろん婿入りする男性もとても少ない。
「そんなこと、レイアと一緒になれるのなら気にならないさ。悪魔が現れた時は2人で死ぬことまで考えたくらいだ。」
それを聞いてマルクスが可笑しそうに笑った。
「エルは昔からぶれないな。休暇ごとに田舎に行ってたのはレイアに会うためだろう?あんな長期間誰にも彼女の存在を教えなかったなんて、今考えてもすごい独占欲だよ。」
それを聞いてエルフリードは顔をしかめた。
「僕なりに真剣だったさ。君やフェリクスが妃に望んだらレイアの立場じゃ拒めない。彼女を隠しておきたい気持ちが強くて、侯爵家とレイアの関係がなにかおかしいと思いつつ目をつぶっていたら、あんなことになった。僕なりに反省しているよ。」
「でも、レイアが幼い頃にことが発覚していたら、どうなっていたんだろうな?侯爵家は取り潰しになり、神聖力の高いレイアは神殿に引き取られていたかもしれないな。」
マルクスの言葉にエルフリードが嫌そうな表情を浮かべた。
「そうならなくて本当に良かったよ。大聖女になっていたかもしれないと思うとぞっとする。」
聖女は還俗して結婚も出来るが、大聖女は一度なってしまうと還俗が出来ないのだ。
「あはは。」
マルクスが笑った。
その後、2人は翌日のおおよその時間や段取りを相談し別れたのだった。




