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雪解けの頃  作者: 四季
4/5

霙(ミゾレ)混じりの涙後

初めてまして。

この場を借りて…

読んでくださり有難うございます(*^▽^)/

まず、前話の一部に誤字があった事をお詫び致しますm(_ _)m

今後、誤字脱字等には気をつけます。

なるべく読みやすい様には書いてるのですが…心配です。

執筆も亀なので、完結までにはまだ時間がかかると思いますが、最後までお付き合い頂けると嬉しいです!


「今日飲み行くよ!」

 

更衣室でのナズちゃんの言葉に私は一瞬止まった。

提案は突然で即決。

まあいつもの事か。

そう考えたら今更驚く発言でもない。

 

「みんな行くかなー?」

 

その言葉に彼女は笑顔で答える。

 

「なんだかんだ言って来る奴は来るのよ」

「否定出来ないなぁ〜」

「でしょ!」

「でも珍しいね。ナズちゃんが率先するのは」

「答えは簡単…」

 

さっきの笑顔より格別嬉しそうに答える。

 

「あたしは明日休み!」

 

「…なるほど」

 

電気を消して、私達は休憩室に向かった。

 

 

−ガチャ−

 

「お酒の飲みたい人ー」

「えっ?今日?」

「マジかよ」

「ナズ発案?」

「うん。

あれ?飲みたくない人なんていたっけ〜?」

 

『…………』

 

「ほらねっ」

 

私の肩を叩いてうんうん頷いてみせる。

その光景に吹き出しそうになってしまう。

既にみんなの目もきちんとアフターに向かっていた。勿論私もだ。

 

「でもトーコ風邪は?」

「大丈夫だよリューちゃん。薬飲んでるもん」

「それは大丈夫って言わないんだよ」

「マキはアルコール抜きな」

「え〜。クマターン…」

「プッ…!

やっぱり何回聞いても笑っちゃいますよ。トーコさんつけたクマタンって呼び名」

「タケー。お前もアルコール抜くか?」

「失礼しました〜」

 

今では大分みんなも慣れたけど、最初は笑われっぱなしだった。

どーせ笑われるならマキタン、くらい呼ばれたいと思ったけど、思いついた自分が恥ずかしくなったので、そのまま思考を停止させ封印した。

 

 

 

 

『おつかれー!カンパーイ!』

 

高洲店は割と栄えてる土地の駅付近にあり、居酒屋等の飲み屋さんは朝まで開いてるお店もある。

既にこの辺のお店はどこも馴染みだ。

私の右隣りにリューちゃん。左隣りにはナズちゃん。

向かい側に彼。

隣に行きたい気もしたが、この方がよく見れる。

こうなるとお酒が飲めなくてもさほど問題はない。

雰囲気で十分、楽しそうな彼の姿を見れるだけでほろ酔い気分にまでなれる。

 

「お手軽だよなぁ…」

 

「何が?」

「ううん。何でも」

 

「ごめんね」

「ん?何で?」

「風邪ひきなのに飲み会!なんて言っちゃってさ」

「全然!

飲まなくたって楽しいよ」

「実は最初、トーコと二人で飲もうかなーって思ったんだけどさ…。

泣いたら困るからやめた」

 

「…どした?」

 

「………。

先週さ、

宮本と別れたんだ」

 

「え…」

 

 

宮本さんはナズちゃんと同じ歳の高3から付き合っている彼氏で、現在パティシエ修業をしている。

私も2、3度会った事があり、お手製の洋菓子をご馳走になった事もあった。

喧嘩してても二人の姿は、それすら会話を楽しんでる様に見える程仲が良かったのに…。

 

 

「フランス行くんだって。前から行きたいとは言ってたんだー。

待つなって言うから、待たない。

連れてって…って言ったんだけど、一人じゃなきゃダメなんだって言われてさ…」

 

「解ってるよねー。

待ってろとは言わないんだもの。

もし言われてたら、うんって頷くけど、あたしはそのうち待てなくなると思う。

寂しさに負けてね」

 

「うん…」

 

「それに結婚もなるべく早くしたいんだ…。

5年一緒に居て、来るか?とは言われなかった。

あたしとの未来は、描かれてなかったんだね」

 

「ナズちゃん…」

 

「こんな話さ、女二人で飲み語ったら間違いなく号泣っしょ。

周りで騒いでてくれたら笑って話せるかなってね」

 

そう言っていつもの様に笑って見せた…。

目を腫らし出勤なんてして来ない。

元気のない"おはよう"も聞いてない。

彼女の姿を思い出して胸が苦しくなる。

 

「頑張り過ぎ…。

だから…ハグの刑だっ」

 

宮本さんのハグには到底敵わない。

でも優しい言葉は涙になってしまう。

今は仕舞い込んでおきたいのなら、私も隠す手伝いをしよう…。

 

「ナズちゃん。

風邪が治ったら二人で語り飲みしようね。

勿論スッピンで我が家に強制宿泊!」

「期待しちゃうよ?」

「してして!

あ、すいませ〜ん。生中一つっ!」

 

『エーーーー!?』

 

「結局飲むのね」

「トーコ…」

「ナズも止めろよー」

「あたしにはもう止められないわ」

「トーコさんは絶対飲むと思ってましたよ」

「シューマっ……」

 

[…スーー…スーー]

 

「早いよ…」

 

 

 

 

 

−それにしてもみんなよく飲む。ザルだよなぁ。

目がちょっと赤い。

何時だろう?

 

−バタン−

 

「あ、タケ。みんなに付き合ってたら学校行けなくなるよ〜」

「大丈夫です!最悪このまま行っちゃいますから」

「朝からお酒臭いと女の子に逃げられるよ?」

「いんですよ。学校の女子は女じゃないですもん」

「言うねぇ」

 

「そう言えばトーコさん」

「ん?」

「ナズさん今日はやたらテンション高くないですか?」

「そーかもね。気になるの?」

「まぁ…」

「何でか知りたい?」

「知ってるんですか?!」

「フッフッフッ…」

「教えてくださいよ〜」

「本人に聞いてごらん?」

「僕に教えてくれますかね〜?」

「多分みんな気付いてると思うけど」

 

「………。

あーーーーっ!休み!

ナズさぁ〜ん」

 

私の返答を待たずに行ってしまった。

 

想いが募り、想いが揺れる。

想いを閉じ込め、想いを断ち切る。

見えないだけに形は様々変化する。

もしそれが目に見えてしまったら、人はどーやって対処するんだろう?

 

 

あれ?

彼の姿が見えない。

何も言わずに帰る訳ないし…。

入口まで行きドアを開けてみた。

 

−ガチャ−

 

階段を降り路上に出ると、曇り空に霧がかかってる。

朝日は見えない。

2秒待って視界を合わせると、向かい側のガードレールに腰掛けてる彼がうっすら見えた。

車通りはなく、赤信号を渡り彼の隣に腰掛ける。

 

「起きたんだ?」

「半分な。風に当たって睡魔退治中〜」

「手伝おうか?」

「手強いぞ?」

「チューしたらビックリして目が覚めるぅ〜」

「逆だろ?

目閉じて腰に手まわすっしょ」

「……………」

「マキ、自爆〜」

「今のはズルイよ」

「こっちの方が正当だって」

「正当ねぇ…」

「ん…?酒臭い!」

「うそ??」

「嘘。でも目がウサギになってる。飲んだな?」

「少しだけだよ」

「グラス1杯?」

「…ジョッキ3杯…」

「マキー」

「違うの聞いて。

女はね、誰かの為に飲まなきゃいけない時もある!」

「んー…。50点」

「えー。男だってあるでしょ?そういう時が」

「まぁあるケド。

誰かの為の心意気は100点。風邪ひきの分はマイナス50点。早く治せって事」

「肝に命じまーす」

「で。誰かって誰?」

「それは秘密」

「男がらみか…」

「はぁ?」

「仕事中も楽しそうだもんな。俺が見る限りいつもオーラが出てる」

「だって楽しいもん。

クマタンは?」

「俺も楽しいよ。

仕事も人間関係もバランス良いし」

「じゃあ幸せなんじゃない?」

「多分な」

「多分か…」

 

「これだっていう確信ついたモノが無いと、気付くのに時間がかかるだろ?」

「うん」

「そんな感じ。

俺の場合、若干逃げもあるなー。矛盾してるけど」

「………」

 

欲しいという欲求の反面逃げてしまうのは、不安が勝っているから。

不安を作るのは未知への畏縮。

もしくは過去のトラウマ…。

 

それ以上は聞けなかった。

鉛筆か油性マジックかは分からないケド、目の前に線を引かれた気がしたのだけは確か。

 

 

 

 

 

店内に戻ると会計を終えて、みんなの視線は一点に集中していた。

 

「ナズさん…」

「ナズー帰るよ!」

「こりゃ起きねーだろ」

「参ったな…」

「ナズの彼氏に電話する?」

「うちに連れてくよ!」

「3分でへばるな」

「じゃー、通り道だからトーコんちまで自分が連れてく」

「ありがとうリューちゃん」

 

 

 

 

−歩くと30分の道のり。

私は自転車を引き、リューちゃんの背中にはナズちゃんが眠ってる。

 

「意識のない人間って重く感じるね。ナズが小柄で良かった」

「あたしだったらアウトだ」

「トーコでもいける。現状維持ならね」

「わわっ」

 

「今日のナズは飲み方が変だった。

それにトーコも少し」

「私は酔っ払いじゃありません」

「うん。すっかり覚めてるね。

シューちゃんと何かあった?」

「ないよ。

あったら羽根が生えて飛んでってる…」

 

「リューちゃんは気付いてるよね?」

「自慢じゃないけど3日目には確信してた」

「そっか…」

 

「話したいなら聞くし、話したくないなら聞かない」

「私が聞いてもいい?」

「いーよ」

「ビンの中に入ってる船舶模型ってあるじゃない?

あの船はどーやって取り出すの?」

「話しを抽象化しない」

「でも同じ様な事なの。

ビンが邪魔なんだもん…」

 

「…今すぐなら取り出したいならビンを割る」

「それじゃーダメなの。

すぐじゃなくて良い。

ただ…方法があるって事だけでも知りたい」

「方法が無かったら諦める?」

「諦めない。

方法は必ずあると思う。」

「良かった」

 

「じゃー今度は自分が聞く番。

時間をかけなきゃ出来ない事って色々あるよね?」

「うん」

「恋愛でも何でもいいから、その中で1番時間をかけた事を思い出して。

「…うん」

「どんな気持ちだった?」

「…苦しかった」

「その先は?」

「…何もなかった…」

「なかった?」

「正確に言うと途中でやめたんだ。

人を忘れる事は出来ないって気付いたから」

 

そう言った瞬間、リューちゃんの足が止まった。

 

「そういう人がいるの?」

 

私の目を見据えて尋ねる。

 

「兄が…中学の時に亡くなって…」

 

全部言い終わる前に、鼓動がどんどん速くなってくのに気付いた。

そして予感する間もなく、私は悟ってしまった。

 

−そうか…。

−そうなんだ…。

 

足が動かない。

 

一瞬頬が熱くなり、風を受けて冷えていくのに気付く。

私が泣いてるのは何故だろう。

兄の事を思い出した?

彼の気持ちに同調したから?

どれも違う。

自分の言葉に泣いているんだ。

 

[人を忘れる事は出来ない]

 

時間を費やしても私が出来なかった事。

私が1番知っている事だったから…。

 

 


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