第82話 茜ちゃん、完璧な『姐』を目指す
この時がやって来た。避けては通れないとは思ってたけど、でも……。ああ、やっぱり蘭さんに相談しよう。
「茜が料理できないのはね。私はもう、生まれつき持った障害だと思って割り切ってるの」
蘭さん、なんだか壮絶な辛口。
「そのわりに手術ではメスとかうまく使いこなしますよね。小器用なのになんで?って思うんですけど?」
「やっぱり人には向き不向きがあるのよ。あの子には料理が不向きなのよ」
とはいえ、『姐』として私は茜ちゃんに料理を教えなきゃならないんですけど?
「なんかリハビリみたいなことから始めなきゃですかね?みかんの皮をむくとか?」
「そうねぇ」
蘭さんが遠い目をしたよぉ!
私は視点を変えた。
料理だけが組員の心をつかむわけじゃない。屋敷の中の掃除だってそう。
今回は茜ちゃんに屋敷の中の掃除をしてもらおう。キレイな窓とか廊下とか見れば、組員のハートをぐっと掴める。
「茜ちゃん、今日は料理じゃなくて、屋敷の中を掃除してもらうわ。窓を磨いたり、細かいところを磨くのって結構大変な割と皆見てるのよ。結果を。床の掃き掃除は便利ね~。今はお掃除ロボットが屋敷の中を走り回ってるわ。何台いるんだろう?ちびっこたちの方が詳しそうよね。窓に手垢をつけるのは、そのちびっこたちなんだけどね。手垢が無くなるだけでスッキリとしたもんよ?さあ、掃除しましょ?」
窓の拭き掃除をした先からちびっこたちが手垢をつけていく。
「ドンマイよ。やらないよりいいじゃない?」
掃除は料理よりもなんとかなりそうで安心した。っていうのに、組員たちが率先して掃除をしているもんだから茜ちゃんがわざわざするまでもなくなった。
ヤハリリョウリヲオシエナキャナラナイノ?
仕方ないので、私は大志に家(家族空間)で、料理はどうしてるの?と聞いた。
「俺達の沽券の問題もあったんだけどなぁ。仕方ないか、料理は俺が担当してるよ」
「茜ちゃんは?」
「洗濯とかかな?」
何てことなの?本当に料理苦手なのね…。
「あいつに料理教えるなんて、逆立ちで屋敷を一周の方が簡単そうだなって俺は思ってしまうぞ?」
そこまで?
「茜ちゃんは完璧な『姐さん』を目指してるのよ。どうすれば……」
「お、茜!大事な話だ。茜が完璧な『姐さん』だと思ってる母さんだが、ちっとも完璧なんかじゃないからな?」
大志、ヒドイ。
「酒は弱いし、寝坊はするし……。完璧な『姐さん』って感じだと酒に強くて、寝坊しない感じだなぁ。それこそ組員たちの中で一番酒に強い!みたいな?それでいて寝坊はしない強者。俺のイメージはそんな感じだ。茜は違うのか?」
「え?ユキさんみたいなイメージだったんだけど、大志さんがそう言うならお酒に強くなって寝坊もしない!」
「よし!それでこそ、俺の『姐』だよ」
イチャイチャが始まりそうなので、私は退散した。これで何とかなればいいんだけど…。
翌日の夜から酒盛り合戦が始まった。
私はお酒に弱いから観戦。
「『若姐』…凄すぎるっす。まだ素面なんですか?」
「え?まだ飲んだ気しないけど?強いて言えば、トイレに行きたいくらい?」
相当飲んだ後じゃない。
「ほとんどの組員が潰れちゃってますよ?あとは俺一人だし、俺はもうクラクラです」
「みんな弱いなぁ」
そう言ってグラスを傾ける。
大志曰く、「茜は簡単に酔わないから、あえてアルコール度数の高い酒をストレートで呑んでいる」らしい。
私にはできないなぁ。
翌朝、爽やかに「おはようございます!今日も元気に働きましょう!」と言って茜ちゃんは現れた。多くの組員は二日酔いで具合が悪いなっていた。
「仕方ないわねぇ。母さんに二日酔いに効く薬を処方してもらいましょう?」
そういってゾロゾロと蘭さんのところに二日酔いの組員たちを連れて行った。
「茜!あんた、まさか皆を酔い潰したの?」
「酒盛り合戦だったから」
「ダメでしょう、手加減とかしないと!ああ、こんなに二日酔いの連中ばかり…」
こうして、茜ちゃんの悩みは吹き飛んだ。




