第60話 悪魔との戦い
自分に口づけてきたフェリクスを抵抗せず受けいれ、レイアは両手で彼の背中を抱きしめた。
まだ完全にアルベルトと同化しているわけではないのか、フェリクスが驚いたように目を見開いた。
彼を抱きしめながら、胸元にかかるロザリオの存在を感じクララのことを想った。
クララも助けて。
私の命をかけても、フェリクス様からこの悪魔を引きはがさなければ、この国は終わってしまう・・・。
このまま悪魔の言いなりになっても、その先の未来は真っ暗だ。
クララやヨハンの他、レーゲンスブルクにいる友達や王都に来てから知り合い親切にしてくれた人達の顔を思い浮かべた。
悪魔が支配する国となれば、彼らにも甚大な被害が出るだろう。
それならば、自分が命を落とすかもしれなくても全力で抗う選択肢を選びたい。
先ほどエルフリードを見つめた時、彼はレイアの考えを瞬時に理解してくれた。
そして、声を出さずに背中を押してくれた。
”後から僕もいく”
集中力を高め、持てる神聖力をすべて両手に集めた。
そして集められる限界まできた瞬間、レイアはありったけの神聖力をフェリクスの中に放ち込んだ。
「な、なにを!」
フェリクス、いやアルベルトがレイアから身体を離そうとした。
レイアはそうさせまいと、必死でフェリクスの身体にしがみついた。
「放せ!」
両手で肩を掴まれ、身体を引きはがされそうになった。
レイアは必死でフェリクスの目を見つめた。
「フェリクス様、聞こえますか?悪魔の言いなりになってはいけません。どうか、この国を、私を助けて下さい!」
一生懸命、フェリクスに話しかけた。
「貴様!うわあ!」
フェリクスの身体が大きく弾んだかと思うと、中から弾き出されるように別の男が飛び出してきた。
「やってくれたな。」
男、いやアルベルトは忌々しそうにレイアを睨みつけた。
「ふん、つまらない小細工はやめだ。直接、お前を手に入れてやる。」
アルベルトが手のひらをレイアの方へ向けると黒い茨が現れた。
レイアは茨を睨みつけ、神聖力をぶつけた。
神聖力が当たった茨はサラサラと崩れていったが、次々と現れる茨にレイアの体力はどんどん削られていった。
そして遂に1本の茨がレイアの身体に巻き付いた。
「他愛もない。もうお終いか?」
勝ちを確信したアルベルトが楽しそうに笑みを浮かべ近づいてきた。
そして茨に拘束され動けないレイアをアルベルトは愛おしそうに抱きしめた。
「ついに手に入れたぞ。クリスティーナ。魔界で存分に可愛がってやる。」




