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まだ足りない、足りない


 

 ********

 

 

「はぁっ!」


 振り払われた剣先が目の前の丸太を斬り倒す。適当に自分の周囲に置いた丸太を目を閉じたまま斬り払うのも慣れてきた。そろそろ誰かに手伝ってもらわないと効果がなくなりそう。

 六本用意した丸太を全部切り倒してから、目を開けて斬ってない的がないか確認をしてから近くの岩に腰掛ける。残骸は後でまとめて燃やすので放置でいい。


「ふぅ…」


 騎士になると決めてから十年、自主練を欠かしたことはない。初めの頃に比べたらジョギングは十キロ走れるようになったし、筋トレや素振りもこなせる回数は大きく上がった。その上でこうして的を手作りしたり買った丸太を並べての訓練もしている。

 日が進むたびに王城決戦は近づいているんだ、準備はできるだけ多くしておかないと。


 日頃の積み重ねの結果、最近はだいぶ魔力の巡りがいい。血液の巡りが良くて体が軽い感覚に近いというか、自分の中で流れるものが滞りなく巡っている感覚がある。

 正直今までは魔法一発撃つのに対してコストパフォーマンスが悪くて、それこそ上級魔法に挑戦するとすぐにへばってたんだけど、最近はそれがない。


「もしかして…イザベラもそうだったのかな?」


 そんなことをふと考える。

 作中でイザベラは最高位の魔法使いの一人として描かれているけど、実際彼女として幼い頃練習をしてみると発動した魔法を安定させるまでにとても時間がかかった。

 発動しない程度ならいいんだけど、初級の魔法でさえ火が大きくなったり小さくなったりを繰り返して危なっかしい。その上少し魔法を使うだけですごく疲れてしまって…私が下手なのかなって思ってたけど、案外イザベラは努力の人だったりして。


「それにしても、魔法か…慣れたよなぁこの世界にも」


 この世界で魔力とは、植物が光合成で栄養を蓄えるのと同じように生き物の全てがなんらかの神の加護を自然と体に蓄えていて、それが土や水、風も含めた全ての自然の中で循環するエネルギーらしい。簡単にいうと、神様っていう太陽から全ての生き物が光合成をしてるような感覚に近い。

 地球での科学と同じ様に魔力が土や石の中で固形になると“魔石”と呼ばれるアイテムになる。


 そしてそれを素養の持つ人間が指向性を持たせて操ることで発現するのが魔法。素養がない人は魔石を加工したものをお守りとか機械の駆動源とかにしていると聞いた。もしくは発展途上の科学に頼っているとも。

 その中でも創世神と呼ばれる国作りの神に加護を受けたのが巫女、さらにその中で適性が高い存在が聖女と…彼女たちが扱う聖属性と呼ばれる特殊な魔法はいろんな国で神聖視されているらしい。


 イザベラやミカエラにも巫女としての適性はあるけどエルシィほどではなく、イザベラは炎魔法の適性の方が高いという設定だ。原作では、序盤の方に勇者ケントたちが滞在した村の一つまでついてきたイザベラがエルシィと仲良くなった村の子供の家に火をつけて、それがバレたところから勇者パーティと彼女との敵対関係が始まっている。

 そこからしばらくイザベラは、出てきては事態を悪化させる厄介な悪役になってケントたちに立ちはだかってくる…という展開。


「そういえば、最近ミカエラを見てないような…」


 もしミカエラが原作と同じ様にケントたちの元に向かったのなら、魔物たちの侵攻までそう時間はかからない。物語の“強制力”を考えると、このままというわけにはいかないだろう。


 あのいけ好かない死神は、私を“特異点”と言った。

 それは勿論この世界のバグなので、私の魂は文字通りエラー品ということになる。そうなってくると本来のイザベラの魂の行方が気になるけど…「わからないことは考えない方がいい」と死神は笑った。


 その上で彼女はこう言葉を添える。

『この世界にある強制力にたった一つのエラーが大きく作用することはない。だけど、一つの可能性を潰すくらいはできると思うねぇ?』

 と、死神は不敵に笑って私に言ったのだ。


 勿論この言葉に確実性なんかないし、自分の中で確信を持って肯定できわけでもない。あくまで彼女はフラグを一つ折れる可能性を予想しただけ。

 でも信じて進まなきゃ、可能性の芽だって手に入らないから。


 だからここまで迷わず進んできた。一人でも友達とも、同じ騎士の仲間とも。

 それでも時には…誰にも見せない大技を一人で練習することもある。


「よし」


 一通り逡巡とした思考をまとめ直して座っていた岩から立ち上がった。休憩終わりに水を一口飲んだら、傍らに置いていた剣を取って低く姿勢を構える。

 そこから深呼吸を一つ。自分の中で閉じていた扉を開くようなイメージで、中から溢れ出る燃料に火をつける。

 火のついた燃料は私の背中にひりつくほどの熱を与え、炎の翼で舞い上がった。


「舞い飛べ、不死鳥」


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