兄弟喧嘩と言うには爆発が派手すぎる(前編)
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晴天で空に穴でも空きそうな今日、私の目の前では世紀の決闘の幕が開けようとしている。
なんの戦いかと言われれば、王国騎士団の団長と副団長がプライベートで一騎打ちを行うという…なんとも方々で大騒ぎな一件が繰り広げられようとしていた。
私とルカさんのお付き合いが始まっておおよそ十日前後でどうしてこんなことになっているのかさっぱりもってわからないし、その要因が私にあるというのも全くもってわからない。
でも今、私の目の前二十メートルほど間隔を空けて、キャリントン本家お屋敷の大庭ではルカさんは槍を、レオは剣を構えていた。
それもこれも、ことのはじまりは三日前のこと———
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「俺の言いつけを成し遂げるまでが長いぞ、イザベラ」
「一々わざとらしく名前呼ぶのやめてもらえませんか」
「知らんな。せっかくこのオレがお膳立てしてやったというのに三ヶ月もかけるお前が悪い」
「…」
この話はわざわざ騎士団長執務室に呼び出されてする話なのだろうか、というのが最初に思ったことだった。
ていうか付き合って一週間しか経ってないし、仕事場でもプライベートでもこの一週間いちゃつく暇なんてなかったというのに、なんでレオは私とルカさんの関係が発展したことを知ってるんだろう。
「罰としてお前にはこれから景品になってもらう」
「景品?」
「あぁ。そろそろアレも顔を出すだろう」
アレ、とはレオがルカさんを呼ぶ時の名称だ。一々私の癪に触ることしか言えないのかこいつは、という感情を口にしようとした時、唐突に背後のドアが乱暴に開いて大きな音を立てる。
音に驚いて振り向いた先には、なぜか顔を真っ赤にして慌てた様子のルカさんの姿があった。
「団長…いえ兄上!」
「なんだ、騒々しい」
「なんですかこの書き置きは!」
いつもではとても考えられないような様子のルカさんがレオの執務机に叩きつけるように置いた紙には『お前の嫁は貰い受けてやろう。光栄に思え』とだけ書かれていた。
「いや、よ…嫁ってなんですか!?」
「どうしてこんなものをわざわざ! 彼女に何をしようというんだ!」
書き置きの内容に慌てた私と、怒っているルカさんの口からは全く違う言葉が出てくる。
いやいやいやいや! 私お嫁に貰われてないけど!?
まだ恋人…って自分で考えてて照れるな。
「何と言ってもな、書いてある通りだが」
「僕と彼女の関係に兄上は関係ないじゃないか!」
「オレがそこの女を『面白い』と感じているのは事実だ。であればオレの行動は一つに過ぎん」
くつくつと、今日も底意地の悪そうな声でレオは笑っている。私としてもその態度と急に舞い込んできたこの意味不明な話題には心底腹が立っているが、今日はルカさんの方がよっぽど怒っているように見えるので何も言えない。
「…今回ばかりは譲れません。彼女に裏がないことはそちらでもわかっているのでしょう?」
「裏とはなんだ? オレはお前からおもちゃは取り上げたがな、くだらんものばかりだったが。だがイザベラはお前には少し贅がすぎる。オレが貰ってやったほうが些か有意義というものだ」
「貴方という人は…っ!」
珍しくルカさんが激昂している。
そしてレオのやつまた当たり前みたいに“イザベラ”って呼んだな。いいかげん怒り狂うぞこっちは。真面目にルカさんの前で呼ばないでほしい。
「そもそもどうして貴方が彼女の名前を呼ぶんだ!」
「そいつはうちに来るんだ、当たり前だろう」
「彼女は貴方の恋人ではない!」
にしても飛び交ってる言葉に嬉しくなってる自分がいる。
ルカさんが、私の名前を呼ぶレオにキレてる〜! 場違いだけど嬉しい!
それにしても「そいつはうちに来るんだ」、か…レオ自身は私に言うほど興味ないくせによく言う。多分彼は“面白い”と私に対して思っていても、それ以上の感情はないんだろう。
なので奇跡が起きれば、私はキャリントンの家にはルカさんの伴侶として入るわけだけど、その時だって苗字は同じになるんだから勝手に名前で呼ぶことにはなる。つまりただの意地悪で言ってるんだろうな。
い、嫌なやつ…。
「悪いことは言わん、そいつはオレに渡せ。お前には贅沢というものだ」
「彼女はものではない! 何度言ったらわかるんだ」
「ではどうすると? お前のような腑抜けができることなどあるまいに」
そう言ってレオはすでに価値が確定しているかのような様子で高笑いを飛ばす。
しかしルカさんは、そんなレオに向かって彼の執務机を思い切り叩きつける。
「僕は…」
「なんだ? 腑抜けめ。口だけは威勢がいいのか?」
さらにルカさんは、そこから悔しげに机を叩いた手を握り込んでレオを睨みつけた。
「僕は、貴方に決闘を申し込む!」
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と、いうことがあって三日。私は本当に景品としてキャリントン家に招待されている。どうしてなんだろう。
今日のことを聞いたオリバー隊長が気を遣って私にドレスを一式くれたので、今日の私はぱっと見の見た目だけはご令嬢のようだ。とは言ってもパサついた髪とか泥の入り込んだ爪は誤魔化せないので、髪は纏めたり爪もつけ爪で誤魔化してるけど。
ドレスなんて何年着てないだろ…子供のころ作法の練習で着せられて以来だから、七年は昔かな…一応家にいた頃は作法の教育もされてたし。練習してたものは全部抜け落ちたけど。
そんな中、私は今キャリントン家の抱える使用人の人たちが用意してくれたインスタントお茶会セットの大きなパラソルの下で臨戦態勢のルカさんとレオを眺めていた。
パラソルの下には小さな机と椅子が置かれ、机の上には紅茶とお菓子が添えられている。
そして決闘のため向き合う二人と私までの距離はおおよそ二十メートル程度なので、何やら会話が聞こえてきた。
「兄上、これ以上のお戯はおやめください。貴方が言うほどに彼女へ興味を持っているとは思えない」
「それはお前の見間違いだな。あいつは確かに面白い、興味惹かれるものは手元に置くのがオレの主義だ」
「兄上と僕では彼女に向ける目が違いすぎると言っているのです。彼女を貴方に渡すわけにはいかない」
ルカさんの言葉に、レオはニヤリと笑い全身に緊張を走らせる。その殺気は、離れた場所にいる私でもわかるほど。
こんなに切れ味のいい剣の様な殺気を放ち、楽しげに嗤う男を私は他に知らない。だってレオは、いつだってこういうことを楽しんでいるから。
「…それは、オレに勝ててから言うべきだな、落ちこぼれめ」
そう冷たい言葉を放ちながら、彼はこれからくる戦いを楽しんでいる。その姿こそまさしく騎士団団長のレオ・キャリントンの姿だ。
彼の異名は“血塗れの獅子”。赤黒いオーラを纏った殺気に、敵陣を率先して駆り敵の返り血に塗れる様はまさしくその異名に相応しいと言えるだろう。
その狂ったような戦い様に、比類なき圧倒的な強さに、騎士たちは鼓舞されるのだ。
「その言葉は、まるで僕が勝てないとでも言いたげだ」
しかし構えた牙のようなレオの言葉には、ルカさんの氷のような言葉が向けられる。
静かに感情を戻したルカさんの纏う緊張感は、まるで氷点下の雪原の空気のようだ。ピンと糸を張った棘のような冷気が体に突き刺さる。その静けさが、紛れもない彼の殺気。
ルカさんのこんな姿が見られるのは貴重だ。普段彼は前線に出ないというのもあるけど、殺気立てるような相手がそもそも彼にはいない。レオのように激情的な性格をしていないからだ。
だけど彼の殺気の奥には、激しい吹雪が渦を巻いているのが感じられる。かまいたちのように鋭いその激情は、確かにレオの喉を狙っていた。
「「…」」
そして沈黙という緊張が訪れる。
私はその光景に息を呑んだ。
作中でルカさんは随一の風使いだけど、レオは一番の雷魔法の使い手として描かれている。
その上で二人に違いがあるとすれば、レオだけが上級五大魔法を操れるということ。ルカさんは公式設定で風魔法のみに特化しているとされていて、他の四属性は中級までしか使いこなせない。
純粋な“力”という点ではどうしてもルカさんはレオに劣る。ここで優劣を言われるのは仕方のないことだ、戦いが当たり前の場所では実力主義の構造になるのが常だから。他の部分でもルカさんは悪口言われてるから私が怒ってるだけで。
ルカさんを根暗とか、地味とか、実力ないとか、レオのお情けで副団長やってるとか、そういうのに怒ってるんだ。
確かに背筋いいのにやたらとストレートネックな人ではあるけど、物静かだし前髪のせいで美しい御尊顔が隠れてしまって勿体無いけど。
風の使い手としては上級魔法どころか超級魔法が使えるんじゃないかとまで原作では言われてきたルカさんなんだぞ、大規模な戦闘の作戦指揮は全部ルカさんなんだぞ!
っていうか、多分社交性がないとは違うように思うんだよな、ルカさんって…普通に必要があれば他人に積極的に話しかけるし。
やれないんじゃなくて、やる気がないんだと思う。
よく考えたらそれはそれでいかがなものだろうか。
「…」
ほのかな風を感じる中でも、睨み合った二人は動かない。
しかし、張り詰めた空気に耐えかねるように落ちた一枚の木の葉が地面に触れた時、
「天使の息吹!」
「咆哮する雷!」
互いに放った迷いない一撃で戦闘は始まった。
初っ端から当たり前みたいに放たれる上級魔法に驚いて体がビクッて跳ねてしまう。
詠唱破棄された上級魔法から始まる決闘なんて聞いたことがない。詠唱破棄って、本来は下級でもできたら褒められるレベルなんだもの。
原作ではそんな輩がぽんぽんいたから気づかなかったけど、実際私だって辿り着くのに十年かかった。それもイザベラの素養があってこそだし。
それをさ…当たり前みたいに撃つじゃん…こわ…。
「ひぇ…」
一瞬で庭に鳴り響くどでかい爆発の音に震える。これはとんでもないことだ、と。
天使の息吹は天使の名がつく通り風を司る天使の一人を召喚して戦わせる召喚魔法。ルカさんの扱う魔法の本懐は契約している精霊や神霊の存在の多さにあるので、彼の戦い方をよく知った天使だの精霊だのがよく召喚される。
そういった存在と息のあったコンビネーションを見せるのが彼の戦い方だ。
一方咆哮する雷は雷の放つ衝撃波を咆哮に見立てた技で、こっちは純粋にエネルギーの塊だし、まともに喰らうとその辺の大きな崖が消し飛ぶ。さらに衝撃波は磁気を纏ってるから、当たった相手は感電状態になるというおまけつき。
レオは純粋なエネルギーをぶつけるような技を好むので、ある意味彼らしいと言えるかもしれない。
しかしその二つがぶつかり合うということは、周囲に大爆発を引き起こすということ。
二人とも力量のある魔法騎士だから互いの攻撃を相殺したみたいだけど、そのせいで起きたとんでもない爆風が広がり周囲に多大な被害を及ばす。
「こわいこわいこわい!」
私にはルカさんがくれた守護のネックレスがあるのと、ルカさんが事前にインスタントお茶会セットに結界を張ってくれたから被害はないけど、真面目に怖い。うっかりしたら体吹き飛びそう。
ていうか私は十年かかって契約してない不死鳥呼び出すのでいっぱいいっぱいなんだけど、二人はどんな訓練積んでるの!?
「波巻く風よ!」
「木霊の障壁」
次に飛んできたのは複合魔法でまた体が跳ねる。複合魔法まで使うの!?
複合魔法は文字通り複数の属性を混ぜ合わせた魔法…だけど、そんなの滅多に使わない。基本的には単属性魔法で事足りるもの。
複合魔法は魔力の消費も大きいし、相手に殺意がなきゃそんな強力な魔法使わない。
「…ルカさん」
二人はひっきりなしに魔法を打ち合いながら、武器でも打ち合っている。
槍が降ればいなし、剣先が向けば跳ね除け、そうやって互いにその喉元を狙い合う戦い。そうやって二人は本気で相手を殺す気でいる。
確かに布石はいくらでもあったんだろう、それこそ私が牢に入れられたあの時から。
でも、レオの行動や発言がどこまで本気なのか、私には少し見えかねている。私の背中を押すような真似をしたかと思ったら、今度はこうやって彼と敵対して刃を交わす…レオは何を考えているの?
「お茶のおかわりはいかがですかな?」
「!?」
本気で考え事をしていたら不意に背後から声がして驚きのあまり変な声が出そうになった。
なんの気配も感じなかったのに、と振り向くとそこには素敵な燕尾服を纏った初老の紳士が立っている。
「えっと…」
「失礼、先程はご挨拶も出来ませんでしたので。この屋敷の執事をしております、マーカスと申します」
「マーカスさん…私こそ挨拶か遅れまして…イザベラ・アンブローズと申します」
短い挨拶の中で深々と頭を下げてしまう。一応客人なので頭を下げる必要はなかった気がするけど、こう深々と頭を下げてしまうのは多分日本人の国民性。
「お噂は予々…ルカおぼっちゃまがお世話になっていると伺っております」
「いえそんな、私がお世話になってばっかりで…!」
そんな丁寧にしてもらえるほど私ルカさんに何も出来てないから!
そもそもお互い仕事が忙しくて顔も合わせてない日とか普通にあるし、デートなんて告白してもらった時だけだし…。
と、そこまで考えたら少し寂しくなった。わがままなので言ったらいけないかもしれないけど、二人の時間は正直…欲しいな。
休みの日、擦り合わせられないだろうか…。
「ごゆっくりなさってください。お二人を見ていましたらつい嬉しくなってしまいまして」
「嬉しい、ですか?」
「はい。お二人の喧嘩など何年振りでしょうか…ルカぼっちゃまは大人になられるのが少しばかり早かったものですから、気がつけばレオぼっちゃまとお話しなさる機会も減っていったように思います」
「…」
今も少し向こうでは爆風と爆音が凄まじいけど、そうか…ルカさんは自分からレオと話さなくなったんだ。
きっと幼い頃からレオとルカさんは比べられてきたんだろう。レオの方が才能があるとわかってから、彼の足を引っ張らないようにと気を遣っていたのかもしれない。
「いやでも…あの様は放置していいんですか?」
とはいえ、あの上級魔法飛び交う戦場を放置してはいけないような。屋敷の母屋にも結界は張ってあるだろうけど、そろそろ庭は吹き飛んでるような。
「ほっほっは、あそこに飛び込む勇気は誰にもありますまい」
「…」
まぁそりゃそうか…と私はそっと口を閉じた。
あんな天使や精霊がぽこぽこ召喚されたり、大地を割るようなエネルギーの塊が飛んでくるような危ない場所には誰も行きたくないよね。うっかり何か食らったら自分が死んでしまうもの…。
正直、止めた方がいいとわかっている私もあの中には入りたくないと思っている。危なすぎるので…。
「!」
執事さんと二人困った顔をしていたら、ガラン、と剣の落ちた音が聞こえた。槍はあんなに重い音はしないので、落ちた武器は剣だと確信する。
音に反応して戦場に顔を向けると、ボロボロになった二人が目に入った。レオがルカさんの槍の柄で鳩尾を突かれて項垂れている。
そして二人同時に膝をつき、地面へと倒れ込んだ。
「副団長!」
私はルカさんの倒れた姿に結界を飛び出していた。結界が切れたのは彼が力尽きたせいだろうか、とにかく走るのに邪魔なドレスの裾を割いて椅子から立ち上がり急いで駆け出す。
地面に倒れ伏す二人の元に辿り着くと、何やら二人は話をしているのがわかった。
「今の勝負、僕の勝ちですね…兄上」
「はっ…倒れたのは、同時だったろう」
「先に剣を手放したのは兄上でしょう…往生際が悪い」
私が来たことに気づいてない様子の二人は、やたらと気持ち良さげにそんなことを話している。
私から見ても先に剣を落としたのはレオだから、今の勝負は公平に見てルカさんの勝ちなんだけど…そんな二人を見ていたらなんだか気づいてしまった。
レオはもしかしたら、ルカさんと昔みたいに何気ない喧嘩をするような仲に戻りたかったのかも…なんて。
それにこれだけ派手にやり合って二人ともボロボロになれば、今日のことは噂になるだろうしルカさんはレオに噛み付けるほど強いっていう証明になる。
多分そういうことが狙いなんだろう、多分だけど。
…なんていうか、ブラコン兄はどこまでも不器用なんだなぁ。
「お二人とも、何してるんですか」
二人とも私に気づかないので、声をかけてその場にしゃがみ込む。その時、ようやく二人は私に気づいたのかボロボロのままゆっくりと起き上がった。その時先に起き上がったルカさんがレオに手を差し伸べて、レオがそれを握り返したのがとても印象的で、なんだか少し泣きそうになる。
にしても、そんなに互いしか見えなくなったならもはや私なんておまけでは? なんて言いたいところだけど、流石に水を差すので黙っていよう。
「すまない、兄上が自分の負けを認めないものだから」
「オレは負けてなどいない。相打ちだ」
「だから先に剣を手放したのは兄上でしょう」
「倒れたのは同時だ。膝をつくまでが決闘だろう」
なんて不機嫌に言っているレオは完全に不貞腐れている。そしてそれに口を酸っぱくしてるルカさんを見ていると、つい笑いが込み上げてしまった。
なんでこんな純粋でいられるんだろう、庭は度重なった上位魔法で跡形もなく吹き飛んでるのに。
「情けないですよ団長。私も団長が先に剣を落としたの見てましたからね」
「決闘は膝をつくまでだと言っているだろう」
「それはずるいです兄上。以前武器を落としたら負けだと言ったのは…」
「知らんな」
ルカさんの言葉につっけんどんな様子でレオは返している。どうしてこんなに意地を張るんだろう、兄としての威厳が気になるんだろうか。
でも先に喧嘩をふっかけたのはレオだと思うと、負けを認めるくらいはしてほしい。
「もう、不毛な言い争いをするなら中でしませんか? 二人ともボロボロじゃないですか」
「所詮はかすり傷だ。大したことはない」
「あぁ、大きな怪我なしていない」
確かに二人はボロボロではあるものの、それは主に二人の着ている服が、だ。土埃と衝撃波に服はズタボロだけど、他はかすり傷と浅い切り傷がいくつか見受けられる程度で、怪我としては大したことはない。
大袈裟に倒れ込んだから慌ててドレス裂いて走ってきちゃったけど、どう考えてもそんな必要なかったな…。
オリバー隊長曰くドレスはくれるって話だったけど、勿体無い…直せないかな、自力で。
「怪我だってばい菌が入ったら化膿しますよ。しょうもないこと言ってないで早くしましょう?」
「しょうもないとはなんだ、お前団長に向かって何を言っているかわかっているのだろうな」
「今日はみんな非番じゃないですか…私は休日にまで副団長以外を敬いません」
「お前な…しごき回してやろうか」
「兄上…アンブローズの言う通りです、早く中に入りましょう」
歪みあう私とレオにルカさんが仲裁に入って事なきを得るも、レオは不満げに鼻を鳴らした。何よ、私が本来ルカさん以外を敬うと思ってるの?
「全く…オレはシャワーを浴びに行く。お前はそこのじゃじゃ馬に文句の一つでも言ってから来い」
そしてレオは呆れた様子でため息をつくと、そのまま「やれやれ」とでも言いたげな様子で去っていく。
二人とも案外本当に元気そうだな、魔力が切れただけだったってこと? なんて思いながらレオの背中を眺めていると、
「きゃぁっ!?」
突然背後からお姫様抱っこをされた。驚いて顔を上げると、そこには顔を真っ赤にしたルカさんがいる。
「君って子は…」
「え? あっ…」
彼の言葉に何か彼が気にする要素なんかあっただろうかと考えて、ドレスの裾のことを思い出した。ほんの数分前までは覚えてたのにあっさり忘れるなんて!
今度は私も顔を真っ赤にして慌てて膝辺りを押さえる。お姫様抱っこされてる状態でそんなものは必要ないんだけど、なんとなく恥ずかしさがそうさせた。
「す、すみません…副団長が心配で」
「とりあえず、君も着替えた方がいい。その…目のやり場に困る」
「すみません…」
「家の者に言っておくから、着替えを持って来させよう」
彼の気遣いに私は頭を下げることしかできない。本当に申し訳ない、はしたなかった…。
そして私もルカさんも顔を赤くしたままで、そのままお屋敷の中へと向かっていくのであった。
裾が裂けてるから仕方ないとはいえ、やっぱりお姫様抱っこで運ばれるなんて恥ずかしすぎる…。
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