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転生魔女と魔法のランタン  作者: 鈴埜
クロツルバミの章

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28.山の隠れ家造り

ここから趣味のターンがしばらく続きます。

今回は本編に必要ないっちゃないけど……書きたいので書いちゃう!

 ランタンの魔女を隠して生きる。

 しかしもしバレてしまったら。

 とにかく緊急の避難所を作ろうと思い立ったのは一年ほど前だ。冒険者としての二人がなんとか軌道に乗り始めたころだった。


 転生前は生まれたときから同じ家に住み、見知った街で見知った隣人に囲まれていた。知らない街知らない人知らない世界に、私は押しつぶされそうになっていた。


 自分の心の安寧のために、隠れ家が必要だと思ったのだ。本当に唐突に、そうするべきだと思った。


 そこからどんな風に探すかを頭の中で考え巡らせ、結局ランタンの炎に頼ることにした。安心を手に入れるために、最低限の支出は必要だと思い切った。


 まず逃げ場として安心できる場所を作ること。ヒジキに私が簡単に思いつく方法を、思いついたまま尋ねる。すると、ヒジキはそういった話は素直に教えてくれるのだ。

 とにかくやってみなければ始まらないと、私はお菓子の記憶を燃やして、かなりの距離を移動した。人里離れた山の中。人が滅多にやってこない、それでいてそこまで危険な魔物がいない場所。


 魔物よけの呪符(トゥル)はヒジキに教えてもらって作り上げた。ランタンの炎で作り上げたのだ。新しい呪符というわけではないらしい。昔はあったし今もどこかにある。誰かの記憶、記録にはあるという。何代か前のランタンの魔女もまじない師だったという。その人がたくさんの呪符の記憶を燃やしたので、ヒジキはそれを知っている。世界のどこか別の人の記憶に残っていれば、ヒジキは呪符の文様を引き出すことはできるのだ。


 その代わり、記憶の代償はかなり払う。

 〈拡張〉の魔導具鞄を作ったときも、かなりのお菓子の記憶を投資した。失った私にはもう文字の羅列としか読めない菓子の名前が、ノートの一ページに延々書いてあった。


 この世界の呪符の紋様は再び引き出せても、私のお菓子の記憶は私しか知らない。燃やしてしまえば消え失せた。


「二ヶ月来ないとまた草が増えている……」

『そりゃ仕方ないだろう』


 私が選んだのは国を二つ向こうに移動した山だった。

 最初にしたのは魔物よけの呪符を守る小さな祠をあちこちに作ることだ。

 転移したところを襲われたら、また余計な炎を燃やすことになる。転移先は安全でありたかった。

 DIYなんてやったことはない。木を切り出すなんてことはとうてい無理だ。

 そこで利用したのがこの場所を見つける過程で行き合った廃村だった。三ヶ所ほど見つけて、そこをヒジキに覚えてもらっておいた。

 そして定住する場所を決めたところで、その廃村から必要な資材を運ぶのだ。


 小さな祠を、廃村で八つほど作った。なるべくこちらの世界の物で作っておきたかったので、板は再利用。釘や金槌なども廃屋を漁ってそこにあるものを使うようにしたかったが、ほとんど見つからなくて仕方なくランタンで出した。

 雨風を避けられればいいと思っていたがそれが予想以上に難しいものなのだと知った。


 故郷の、道祖神が祭られているようなものよりもっと小さい、まるで箱のような祠を八つ作るのに、かなり時間がかかった。同時に、廃村の家の中でもわりあい形を保っているものに目をつけた。骨組みはもちろん、屋根も一応無事だ。平屋だが、その方が強度を心配しなくていい。山の中の土地は十分あるのだ。


 転移で隠れ家の山へ移動し、八つの魔物よけを八方に設える。最終的には魔物よけの魔導具を作り、金属の器に入れ込んで地中へ埋めるつもりだが、今はこれでいいだろう。

 そしてその中央に廃屋を移動させる。

 山の中に拓けた場所なんてない。これもランタンを使って作った。

 こういったところで記憶を出し惜しみする気はなかった。

 何せ、菓子はいくらでも思い出せるのだから。

 ただし使う記憶はきちんと記録した。記録は大切だ。


 土台の作り方なんてわからない。何度も失敗して作り上げていけばいいと思っているので、平らにした山の土地に、石で地面を底上げして、その上に家をどんと置いたのだ。

 たぶん、嵐が来たらズレる。


 それでも、屋根のある家ができた。

 それが前回までの進捗だ。


「中も埃だらけになってる、やっぱり隙間は埋めないとダメだね」

 こちらの世界は大きな城や屋敷は別として、普通の街の家や宿、店は、柱と土壁、漆喰が普通だ。しかし、一番簡単なのが木なのだと思う。廃村はほとんどが木でできたものばかりだった。板の壁は隙間が多く、たぶん魔物に襲われ廃村になったのだろう、壁が崩れているものも多かった。

 一番ましな家を移動してきたが、それでも隙間が多い。

 これではくるたびに掃除から始めなければならない。


『ランタンで家を建てたらすぐなのに』

「かなり山奥で人里から離れているけど、絶対に人が来ないとは限らないから、なるべく不自然じゃない家にしておきたいの」

 せめて外見は。


『なら、街にあったような感じに仕上げることはできるぜ』

「最終手段だなあ」

 もしここの場所がなんらかの原因で使えなくなったら、また一から他の場所に隠れ家を作ることになる。そのときある程度ノウハウは蓄えておきたい。ランタンに頼りきりだと次が生み出せない。


 八ヶ所の魔物よけの呪符に魔力を流す。祠の中の木箱に入った呪符に触れる。

 少し文様をいじっており、長期的に魔物を寄せ付けないようにしてあった。街の壁に仕込まれているようなレベルのものなのだ。


 おかげで家も無事だし、周囲に魔物の気配はない。


「今日はとにかく、お風呂だよお風呂」

『おう! 風呂作ろう!』


 家の中に作るのが一番だが、今それを真剣に悩んでいた。この廃屋は竈などがあるキッチン部分と、すぐ横の広めの空間。さらに小部屋が三つ。これで終わりだ。屋根はなんと瓦のような物がのっていた。その一部が落ちて穴が空いているのだ。仕方ないのでこれはランタンで直した。雨が吹き込むのはごめんだ。

 こちらへ家を移動するとき、廃村にある使えそうなものを全部家の中に放り込んで持ってきてはみたが風呂作りに役立ちそうなものはあるだろうか?


『風呂には水が必要だろう?』

「そうだよ。だからここを選んだんじゃない」

 この場所から少し行ったところにきれいな湧き水があるのだ。水量もかなりある。ここは山の中腹で、水を見つけたのでこの場所に決めた。ただ、湧き水の周りは湿気が多いので少し離れたこの場所にした。


「ほら、ヒジキが前に言ってた、場所を繋ぐ魔導具の話。あれを使いたいんだ。あの湧き水のあたりを掘って、水を溜めて濾過施設を作って、こちらの貯水タンクに栓をひねったら流れ込むようにしたい」

『ずいぶんと複雑だな』

「そこはもう盛大にランタンを使うよ」

『自分の傷を癒やすのにはなかなか使わないくせに』

「整合性がとれないと、疑われるのが嫌なんだよ」

 そこから身バレするのが嫌なのだ。

 

『きれいな水をランタンで出せばいいのに』

「お風呂を沸かすたびにランタンを使うのは嫌よ」

 そんなもったいない記憶の使い方はできない。

 設備に投資して、あとはこの世界の仕組みの中で動かしていきたい。


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