第二十一話 奴隷解放作戦 其の一
「敵襲!敵襲!」
ブルケルマの見張り台から鐘の音が鳴り響く。
人々はこぞって反対方面へ急ぎ、家に隠れ、戦える者共は武器を取った。
警備兵軍と、戦えるランクの冒険者達は警備兵長及びブルケルマ支部長の指示に従い、臨戦態勢を取った。
ブルケルマには領主がケチったせいで門を閉じることが出来ない。
その代わり、警備兵は比較的強い。
「的は正体不明の骸骨!動作方法が不明なため斬撃ではなく、打撃による骨の破壊を目標とする!
皆の者!掛かれぇ!」
「「うをぉぉぉお!」」
そうして突如町中に現れた不死身のアンデッドと、連合軍による持久戦が始まった。
それを横目に街の中心部へとジル達は向かった。
「…領主邸はあそこか。」
街の真ん中に一際目立つ大豪邸が建っていた。
「今なら人一人居ない筈だ。ここで必ず解放する。」
【ブーケルマ子爵視点】
「何だか外が騒がしいな…?セバス、何があった。」
「はい。どうやら町中に突如として骸骨の魔物が現れたとか。」
「チッ!警備兵は何をやってるんだ!アレだけ給料をやっているくせに警備の一つもできないのか!
おい!セバス!今月の給料を1割減らしておけ!」
「…かしこまりました。」
「…そろそろいつものをやろう。セバス、部屋の片付けをしておけ。私は少し戯れてくる。」
「…かしこまりました。」
【ジル視点】
「2階には、あの爺さんしか居なさそうだな…」
俺達は木や1階の屋根から飛びてだ所などを伝って2階の窓の所に来ていた。
「どうするジル?」
「あの人を捕らえてください。その後、声を出されないように口にこの布を詰め込みます。」
「分かった。」
その時、中の爺さんが背を向けて片付けを始めた。
「突撃!」
合図と同時に窓ガラスをメノが破壊。
突撃と同時に爺さんの頭を掴んで貰って、何が叫ばれるより先に口のなかに布を押し込んだ。
「〜〜〜〜〜」
「黙れ。黙らないと顔面に魔術を当てるぞ。」
「〜〜〜〜」
それでも黙らなかったので俺はまだ割れてない窓ガラスに向かってウォーターボールを撃ち込んだ。
「これでもまだ騒ぐのか?」
「…」
そして爺さんは静かになった。
「ここの領主、ブーケルマは今何処にいる。
知っていれば何もするな。知らなければ首を横に振れ。」
爺さんは何もしなかった。
「…何処だ。」
俺は爺さんに手を向けた状態で布を外した。
「…貴方方はあの人をどうするつもりですか。」
「殺すよう依頼されてる。」
「…良いでしょう。教えますよ。あんな奴。」
「…良いのか?」
「老後の資金はもう十分貯まっています。今さら止めても全く問題ないですよ。」
「…此方は殺す事に対して質問したつもりだったんだが、そちらも随分殺意が有るようだ。」
「彼奴はとても我儘でね。沢山悪い事もしてた。
だが、金だけはあったから何でも揉み消していた。」
「つまり、アンタは奴隷の居場所も知っているんだな?」
「勿論。この家に居る人は彼奴と私だけだ。
彼奴の世話は全て私がしていたんですよ。」
「他のやつは?」
「全員逃げたか殺されましたよ。皆何も言わずに次の日には居なくなってるんですから。」
「何でお前は逃げなかったんだ?」
「私は先代にも雇われていまして、元々身分が低かった私でも先代様は認めてくれて、最終的には使用人長を務めるまでになった。
だから、私の命が尽きるまでこの家に仕えようと決めたのです。
けど、彼奴は駄目だ。
もう、あの頃のブーケルマ家は戻ってこない。」
「…俺たちの第一任務はブーケルマの殺害ではなく、奴隷たちの解放だ。
ブーケルマを殺すのは骸骨たちが殺しきれなかった時だけだ。」
「彼奴は今、地下の奴隷収監部屋にいる。
付いてきてください。そして、もうこの家を壊してください。」
俺達は階段を降りて、一回に行き、廊下にある隠し扉で奴隷収監部屋への扉を空け、下へ降りた。
「…この先を抜けると、彼奴が居ます。」
「わかった。」
爺さんはここで引き返し、俺達は先へと進んだ。
「…、……、…」
暫くして声が聞こえてきた。
子供の声がする。
マジでイライラするな。
そして、階段の最後に来た。
俺は殺しそうになるのを抑えながら扉を蹴破った。
「ブーケルマ!動くな!」
しかし、そこにブーケルマは居なかった。
子供たちは居た。
しかし、その子たちの一言目は『助けて』じゃ無かった。
「来ちゃ駄目!」
「?!」
その時、扉の向こうに突然檻が降りてきて出られなくなった。
「?!」
「ハッハッハッハ!」
上から笑い声がして見てみると、其処にはガラス越しに見ている男二人が居た。
そのうちの一方は
「クソ爺!」
「あんなに簡単に人を信じるのはバカすぎやしないかい?」
「バカだねぇ!私を殺そう思ってたにしては、何も考えずに突っ込んで行ったでしょ?
本当にバカだねぇ!」
「死ね!」
俺はウォーターボールをガラスに向かって撃った。
「「危なっ!」」
「ハッハッハッハ!煩い子供は黙らせないといけないね!」
そう言ってブーケルマは何かを投げ込んできた。
それは地面に当たると同時に白い粉が部屋全体を舞った。
「?!」
最初何だか分からなかったが、意識が薄れる感覚があり、直ぐに催眠薬の類だと気がついた。
「おやすみ。坊や。」
「クソ爺くたば…」
そこで俺の意識は途絶えた。




