第52話 恩人たちとの別れ
レイアはクララに抱きついた。
「お嬢様、少しやせられて・・・。」
クララがレイアの頬に手をあて心配そうにつぶやいた。
「ええ、でも大丈夫。クララとエルに会えたから、またご飯が食べられるようになるわ。」
レイアは安心させるように微笑んだ。
「お嬢様、これ。」
クララは小さな箱を取り出しレイアに渡した。
「開けてみて下さい。」
クララに促され箱を開けると、そこには銀色のチェーンが入っていた。
「これは?」
「ロザリオをかけるのに丁度いいかと思ったんです。あのロザリオはレイアードのものだから男性用ですし、チェーンも武骨な感じだったでしょう?」
クララはレイアの首にかかるロザリオのチェーンを右手でなぞった。
レイアはロザリオを取り出し、もらったばかりのチェーンと入れ替えた。
「やっぱり首元から見えるのはこちらの方がいいですね。」
満足そうに笑うクララにレイアは外したチェーンを渡した。
「これ、クララが持っていて。」
「えっ?」
「ロザリオはクララの旦那様の物なのに私が持っていて気になっていたの。せめてこれだけでもクララが持っていて欲しいの。」
レイアは外したチェーンをクララの首にかけ、ギュウっとクララを抱きしめた。
「クララ。今までありがとう。ずっと心の中でクララのことをお母さんだと思っていたの。クルム侯爵家の人たちと会ってからもそう思ってた。いっぱい愛してもらったのに何も返せなくてごめんなさい・・・。」
最後の方は泣き声になっていた。
「お嬢様。私こそ感謝してるんですよ。レイアードと生まれた子が立て続けに亡くなって生きる気力が無くなっていた私を元気にしてくれたのが赤ん坊だったお嬢様なんです。名前もまるでレイアードからもらったみたいで・・・。私もお嬢様のことを娘のように思ってました。ノースブロンに行っても心の絆は切れません。ベルナーからお嬢様の幸せをお祈りしています。」
「クララ・・・」
しばらくレイアを優しく抱きしめた後、クララは最後に力を込めてギュッと抱きしめてきた。
「さあ、早く出発しましょう。気づかれる前になるべく遠くまで行った方がいいですから。」
クララに促され身体を離したレイアにエルフリードが茶髪のウィッグを渡してきた。
「君の髪色はベルナーでは目立つから、ノースブロンに着くまではこれを被ってて。」
エルフリードを見ると、彼は既に茶色のウィッグを被っていた。
うす茶色の髪はこの国で一番多い色だ。
レイアは渡されたウィッグを被り鏡を見てみた。
茶色の髪に青い目はクララとおそろいだ。
「こうしてみると本当の親子みたいね。ノースブロンに行って、全てが落ち着いたら会いに来て。お母さん。」
レイアの言葉にクララは目を潤ませ頷いた。
「ええ、必ず行くわ。私のレイア。」
別邸に用意されていた荷物を持ち、2人は館から少し離れたところで辻馬車をひろい王都を発ったのだった。




