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いつもどこかズレタセカイ ~人喰い  作者: 裃 左右
『論理的』にある『猟奇性』

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泡沫の夢

この小説、ジャンル何なんですかね?

長い一日だった。

だいぶ、長かった。

いや、永かった?

なんか、ぐるっと回って一周した気がする。

そうやってまどろんで、夢の中でさえ、どろどろに溶けてしまいそうなほど。

何も考えずに漂う。

左手の痛み。

何かが聞こえる。

この声は……誰の声だろう?

たすけ……て?

何かが形になる。

目の前に人が居て。

男だ。

俺はそいつを。

彼を。

必死に説得している。

俺は彼を必死に説得し続けている。

その必死さが自分には、八賀谷コウという人物には、ありえなさすぎる様子だったので、すぐに「ああ、これ夢だな」とそう思った。

当たり前か。

寝ているときに見ているんだから、夢だ。

俺は、俺じゃなくて、知らない奴になっていた。

そいつは凄く真剣だった。

とても真剣に言葉を選んで、説得していた。

説得?

なにを?

それは、既に誰ともわからない自分でしかなく、対面するやはり、誰ともわからない彼であって。

とにかく、夢の中の自分はそれはそれはひたすらに言葉を並べ、ときに熱く、ときに冷めた様子で、幾度となく首を振られ、それでも幾度と言葉を連ねていた。

どんなに断られても、追いすがる。

でも、心の奥のどこかで、「もう無理だ」という言葉が常に響いてる。

終わりは迫っている、そういう予感。

この結末は決まっている、そんな実感。

それは単純に俺の諦めなのか、それとも結末を知っているからか。それはわからない。

それでも、俺は彼に仲間として、友達として……なによりも人間として彼を止めなけらばならなかった。

「お前がなにをしたいのかを俺は知らない。かといって、説明されても理解することすらも出来ないだろう」

「ああ、……そうだね。たぶん、いや、違うな。間違いなく、理解なんて出来ないだろうね」

彼は、どこか寂しそうに笑った。

最初から諦めてるよ、というその様子が、俺の胸を締め付ける。

その姿はまるで俺だ。

「……俺はお前を理解出来ない。しかも、話を聞くことすら出来ないしな。なによりこうしてお前をひたすら説得だけをしようとしている。お前の気持ちには無視をしてな」

「でも、それは僕を友達と思っているからこそ、だろ?」

「それはそうだけどな。だけどよ、せっかくのお前の信頼をこんな形でしか返せない。それだけは悪い、と思ってる」

「……うん」

彼は頷いて、俺から目をそらした。

俺にはわかる。彼はそれでも理解されたいともっていたに違いない。

でも、それが無理なこともわかってるのだ。

人は……ありえないと思っていても、わかっていたとしても、それでも望むことをやめることは出来ない。

理解してほしい、自分を認めてほしいと願う。

「……うまくいえないが、そこは俺はわかるんだ」

本当にわかる。

わかるんだ、嘘じゃなくて、本当に。

お前は今、俺と同じ気持ちなんだ。

理解されないって、自分の気持ちは他の人間にはどうしようもないものだって、異質だって。

でも、やっぱり、知ってほしい。わかるよって言われたい。同じだって言われたい。

その気持ちはわかる……けど。

……痛いくらいに、わかるけど。

「でも、だからこそはっきりと伝えなきゃならない。俺にはお前が理解できない。受け入れるなんて無理なんだ」

「ああ。こんなことを言ったら、なおさら君は気に病むだろうけどさ。……そういってくれて逆に助かるよ。余計な望みを持たなくていいしね」

本当に気に病むようなことを言ってくれる。

でも、やっぱりその気持ちはわかるのだ。

同じだ。

だけど、認められない。

「……どう考えても、お前のしようとしていることは最悪だ。目的は知らないが、少なくともその手段はへたなテロより悪質だし、凶悪だ。……たぶん、そんなものと比べるのがおかしいんだろう」

「わかってるよ」

「なぁ、お前の目的には絶対にそれが必要な手段なのか。他に平和的な方法はないのか?」

彼は首を振った。

「だからさ、君が間違えているのはそこなんだよ。君は理解していない。目的と手段を別のものと考えられる世界に住む君にはわからない、ということがね」

「……どういう意味だ?」

「目的を達成できるならその手段はなんだっていい。だけど、目的を達成できる手段はいつだって限られている」

「それはそうだろ。でも、そのなかにだって方法を選択する余地はある」

「ないんだよ。違うんだよ。だから理解できないんだ」

彼の目に、自分より劣っているものを見る光が混じる。

「目的も手段も変わりない。結果も過程も同じものだ。なんらかの手段を行うためには、それを目的として準備するための手段が必要だ。結果は出された瞬間に次の結果への過程にしかすぎなくなる。全部、同じものを言い変えてるだけにしか過ぎないんだよ」

「言ってること、全然わかんねぇよ」

俺がどんなの表情をしていたのかは知らないが、俺の顔を見て彼はため息を吐いた。諦めよりも、呆れの心境だろう。

「出来る限りわかりやすく言おう、君の認識に合わせて。もしも、ぼくの目的が結果的に人を傷つけるものだったとしたら?社会にとって、もともと害のあるものだったら?それなら人を傷つけることや、社会に害をなすことが目的ともなりえる」

彼はそう言って、机の上に座る。

その様子からようやく、今自分のいる空間に意識が向いた。

ここは……教室か?

でも、どこの?

「なら、ぼくは他者から、社会から排除される前に自分の身を守るための力を得るしかない……だろ?」

「言っている意味がわからない」

「だろうね」

「だが、わかるものもある。お前は、自分を理解しないヤツを消したいんだ」

彼は無言だ。

「だって、そうしないと消されるもんな。自分に恐怖を覚えたヤツに」

人間は理解できないものに恐怖を覚える。

自分が死にたくないなら、社会的に消されたくないなら、社会の方を変えるしかない。それが出来ないなら……消される前に消すしかない。

「結局はそのための計画だ、と言うことか」

「ああ、そうだよ」

頷いて、彼は手の平を広げる。

「手段だけを言えば……君の言うとおりに、極力人に害をなさないで行くこともできる。ゆっくり、少しづつ人々を変えていく方法が……でも、ぼくはその前に死ぬだろうし、それだって、百人を一度に殺さない変りに、一人をゆっくりと殺す。と言う程度のものだよ。……肝心なのはゆっくりと力をつけたところで相手に発見されれば意味がないってことだ」

駆除……されるからね、と彼は言う。

「相手だと?」

「ここから先は推論にしか過ぎないね」

俺には展開が速すぎて何の話をしているのか理解が出来ない。

それでも、俺の口は開いた。

「……多くの中の一つ」

彼の目が大きく見開く。

その様子をみて、俺は確信を得たようだった。

俺じゃないほうの俺は、間違いなくその思考を、彼を理解した。

「今までも繰り返された中の一つ。他でも行われていることの一つ。完全に異質であり、特別。さらには唯一無二の、だが、それでも世界を揺らがすには至らないものの一つ……と言うことか?」

「さすがだね、話が早い。予想外か、予想通りというべきか」

「俺にとっては思考が飛躍し過ぎた妄想に思えるけどな」

「だけど、それも今、力をつけることの理由にしかならない。生き残るための手段、目的のための過程、いずれは通る道筋、導き出される結果にしか過ぎない。と、同時にぼくには目的そのものでもあるんだ」

「結局、俺にはわからないな」

……彼の心境は理解できる。でも、彼らがなにを話しているのかがわからない。

いったいどんな夢だ、これ?

「……なぁ、お前さ。なにがそんなに不満だったんだ?なにがお前をそうさせる?」

「なにが?なにもかも、かな。不満と言えば全てが、だし。そうさせるのは……やはり全てなんだろうね。それがくだらないことにぼくを駆り立てる理由なんだろう」

「そんな馬鹿な理由があっていいのかよ」

「もうどうでもいい、だろ?……君と話していて楽しかった、かな。最後なのは残念に思う。けど、いつまでも話しているわけにはいかないしね」

「どうしても、駄目なんだな」

「もう手遅れなんだよ。もう引き返せない」

「……手遅れなわけがあるかっ!」

なんだろう、どこかで。

覚えのある……流れだ。

「わかってるだろう。もう、ぼくは彼女達の……」

「そんなはずはない、お前は自我を保っている」

「そうとも、これはぼくの意思だ。だからこそ手遅れなんだよ。君がどういおうが、どうしようもない」

「……もう一度、最後に聞こう。本当に、どうしても、駄目なんだな」

「ああ」

「そうか」

俺は顔を伏せる。

こうなることはわかっていただろう?

決意を固める、というのはそういうことなんだから。

だが、待て。俺が今感じているのは確かに無念さ、喪失感。

でも、それだけじゃない。

これは憤怒……いや、それとは別の喉元までこみ上げる気持ちはなんだ?

「なら、力づくでとめるまでだ」

一瞬で彼に俺は接近する。

いつのまにやら握り締めていたバットで彼に殴りかかっていたのだ。

が、彼は平然と左手で予測していたかのようにそれを受け止める。

彼の左手の骨が砕ける音。

だが、揺らがない表情。

それはまるで、申し合わせたかのようなやりとり。

「……やはり、君がまずぼくの前に立ちはだかるわけだ。期待していなかったといえば、嘘になるけどやっぱり驚きだよ」

ぼくに答えてくれるとはね、と彼は先ほどとは全く違う。笑みを見せる。

その顔の皮膚の裏側からは、黒くうごめく何かが見えていた。

「ふん、なんだよ?止めてほしかったのか?」

それでも俺は怯まずバットに力を込め続ける。

「いや、違うよ。まず君を傷つける口実が欲しかっただけだよ……ミマタ・・・

「だろうな。そうじゃなきゃ、こっちもおもしろくない。」

「「絶対に」」

「お前を」「君を」

「止めてみせる!」「超えてみせる!」

ミマタと呼ばれた俺は、彼と同じ表情を浮かべ、その腕をはのねけた。

どうやら、ミマタは、いや、俺は、自分は、いや、やはりミマタか……?

なにかに疑問を抱く時。

僕は・・まどろみから一気に浮上する。

…………泡?


 *


夢の中から浮かび上がった俺は、気だるさとともに徐々に目を開く。

目に映るもの、それが、その景色がなんなのかわからない。

だけど、少しづつ覚醒するにつれて、ここが現実で、自分の部屋だ。とそう認識出来るようになる。

部屋の付けっぱなしの電気を見上げて、脈絡もなくそういえば鞄を学校に忘れたんだっけと思い出した頃、ようやく身体を動かそうとし、なぜか動かない。

それでも無理やり動かそうとし、ギシッという音と共に痛みが走り。

うめいて即座に中止した。

……また、なんかやらかしたっけ?

…………?

不思議と気分は落ち着いている(というより寝ぼけているだけで)のに、心臓は直前まで俺が暴れまわっていたのかというくらいに、激しく音を立てている。

なんだろう?

まさか、本当に暴れまわっていたのかな。

ただし、寝ながら。

うわ、それは痛々しい光景だ。

……その結論は、勘弁してやろう。自分のため、世のため、人のために。

と、段々、心臓は落ち着いていき。

それにつれて冷静な思考が寝ぼけた頭に、冷たい水が入るようにして戻ってくる。

目が覚め、意識が醒めてくれば。

ああ、頭が痛い。

いや、やっぱり身体も痛い。

なんだろう、最近の朝は身体の痛みをこらえるのが日課だ。

日に日に痛みが増しているのは確実なので、そのうちショックで死ぬんだろう。

それまでに生活を改善した方が良さそうだ。

いや、性格を変えなきゃ無理と即座に判断。

結論、なんとかは死ななきゃ治らない、よって生活は生きているうちには改善できないだろう。

「……よし、来世に期待しよう」

まぁ、そんなものがあれば、だけど。

「なに朝っぱらから、後ろ向きな決意固めてんの」

入る冷静な突っ込み。

ん?

「あれ、美弦?」

なんで美弦が俺の部屋に?

今、朝だよ?ここ……俺の部屋だよ?

美弦はなぜかベッドに腰掛け、俺を見下ろす。

「昨日の話、憶えてる?」

……なんかあったっけ。

「というか、いつ寝たのかすら憶えてないな」

「……そう」

美弦を見ると手に毛布を握り締めていた。

「なに、この部屋に泊まったの?」

「悪い?」

ジロ、と俺を睨む美弦。

え、なんか凄まれた!?

「え、いや。悪くないですけど」

一応、自分の服を確認する。

よし、着てるな。

……いや、じゃなくて。

どうやら、俺は服を着替えないまま寝たらしい。と、今のはそれを確認しただけで、別にやましい理由で確認した訳ではない。

……着てることに安心したのは本当だが(へたれ)

ああ、疲れこんでそのまま倒れて寝たんだな。

「ねえ」

「ん?」

「本当に何も憶えてないの?」

「……そう言われても」

憶えていないものは、憶えていないわけで。

いや、でも。

「あ」

「なに?」

「すごい変な夢を見た」

殴られた。

「えっ、なにそれ!?どういうリアクション!?」

「うるさい!」

「……はい」

なにも睨むことないじゃん。今にもまた殴られかねぐらいに拳握ってるし

美弦は立ち上がる。

「え……と、どこへ?」

「寝直す!」

「え、寝なかったんですか?」

「寝られるかっ!」

怒られた。

そのまま怒りの深さを表現するかのごとく、音を立てて歩き部屋を出て行く(決して体重を表現しているわけではない)

……俺がなにをしたと?

と、その時になってようやく自分にさっきまで毛布が掛かっていたことに気が付いた。

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