↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔女と魔法のランタン  作者: 鈴埜
ミハナダの章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/76

62.魔女の用事

 散々狩りをして、前回の三倍のウィラントの頭を手に入れた。私の拡張鞄には確かに余裕でこれだけ入る。しかし、実際はトゥルランの用意した鞄に入れてもらったのだ。彼らもまた性能のよい拡張鞄を持っていた。たぶんだが、ロアーナが作ったのだろう。普通の冒険者が持つようなものではない、青い色のしゃれた拡張鞄だった。


 そんな中にあの血みどろのヘビの頭がわんさか入っている様子を想像すると笑える。狩りが始まってすぐにトゥルランから提案されて、コルハンたちは大いに沸き立った。ロアーナは文句を言うこともなく、最初座ったあたりでクッションに埋もれながら目を閉じたままだった。


 さすがにこれくらいでということになり、また三人ずつ交代で仮眠をとった。

 初めに交代で眠るのでこれだけの時間は休憩になるとしっかり念を押しておいた。

 また私は先に眠り、起こされる。


「これで確実に拡張鞄は買えるし、祭の遊び代も手に入った」

 モトラが笑うとテマクも満足そうに口元を緩ませる。

「祭中はあちこちで腕試しの賭け事がある。どっぷりつかると財布が空になるぞ、気をつけろ」

「どんな腕試し?」

「純粋に腕力なものもあるし、手品のようなものもある。三つのコップの一つに木の実を入れて、素早く入れ替えどれに入っているか当てさせるのさ」

 どこかで聞いたような話だ。

 純粋な腕力は腕相撲や腹に拳を叩き込んで耐えるようなものまでさまざまだという。


「だいたい何かしら仕込みがある。気をつけろよ」

「そんなのに金を使う気はないよ」

 馬鹿らしい。

 金の大切さは人一倍知っているのだ。私の隠れ家、ハマムの準備が遅々として進まない。主に資金面で色々足りない。


「旨いものを食って回るのが一番だ」

「見世物小屋も、小さい箱は気をつけろ。ぼったくられることがある」

「怪しげなものも多いな。クロウと一緒に回れよ?」

「だがほら、クロウも一人になりたいときだってあるだろう。そんなときは……俺らが付き合ってもいいし、酒場で何度も会ってる顔見知りでもいい。とにかく一人でうろつくのは御法度だ」


 なんだか雲行きが怪しくなってきて首を傾げると、二人は顔をしかめるのだ。


「祭りの後に子どもの姿を探す親が、毎年何十人もいる。去った旅団の荷馬車に載せられてしまっているって話だ」

「つまり、人さらいだよ。祭で街は沸き立っているからな。ガラの悪いもの多く入ってくる。カナンは軽く担いでいける大きさだから十分注意しろ。夜は特に一人でうろつくのはなしだ」

 人が集まれば悪いものも寄ってくる。


「わかった」

 心配してくれた二人に、私は素直に返事をする。


「こいつが黙って攫われるタマか。見てごらんよ、ご大層な自衛の魔導具をいくつもつけて……過保護だ」


 目を閉じて動かなかったロアーナが、いつの間にか後ろに立っていた。


「起きたんだ。交代で仮眠をとってるから、出発はもう少し後だよ」

「用事も済んだし、私は先に帰る。うちの拡張鞄に入れたものはギルドに提出しておいてやろう。護衛の金貨を先に渡しておく」


 ロアーナが軽く手を振りトゥルランがコルハンに麻袋を渡した。金の音がする。


「用事って?」

 気になって聞くと、ロアーナは上から私を見下ろして笑った。


「氾濫(タシュク)の調査」

 ロアーナの言葉にモトラとテマクが目の色を変えた。


「元々今回こっちに来たのも、領主からそこを依頼されてだからね」

「ああ、さっき飛ばしていた蝶……」

「そう。迷宮の外から飛ばしてもいいんだが、四階に、羽虫が大好物のやつらがいるだろう? あれが厄介でね」

 そういって肩をすくめている。ならば蝶を目的の階に送り込めばいいのにと思ったが、記憶の節約なのだろう。金で解決できることはなるべくそうした方がいい。記憶は燃やしてしまえばかえってこない。


「それで、氾濫の予兆は……?」

 自ら話しかけにいくことなど今までなかったテマクの質問に、ロアーナは気怠そうな表情を押し込め真剣な眼差しでうなずく。


「祭のあとにひとさらいした方がいいな」

「ちっくしょう……仕方ねえな。方々へ声を掛けておこうぜ」

「伯爵の私兵も入るだろうさ」

「ええ。それでもここは俺たちの街でもありますから」

 テマクの答えに、ロアーナはどこか満足そうだった。


「でもさ、普通は冒険者に調べさせるものじゃないの?」

 クロツルバミでは私たちも気づいた。それを報告したのだ。


「ミハナダは、十階層までで欲しいものはあらかた揃う。十一から二十階層はうまみが一切なく、厳しい狩りになる相手ばっかりなんだ。冒険者だって己の命が惜しい。かといって、十階層で氾濫の予兆に気づいたときは遅いんだ。十一階層以下で飽和して氾濫が起こる。伯爵様が定期的に騎士たちに調査をさせることが多い」

「ちょうど祭が重なったしな。騎士たちも忙しい。私が頼まれてやったのだ。次の満月には間違いなく起こるだろうよ」


「ご助力ありがとうございます。おかげで街が救われます」

 二人が立ち上がり深々と頭を下げる。ロアーナはチラリと私へ目をやり、尊大に笑う。


「代償はしっかりいただいた。さ、帰るよ」

 そう言ったロアーナの手にはランタンが握られていた。モトラとテマクは目を見開く。


「まさか、記憶を使って飛ぶの?」

「こんな土臭いところに一刻だっていたくないよ。あっちの二人は冒険者としてもやれるから置いていく。無事上まで届けろ。トゥルランと私は先に帰るのさ」


 そういった途端、ロアーナとトゥルランをピンク色の霧が覆い尽くし、消えた。

 記憶を節約したいのか、無駄遣いしたいのか本当によくわからない。



 置いていかれた二人は無口だが、ミハナダの迷宮での所作は心得ているらしく、足手まといになることなく入り口まで無事ついてきた。なんなら剣もかなり使える。ロアーナを担いでいた、私の首ほどある腕を持つ男は、ロアーナの代わりに拡張鞄から取り出した大きな盾を構え、魔物を弾き飛ばし、時にはそのまま壁まで突進して押しつぶすのだ。


「すごいなあんたたち」

 盾役のモトラが思わずといった風にこぼしていた。


 無事迷宮を抜けると、すでにトゥルランの拡張鞄に入っていたウィラントの頭がたっぷり届けられており、残りを提出するとその量に解体係たちが驚きの声を上げていた。


 祭の前に、しっかり分配して、私は受け取った牙を墨屋に回す。金を払うから少し分けてくれと言われて、恩を売る必要はないかと思ったがそうしてやることにした。

「超特急、最優先でやるからさ。祭が始まる前に受け取りにおいで」


 これでしばらくは墨に困らない。もう少し私の墨に合う紙があればいいのだが、と思った。

ブックマーク、評価、いいね、感想、ありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。


羽虫が好きな魔物って何系なんだろな……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。