霙(ミゾレ)混じりの涙後
初めてまして。
この場を借りて…
読んでくださり有難うございます(*^▽^)/
まず、前話の一部に誤字があった事をお詫び致しますm(_ _)m
今後、誤字脱字等には気をつけます。
なるべく読みやすい様には書いてるのですが…心配です。
執筆も亀なので、完結までにはまだ時間がかかると思いますが、最後までお付き合い頂けると嬉しいです!
「今日飲み行くよ!」
更衣室でのナズちゃんの言葉に私は一瞬止まった。
提案は突然で即決。
まあいつもの事か。
そう考えたら今更驚く発言でもない。
「みんな行くかなー?」
その言葉に彼女は笑顔で答える。
「なんだかんだ言って来る奴は来るのよ」
「否定出来ないなぁ〜」
「でしょ!」
「でも珍しいね。ナズちゃんが率先するのは」
「答えは簡単…」
さっきの笑顔より格別嬉しそうに答える。
「あたしは明日休み!」
「…なるほど」
電気を消して、私達は休憩室に向かった。
−ガチャ−
「お酒の飲みたい人ー」
「えっ?今日?」
「マジかよ」
「ナズ発案?」
「うん。
あれ?飲みたくない人なんていたっけ〜?」
『…………』
「ほらねっ」
私の肩を叩いてうんうん頷いてみせる。
その光景に吹き出しそうになってしまう。
既にみんなの目もきちんとアフターに向かっていた。勿論私もだ。
「でもトーコ風邪は?」
「大丈夫だよリューちゃん。薬飲んでるもん」
「それは大丈夫って言わないんだよ」
「マキはアルコール抜きな」
「え〜。クマターン…」
「プッ…!
やっぱり何回聞いても笑っちゃいますよ。トーコさんつけたクマタンって呼び名」
「タケー。お前もアルコール抜くか?」
「失礼しました〜」
今では大分みんなも慣れたけど、最初は笑われっぱなしだった。
どーせ笑われるならマキタン、くらい呼ばれたいと思ったけど、思いついた自分が恥ずかしくなったので、そのまま思考を停止させ封印した。
『おつかれー!カンパーイ!』
高洲店は割と栄えてる土地の駅付近にあり、居酒屋等の飲み屋さんは朝まで開いてるお店もある。
既にこの辺のお店はどこも馴染みだ。
私の右隣りにリューちゃん。左隣りにはナズちゃん。
向かい側に彼。
隣に行きたい気もしたが、この方がよく見れる。
こうなるとお酒が飲めなくてもさほど問題はない。
雰囲気で十分、楽しそうな彼の姿を見れるだけでほろ酔い気分にまでなれる。
「お手軽だよなぁ…」
「何が?」
「ううん。何でも」
「ごめんね」
「ん?何で?」
「風邪ひきなのに飲み会!なんて言っちゃってさ」
「全然!
飲まなくたって楽しいよ」
「実は最初、トーコと二人で飲もうかなーって思ったんだけどさ…。
泣いたら困るからやめた」
「…どした?」
「………。
先週さ、
宮本と別れたんだ」
「え…」
宮本さんはナズちゃんと同じ歳の高3から付き合っている彼氏で、現在パティシエ修業をしている。
私も2、3度会った事があり、お手製の洋菓子をご馳走になった事もあった。
喧嘩してても二人の姿は、それすら会話を楽しんでる様に見える程仲が良かったのに…。
「フランス行くんだって。前から行きたいとは言ってたんだー。
待つなって言うから、待たない。
連れてって…って言ったんだけど、一人じゃなきゃダメなんだって言われてさ…」
「解ってるよねー。
待ってろとは言わないんだもの。
もし言われてたら、うんって頷くけど、あたしはそのうち待てなくなると思う。
寂しさに負けてね」
「うん…」
「それに結婚もなるべく早くしたいんだ…。
5年一緒に居て、来るか?とは言われなかった。
あたしとの未来は、描かれてなかったんだね」
「ナズちゃん…」
「こんな話さ、女二人で飲み語ったら間違いなく号泣っしょ。
周りで騒いでてくれたら笑って話せるかなってね」
そう言っていつもの様に笑って見せた…。
目を腫らし出勤なんてして来ない。
元気のない"おはよう"も聞いてない。
彼女の姿を思い出して胸が苦しくなる。
「頑張り過ぎ…。
だから…ハグの刑だっ」
宮本さんのハグには到底敵わない。
でも優しい言葉は涙になってしまう。
今は仕舞い込んでおきたいのなら、私も隠す手伝いをしよう…。
「ナズちゃん。
風邪が治ったら二人で語り飲みしようね。
勿論スッピンで我が家に強制宿泊!」
「期待しちゃうよ?」
「してして!
あ、すいませ〜ん。生中一つっ!」
『エーーーー!?』
「結局飲むのね」
「トーコ…」
「ナズも止めろよー」
「あたしにはもう止められないわ」
「トーコさんは絶対飲むと思ってましたよ」
「シューマっ……」
[…スーー…スーー]
「早いよ…」
−それにしてもみんなよく飲む。ザルだよなぁ。
目がちょっと赤い。
何時だろう?
−バタン−
「あ、タケ。みんなに付き合ってたら学校行けなくなるよ〜」
「大丈夫です!最悪このまま行っちゃいますから」
「朝からお酒臭いと女の子に逃げられるよ?」
「いんですよ。学校の女子は女じゃないですもん」
「言うねぇ」
「そう言えばトーコさん」
「ん?」
「ナズさん今日はやたらテンション高くないですか?」
「そーかもね。気になるの?」
「まぁ…」
「何でか知りたい?」
「知ってるんですか?!」
「フッフッフッ…」
「教えてくださいよ〜」
「本人に聞いてごらん?」
「僕に教えてくれますかね〜?」
「多分みんな気付いてると思うけど」
「………。
あーーーーっ!休み!
ナズさぁ〜ん」
私の返答を待たずに行ってしまった。
想いが募り、想いが揺れる。
想いを閉じ込め、想いを断ち切る。
見えないだけに形は様々変化する。
もしそれが目に見えてしまったら、人はどーやって対処するんだろう?
あれ?
彼の姿が見えない。
何も言わずに帰る訳ないし…。
入口まで行きドアを開けてみた。
−ガチャ−
階段を降り路上に出ると、曇り空に霧がかかってる。
朝日は見えない。
2秒待って視界を合わせると、向かい側のガードレールに腰掛けてる彼がうっすら見えた。
車通りはなく、赤信号を渡り彼の隣に腰掛ける。
「起きたんだ?」
「半分な。風に当たって睡魔退治中〜」
「手伝おうか?」
「手強いぞ?」
「チューしたらビックリして目が覚めるぅ〜」
「逆だろ?
目閉じて腰に手まわすっしょ」
「……………」
「マキ、自爆〜」
「今のはズルイよ」
「こっちの方が正当だって」
「正当ねぇ…」
「ん…?酒臭い!」
「うそ??」
「嘘。でも目がウサギになってる。飲んだな?」
「少しだけだよ」
「グラス1杯?」
「…ジョッキ3杯…」
「マキー」
「違うの聞いて。
女はね、誰かの為に飲まなきゃいけない時もある!」
「んー…。50点」
「えー。男だってあるでしょ?そういう時が」
「まぁあるケド。
誰かの為の心意気は100点。風邪ひきの分はマイナス50点。早く治せって事」
「肝に命じまーす」
「で。誰かって誰?」
「それは秘密」
「男がらみか…」
「はぁ?」
「仕事中も楽しそうだもんな。俺が見る限りいつもオーラが出てる」
「だって楽しいもん。
クマタンは?」
「俺も楽しいよ。
仕事も人間関係もバランス良いし」
「じゃあ幸せなんじゃない?」
「多分な」
「多分か…」
「これだっていう確信ついたモノが無いと、気付くのに時間がかかるだろ?」
「うん」
「そんな感じ。
俺の場合、若干逃げもあるなー。矛盾してるけど」
「………」
欲しいという欲求の反面逃げてしまうのは、不安が勝っているから。
不安を作るのは未知への畏縮。
もしくは過去のトラウマ…。
それ以上は聞けなかった。
鉛筆か油性マジックかは分からないケド、目の前に線を引かれた気がしたのだけは確か。
店内に戻ると会計を終えて、みんなの視線は一点に集中していた。
「ナズさん…」
「ナズー帰るよ!」
「こりゃ起きねーだろ」
「参ったな…」
「ナズの彼氏に電話する?」
「うちに連れてくよ!」
「3分でへばるな」
「じゃー、通り道だからトーコんちまで自分が連れてく」
「ありがとうリューちゃん」
−歩くと30分の道のり。
私は自転車を引き、リューちゃんの背中にはナズちゃんが眠ってる。
「意識のない人間って重く感じるね。ナズが小柄で良かった」
「あたしだったらアウトだ」
「トーコでもいける。現状維持ならね」
「わわっ」
「今日のナズは飲み方が変だった。
それにトーコも少し」
「私は酔っ払いじゃありません」
「うん。すっかり覚めてるね。
シューちゃんと何かあった?」
「ないよ。
あったら羽根が生えて飛んでってる…」
「リューちゃんは気付いてるよね?」
「自慢じゃないけど3日目には確信してた」
「そっか…」
「話したいなら聞くし、話したくないなら聞かない」
「私が聞いてもいい?」
「いーよ」
「ビンの中に入ってる船舶模型ってあるじゃない?
あの船はどーやって取り出すの?」
「話しを抽象化しない」
「でも同じ様な事なの。
ビンが邪魔なんだもん…」
「…今すぐなら取り出したいならビンを割る」
「それじゃーダメなの。
すぐじゃなくて良い。
ただ…方法があるって事だけでも知りたい」
「方法が無かったら諦める?」
「諦めない。
方法は必ずあると思う。」
「良かった」
「じゃー今度は自分が聞く番。
時間をかけなきゃ出来ない事って色々あるよね?」
「うん」
「恋愛でも何でもいいから、その中で1番時間をかけた事を思い出して。
」
「…うん」
「どんな気持ちだった?」
「…苦しかった」
「その先は?」
「…何もなかった…」
「なかった?」
「正確に言うと途中でやめたんだ。
人を忘れる事は出来ないって気付いたから」
そう言った瞬間、リューちゃんの足が止まった。
「そういう人がいるの?」
私の目を見据えて尋ねる。
「兄が…中学の時に亡くなって…」
全部言い終わる前に、鼓動がどんどん速くなってくのに気付いた。
そして予感する間もなく、私は悟ってしまった。
−そうか…。
−そうなんだ…。
足が動かない。
一瞬頬が熱くなり、風を受けて冷えていくのに気付く。
私が泣いてるのは何故だろう。
兄の事を思い出した?
彼の気持ちに同調したから?
どれも違う。
自分の言葉に泣いているんだ。
[人を忘れる事は出来ない]
時間を費やしても私が出来なかった事。
私が1番知っている事だったから…。




