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転生魔女と魔法のランタン  作者: 鈴埜
ミハナダの章

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61.魔女付きの迷宮探索

 もちろんお断りした。

 断固拒否した。

 しかし、この世界の魔女は絶対だった。しかもこのミハナダの迷宮都市は定期的に彼女が巡回し、庇護する街なのだ。ロアーナは崇められている。


 コルハンたちは驚きつつも即了承した。

「断ってよ!」

「断るわきゃねーだろうが」

「花の魔女様の望みを断るヤツなんて、この街にはいない。しかも迷宮についてくるってだけだろう? 素材を全部寄越せとかそういったことは一切ないじゃないか」


 ロアーナは昔のジェイダとは違った意味で、花の魔女と呼ばれている。ランタンの花をたくさん持った、力のある魔女という意味だそうだ。

 後ろでこそこそはなしていたら、冒険ギルドを出ようとしているロアーナが振り返る。


「護衛代はもちろん出す。一人につき金貨三枚だ」


 私が呆れたようにロアーナを見ると、彼女は艶然と微笑んだ。今日はさすがにドレスは着ていない。薄手のシャツにパンツ姿だ。ブーツも冒険者のものと変わらない。トゥルランも一緒で、彼がローブを腕に抱えていた。迷宮内に入ったらロアーナに着せるのだろう。


「三階までは走り抜けるんだよ? ついてこられないなら置いていくからね」


 私の台詞にテマクが笑った。




 あのロアーナが、己の足で走るわけがないのだ。数人連れていたうちの一人、腕が私の首よりも太そうな男に抱きかかえられて、ロアーナは迷宮を進む。


「土臭いわね」

「そりゃ壁も地面も土でできてるんだから当たり前でしょ」

「カナン!?」

 私の口の利き方に、最初コルハンたちは目を見開いていたが、ロアーナがそれを許していると宣言してからは何も言わなくなった。

 だが、ことあるごとに振り返って見てくる。そうせずにはいられないのだろう。


 花たちは私が何者か知っているので文句は言わない。恐ろしいまでに無反応だ。


「魔物もとんでもなく強いわけではないのね」

「そりゃまだ三階だもの」

 魔女の言葉に応えるのは私だけだ。コルハンたちはうなずくだけ。イエスマンにしかならない。


「もう少し危ない魔物に襲いかかられるのかと思っていたわ」

「そうならないように地図があって、事前に自分の力量と相談して降りる階を決めるんだよ。今日は六階が目的地。それより深くは絶対に潜らないからね。行くなら一人で行って」

「金なら出すわよ?」

「お金の問題じゃない。命がかかっているし、これで大けがでもしたらこの先冒険者とやっていくつもりだった未来が消える」

「怪我くらいなら私がランタンで治してあげるのに」

「そんな口約束信用ならない。平気で自分の記憶の方が大切だとか言い出すのが魔女だ」


「か、カナン!!」

 行き過ぎだとコルハンが慌てて止めようとするが、魔女が声をあげて笑った。迷宮内で大声を出すのは御法度だ。先ほどまでのやりとりも、私の声は小さく囁くようなものだったが、ロアーナにそんな常識は通じない。


「もっともだ。私の記憶はお前たちよりずっと大切だ」

 怒り出すことはしなかったが、本人の口から飛び出た内容に、コルハンたちは目を白黒させていた。


 四階からは慎重に進み、それに苛立った魔女が早く行けと後ろから指示する。それを黙れというカナンと、気持ちはカナン側だが魔女の言うことは絶対と叩き込まれているコルハンたちが早くも疲労感をあらわにし始めた。


「金貨三枚じゃ割に合わない」

 私のつぶやきにテマクがうなずきそうになって慌てていた。




 それでもどうにか目的のウィラントの木に辿り着く。


「あら、ヘビね。可愛いこと」

 己の使い魔をヘビ型にしていることから想像はついていたが、彼女は爬虫類を愛でるタイプのようだ。


「縄張りに入ったら一斉に襲いかかってくるんだって。あまり近づかないでね」

 ロアーナではなく、彼女を抱きかかえる男に言うと、彼は深くうなずいた。


「しばらくこの木の周りで狩りをするから、敷物を敷いて降ろしたら? 重いでしょう?」

 ずっと抱えてきて大変そうだと思っていたのでそう提案すると、彼は首を振る。そりゃそうだ。仕える魔女を重いだなんて言うはずがない。


「この体勢も疲れたわ、降ろしてちょうだい」

 するとトゥルランたちが、高そうな敷物を敷いてその上にクッションをいくつか並べる。彼女を抱きかかえていた大男が恭しく彼女をその真ん中に鎮座させた。


「拡張鞄にそんなもの入れてきてるの?」

 ばっかじゃないのという言外の声が聞こえたようで、ロアーナはきれいな眉を跳ね上げる。

「当然でしょう? 彼らは私が不快を感じないようできうる限りの手を打つの」

 飲み物と、菓子が差し出される。


「この階はそのヘビの魔物しかいないんでしょう? せいぜい働きなさい」

 すっかりくつろいでいるロアーナを尻目に、私たちはウィラント狩りを開始した。初めてしまえば後ろで控えているロアーナたちの存在など気にならなくなる。


 と、すぐ横をピンク色の蝶が羽ばたいていく。何かと思えばそれは、ロアーナのランタンから生まれていた。一匹ではない。何匹も、私の手のひらの大きさくらいの蝶がひらひらと舞っていた。

 私たちの狩りを邪魔するものではなく、木を通り抜け、さらに奥を目指していった。そちらには階下へ続く階段がある。


 〈氷結〉を打ち、ウィラントの動きが鈍っている間ひたすら首を刎ねる。

 私はそれを拾う係だ。ゴミを拾うトングのようなものが売っていたので持ってきている。

「それ、いいな」

「ウィラント狩り専用だけどね」

「拡張鞄の圧迫だ。無駄だろう」

「直接触りたくないから」

 かなりグロテスクなのだ。冷気で動きが鈍いだけで血だらけにもなるし、そうすると手袋が汚れる。手袋は外せないからやはりこれが最適解だ。前回より私の回収速度も増す。


 一つ目の木で狩りが終わり、少し離れた二つ目の木へ向かう。この階に他の魔物は出ないから、目を閉じてうつらうつらしているロアーナは置いて行くことにした。


「今眠ってたら私たちが休憩するときに早く帰るとかい出しそうだけどね」

 うっ、とコルハンたちが呻いた。休憩無しでとって返すのは勘弁して欲しいのだろう。


「カナンと口でやりあってるのがヒヤヒヤして、生きた心地がしなかったよ」

 とはテマク。


「まあ、従者たちも休まなけりゃならんし、大丈夫だろうさ。俺たちはカナンの拡張鞄の限界までとりつくすぞ!」

 拡張鞄はそれこそいくらでも入るような状態なのだが、ほどよいところでストップをかけるとしよう。

ブックマーク、評価、いいねをしていただけると嬉しいです。


コルハンたちの寿命は一年は確実に縮んでます。

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