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転生魔女と魔法のランタン  作者: 鈴埜
クロツルバミの章

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38.新しい迷宮の姿

 迷宮の前は押すな押すなの大賑わいだった。これじゃあもう、迷宮内はただ進むだけになりそうだ。

 三の鐘とともに、迷宮が開かれる。いくつか独自のルールが増えていた。

 一年の間は出口で入手した玉の鑑定を受けること。これは、玉の質を測るためだという。隠すことは禁止され、発覚した場合は冒険者資格の剥奪となる。


 そのために偽りを計測する魔導具が導入されていた。かなり高価な物だ。昔馬車で行き合った冒険者から聞いた、尋問のための魔導具だろう。


 途中から入ろうとした冒険者が殴られて騒ぎになっている。

 基本的に腕っ節で解決するような輩が多いから、私たちも余計な揉め事を起こさないよう進まねばならなかった。玉と聞いて皆、目の色が変わっている。


 その中で、ローレンのような明らかに冒険者でない者も多数いた。


「同業者ですね。どの程度の産出量かもチェックしておきたいのでしょう」

 タグを持っていないローレンは入場料を倍払って名簿に所属を記す。商業ギルドのカードがあるのでそれで身元を証明していた。


 入場料はかなり上がった。クル銀一枚だったのが、五枚になった。状況を見てまた変えていくのだろうが、まあ、初日は記念に冒険者以外も入ることになるだろうから、とれるだけとっておきたいのだろう。


 門を三枚くぐり、地下へ降りていく。以前あった階段はない。これもだんだんと手を入れて作られていく。今はただ傾斜した道が続いた。


 そして、広い空間に出る。地下一階。ここは広い開放階だ。その中央に、以前の木と同じ大きな、天井いっぱいにまで広がる黒い木肌の立派な木がそびえ立っていた。

 天井までは四メートルほどなのだが、ギリギリまで育っている。階の広さも大きい。先日地下から這い上がってきたときよりさらに広く大きくなっていた。


「広いですね。以前の一階はかなり狭かったと記憶しています」

「円錐型じゃなくなったのかもしれないな」

 ローレンのつぶやきにクロウが応えると、周囲の冒険者も軽く頷いている。


 迷宮混乱(ラビレントカラシュム)でも、一階は変わらないと言っていたのが嘘だった。

 天井や壁に明かりの魔導具が設置されていて、幻想的な風景が広がる。大きな枝のあちこちに、つるりとした赤や青、緑の宝石がなっているのだ。一つ一つが大人の握りこぶしよりも大きかった。


 木の周りに作られた柵は、かなり余裕を持って設置されていた。絶対に木に届かないようにしている。柵も私の背丈ぐらいあり、かなり丈夫に作られていた。今も作業中で、木で作られてる部分と、金属の丈夫な柵で作られている部分が混在している。たぶんだが、急いで木で作り、今日に間に合わせたが、今後丈夫な金属で囲い、決して実に触れることがないようにするのだろう。


 二度と迷宮混乱(ラビレントカラシュム)を起こさせないために。


「素晴らしい……なんと……」

 ローレンが見入ったまま動かない。木は次の階への通り道より少し奥まった場所なので、そこで立ち止まって見ているのは構わないが、私たちはあまり時間をかけたくなかったので先へ進むよう促した。


「これは失礼。いやはや、クロツルバミの迷宮都市はこれからさらに力をつけるでしょうね」


 すっかり人の列ができ、順路となっていた。

 また整備されていない坂道を降りていき、二階層へ辿り着く。ここもまた開放階だ。明かりの魔導具を設置しているギルド職員や、騎士たちがいた。騎士は衣装でするがわかる。甲冑は着ていなかったが、胸当てにクロツルバミの紋章が彫られていた。


「下は土なのですね。スイリョクの迷宮ではこうやって歩いていて足の裏に引っかかりを覚えたら、美しい翠玉が埋まっていたこともあるそうです。すでにいくつかギルド員が見つけたという話も聞いておりますね」

 そんな話を横でされた冒険者が、途端に足をするような仕草で歩き出す。


 そして三階からはまだ明かりがなかった。すでに知れ渡っていたことなので、誰も騒ぐことなく明かりの魔導具を準備する。が、先を行く者がつけていると、後ろは使わなくていいならと魔力を節約しようとする。


 それでも、三階は迷宮の名のごとく、壁が随所に見られる迷路階だから、一人、また一人と明かりを点けだした。


 私とクロウも早々に明かりを点ける。


「〈探知〉が、意味をなさないなあ」

 人が多すぎる。まあ、さすがに小型が来たらわかるが、魔物が湧いてもすぐ潰されるだろう。魔物は地面から湧いてくる。地面がボコボコと不自然に波打ちゆらりと闇を纏って現れるのだ。


「出現時だけ気をつけるしかないな」

 〈探知〉のために私が先頭を行く必要もないので、ローレンを挟んでクロウが先頭、私が後ろを進むことになった。


 三階も迷路になっているが広くはあった。固まっていた人も四方へ散っていく。

 開放階だったからこそ、最短ルートに人が並んでいるような状態だったが、迷路となればまた話が変わる。実際彼らは皆、噂の玉を見つけたかった。自分たちだけのときに。

 同時に見つけたとなれば間違いなく面倒なことになる。権利を主張する者で溢れるだろう。

 だから迷路が始まってすぐにそれぞれが人の少ない方へ散った。それでも今日は大勢の冒険者が入場しているから、後から後から追加されるだろう。


 壁や床は土。それも少し堅めの土だった。隙間に宝石のきらめきが見えないか、それこそ目を皿のようにして進むこととなる。


「暗いから余計に光を反射するものがあればわかりやすいんだな」

「でもさあ、魔物に対する注意力が落ちそう」

 宝石にばかり目がいってしまいそうだ。


「ある程度冒険者が入り、今迷宮内に散っている玉が採り尽くされれば、魔物を倒さねば玉が大きくなりません。そうすれば皆少しは落ち着くと思います」

 ローレンも明かりであちこちを照らしながら進んでいた。


 そして下への道が見つかる。


「もう一階くらいは下ってみるか」

「そうしていただけると私は嬉しいですね」


 結局そんなこんなで五階層までやってきた。ここまで来るとだいぶ人の混雑具合も引いた。四階層が岩場のような形でツルハシを持って壁を削っている者が多かった。採掘場とよく似た雰囲気に、宝石の出る確率が高いという持論を語って留まる者がたくさんいた。


 それでも、人の数は多い。


「魔物が現れてもすぐ始末される有様のようだな。どんな魔物が出るのか結局わからずじまいだ」

「俺たちが遭ったのも中型一体だもんな」

 それはよく迷宮内で見つかる、それほど強い魔物ではなかった。


「このあたりまでは明かりがつけられるかもしれませんね」

 少し高い位置に設置しておけば魔物の手が届かない。そうすれば壊されることもないだろう。


 五階をぐるりと回って、もう十分満足しましたというローレンの言葉で帰路へ向かおうとしたとき、私の〈反射〉が消えた。

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次で一章終了です。

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