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雪解けの頃  作者: 四季
3/5

澄み空の寒月

−2週間もすると、売り場はもちろん職場の雰囲気にも慣れてきた。

遅番には私以外に女の人が二人居る事も判明。

同じ1階の堤下希絵(キエ)さん。

私の5つ上でお姉さん的な存在。

希絵さんは既婚者で、必ず終電までの勤務にしてもらってるみたい。

もう一人は2階の五條薺(ナズナ)さん。

ナズちゃんは3つ上だけど、私より背が小さくてテンションも高い。

彼女は自宅が遠いので、やっぱり終電まで。

たまに人手が足りない時は閉店まで勤務し、始発で帰ったりするらしい。

 

「お先でーす!トーコ、また明日ね」

「ナズちゃんお疲れ様〜」

 

終電近くになると、店内も大分落ち着いてくる。

 

「トーコ、眠くない?」

 

この人は那波龍斗さん。

私の2つ上。初日に家まで送ってくれたのは竜ちゃんだった。

売り場を案内してくれたのもね。

面倒見が良くて仕事もきっちりこなすから、年上年下関係なく慕われてる。

 

「平気。根本的に夜型だから絶好調かも」

「今日は休憩誰からですかぁ〜?」

 

この人は橋本健(タケル)君。

人懐っこい性格だけど礼儀正しくて可愛がられるタイプのタケ。

1つ下だけど、高校生でもまだまだ通りそう。

 

「あっ、私からだ。休憩行ってきまーす」

『いってらっしゃい』

 

2階へ上がる時は、1階で返却された2階の商品を持って上がるのが鉄則。

 

「お疲れ様でーす」

「お疲れ〜。休憩?」

 

この人は星紀人矢(キリヤ)さん。

3つ上の自称ゲーマーさん。聞かなくてもお勧めゲームを教えてくれる。

キリヤンは話し始めると止まらないのが特徴。

 

「今日は1番のりなの」

「シューマが5分くらい前に行ったんだけど寝てると思うからさ、トーコが休憩出る5分くらい前に起こしてやって」

「かしこまり。行ってきまーす」

 

ラッキィィッ。

こうなると1分でも時間が惜しい。

足早に休憩室に向かった。

 

「マッキー」

「あ、お疲れ様です店長」

「休憩?」

「そうです」

「ついでにこれ、画像チェックしてくれるかな?後半辺りから進まないってクレームなんだけど」

「恋する惑星…」

「宜しく」

 

寝顔どころじゃなくなったかな。

 

−コンコン−

 

軽くノックをしてドアを開ける。

 

 [スー… スー…]

 

椅子を3脚繋ぎ合わせ、縮こまる様にしてる姿がちょっぴり可笑しくて、とても可愛い…。

夢にまで見そうな勢いだ。

 

「お疲れサマ…」

 

そう囁いて彼の髪に少しだけ触れてみる。

 

この2週間で少しだけ知る事が出来た。

視力が悪くコンタクトと眼鏡は必需品って事。

ちなみに今日は眼鏡だから今はテーブルの上。

写真が苦手でカメラを向けられると反射的に回れ右してしまう事。

煙草はHOPEでお酒を飲むと眠くなる事。

3つ上って理由だからかは解らないケド、たまに私をお子様扱いする事。

女の子は彼女以外下の名前で呼ばない事。

彼女は…。

居てもおかしくないケド定かじゃない。

携帯で彼女らしい人との会話も聞いた事もないし、他のスタッフにひやかされてる姿も見た事ない…。

まぁ考えても解決するもんじゃないし、とりあえず画像チェックしなきゃ。

 

−DVDをセットして、彼の向かい側の椅子に座った。

 

後半だからこの辺かな?

結構好きな映画で何度か観てる作品だ。

見終わった後は恋したいって気持ちになる。

進行形の時は好きな人に会いたくなる。

今は目の前に居る事で幸せ度MAXかな?

 

「絶好調じゃん!」

 

 [クスクス…]

 

笑い声の主は目を細め私を見ていた。

 

「うそー!!」

「画像チェック楽しい?」

「もしかしてずっと見てたの?」

「違うって。絶好調じゃん!くらいかな」

「タヌキなんてズルイ!」

「ばっか。俺がタヌキならマキはオオカミじゃん。

頭なんか撫でるからチューまで来るかと思ったぞ」

「やっぱ起きてたんじゃん!」

「ヤベ。ヤブヘビっ」

「せっかく起こしてあげようと思ってたのに」

「俺の寝顔レアだぞ〜」

「自分で言ってるしー。シューマさんからかってるでしょ?」

 

「あっ!」

「あ…」

 

「"さん"はやめろって言ったじゃん」

「だって…」

「シューちゃん。

言ってみー?」

「…………やっ。」

「ヤじゃないー」

「皆と同じじゃ芸がないもん」

「芸はいらないし。

じゃあシューマ。」

「……………………」

「赤面しながら黙んなよ」

「分かった。クマタンは?楠シューマだから、略してクマタンにするよ〜。可愛いから呼びやすいもん」

「待て。俺がハズイっつーの!」

「じゃ、シューマさん」

「…本気?」

 

首を大きなく頷いてみせる。

 

「…わかった。特別だぞ?」

「うん!やったね」

「っと。

休憩終わりっ。先行くな」

「いってらっしゃ〜い」

 

 

−こーやって少しずつ距離が縮まっていく。

ほんの少し彼を独り占め出来ただけで、世界中を味方につけた気にさえなるなんて…。

そんな心の中を、澄んだ月が見透かしてる様だった。


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