第56話 突然の来訪者
家に帰りレイアが入浴を済ませて髪を乾かしていると、後から入浴を終えたエルフリードがリビングに戻ってきた。
「伯父様、素敵な方だったわね。あまり頼ってはいけないのだろうけど、いざとなった時に頼れる人がいると思えるだけで安心できるね。」
レイアの言葉にエルフリードが頷いた。
「そうだね。伯父上は情が深い方だから。迷惑はかけられないけど。」
そんな話をしながら、そろそろ寝ようとエルフリードが灯りを消そうとした時、部屋の温度が急に冷たくなり、辺りが暗くなった。
「!」
2人はびっくりして周りを見回した。
エルフリードがレイアの肩を抱き、引き寄せた。
部屋の入口の扉の前の辺りの空気が歪み渦を巻いたように見えた瞬間、そこに一人の男が現れた。
「フェリクス」
エルフリードがレイアの肩を抱く手に力を込めた。
「レイア。国外にいるなんて、随分遠くまで逃げたんだな。見つけるのに苦労したよ。」
何気なく声をかけられ、レイアはビクっと身体をすくませた。
「フェリクス様、どうして・・・?」
「どうして?さんざん伝えたつもりだったけど、ちゃんと伝わってなかったのか?お前を愛しているからだ。」
レイアはフェリクスがどうやってここの場所を知ったのか、どうやってここに来たのかを聞いたつもりだった。
わざとなのかフェリクスはそう答えた後、エルフリードを睨みつけた。
「ああ。まだ、そいつがいたのか。邪魔だな。」
フェリクスが右手の手のひらをエルフリードに向けた。
そのとたんエルフリードの身体がレイアから引きはがされ、そのまま壁に打ちつけられた。
ドンッ
「痛った・・・」
身体を強打したエルフリードはそこにうずくまった。
「エル!」
レイアはエルフリードに駆け寄ろうとした。
「えっ?」
身体が全く動かない。
まさか・・・?
レイアは不安そうにフェリクスに視線を向けた。
「私のレイア。」
フェリクスはコツコツと歩いてレイアの方へ近づいてきた。
「いや・・・、来ないで!」
以前の彼とは違って禍々しい気配を感じる。
この周囲の温度を一気に下げるような冷たく暗いオーラには覚えがあった。
「アル・・ベル・・ト?」
まさかと思いつつ、その名を呼ぶとフェリクスはニヤッと口の端をゆがめ、そのまま何も言わずレイアを抱きしめた。
「さあ、レイア。私とベルナーへ帰ろう。」
冷気が強くなり、レイアは身体を震わせた。
「レイアを離せ!」
痛む身体を鞭打って、エルフリードが2人に突進してきた。
そして彼の手がフェリクスの腕をつかんだ瞬間、3人の周辺の空気がぐにゃりと歪み周囲の景色が消え去った。
馬車酔いのような感覚がしたかと思うと、次に目にしたのは見覚えのない部屋の中だった。




