第64話 お願い
「僕だ。マルクスだよ。」
2人は顔を見合わせた。
レイアが頷いたのを見て、エルフリードが返事をした。
「どうぞ。」
カチャリ
扉が開きマルクスが入ってきた。
「レイア、身体は大丈夫か?」
「はい。だるさはまだありますが、調子は悪くないです。」
「そうか。良かった。」
前よりやつれたレイアを見てマルクスは心配そうな表情になったが、返事を聞いてホッとしたようだった。
「マルクス。レイアはまだ本調子じゃない。要件は何?」
せかすエルフリードにマルクスは苦笑いを浮かべ頷いた。
「レイアは今、王宮がどうなっているか知っているか?」
「はい。先ほどエルから聞きました。フェリクス様があなたに王太子位を譲りたいとおっしゃっているとか・・・。」
マルクスは頷いた。
「その事で頼みがある。君から兄上を説得してもらえないだろうか?」
「!」
青ざめるレイアを見て、エルフリードはマルクスを責めた。
「フェリクスがレイアに何をしたか知っているだろう。今、会わせるのは・・・。」
反論するエルフリードの腕にレイアは手を添えた。
「エル。大丈夫よ。お役にたてるかどうかは分かりませんが、お話をうかがうぐらいはできます。どうして私に頼もうと?」
「ありがとう・・・。兄上が君にしたことは許されることではないと僕も思う。ただ、君を欲する気持ちに付け込まれ途中からは悪魔に操られていたんだ。」
レイアはマルクスを見つめた。
「いつぐらいから?」
「君が神殿に入って程なくして悪魔が現れ、それから時々記憶が途切れることがあったとおっしゃっていた。あの時の兄上の行動は確かに兄上らしくないと感じることが時々あった。その時はそれほど君が欲しいのかと思って流してしまっていたけど・・・。」
レイアは頷き先を促した。
「兄上は悪魔の甘言に乗ってしまった自分を恥じ、自分は王位に相応しくないといいだしたんだ。」
「その話も先ほどエルから聞きました。今回の件では私もエルも確かに大変な目に合いました。でも、そこを切り離して冷静に考えたら、王位に適性があるのはフェリクス様じゃないかと話していたんです。」
マルクスはレイアの話を黙って聞いていた。
「神殿にいた時、あなたや重臣の方々からフェリクス様の功績や彼がいかに素晴らしいかを色々聞かされました。フェリクス様から国に対するご自身の熱い思いを直接伺ったこともあります。ですので、私もエルと同じ意見です。」
マルクスはそれを聞いてすがるようにレイアを見た。
「それを兄上に直接伝えてもらえないだろうか?」
「私からですか?」
「お願いだ。君にしか頼めない。国外に逃げるはめになったり死にかけたり、君が一番の被害者だ。君からそう伝えてもらえたら、兄上も考えを変えてくれるかもしれない。僕やエルからでは駄目なんだ。」
そう言ってマルクスは深く頭を下げた。
王子にその様な態度をとられ、レイアは狼狽えた。




