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転生魔女と魔法のランタン  作者: 鈴埜
クロツルバミの章

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18/39

18.十八階

 深部へ向かうパーティーの最初の休憩所が二十階のクロツルバミの木だ。その手前で〈浄化〉の呪符(トゥル)を使い休むのだ。十分な休息をとり、さらに奥へと向かう。

 つまり、その手前までは基本休むことなく先を目指す。


 今回は魔物の数を減らすことを目標としており、騎士団はかなりゆっくりと進んでいたようだ。十五階あたりから、いくつか消えていない魔物の死体が放置されているのを見かけるようになってきた。


「追いついてきたようね」

 レンティがブーツの先で死体をつついて傷の具合を確認している。


「十八階と十九階が面倒だから、それまでに追いつけたらラッキーだな」

 フルムが言うと、他の冒険者たちも同意した。十八階の厄介な敵がサファレだ。尻尾の毒と、身体が小さく素早い。〈反射〉は確実に持っておいた方がいいだろう。〈反射〉は最低三回。それほどの攻撃でなかった場合、五回ほど呪符がもつ。サファレは攻撃ではなく接触による毒の効果を狙ってくるので、間違いなく五回分は大丈夫だ。


 騎士団のおかげだろう、ここまでサファレには会っていない。氾濫(タシュク)で上がってきている、本来その階にいない魔物は確実に倒しているようだ。


「十八階に降りるところで呪符を配ってください」

 レンティがスルシュに言うと、ハリルが頷いた。

「準備しております」


 冒険者の一人がクロウに尋ねる。


「上の階でサファレに会ったんだろう? 二人だとどう対応するんだ?」

「俺たちは罠だな。あとはカナンの〈反射〉だ」

「何匹狩ったんだ?」

「十一だよ」


 私の返事に口笛を吹いた。


「大儲けだな。それだけありゃイイ女が買える」

「違いない」

 ひとしきり笑ったあと、レンティの冷たい視線に首をすくめていた。馬鹿だな。


「どうしても呪符を使うからそこまで儲けたわけじゃないけど、まあ、サファレの魔石はいい値段だよ」

 風呂付きの宿に泊まれるくらいに。今回もぜひ持って帰りたい。サファレはなによりそれなりの数が出るのが嬉しい。


「反対にこの人数だったらどう対応するの?」

「ううん、俺らも罠を張った方がよっぽど安全だが、どうするレンティ?」


 方針を決めるのは銀級(デミルン)のレンティだ。男だ女だでガタガタ言わないのが、ここに揃ってる銅級(バールク)のいいところだと思う。


「さすがにサファレの毒は危険だ。行軍速度を少し抑えて、〈探知〉の頻度を増やそう。五匹以上なら罠を使う。道は最短を狙う」


 前を歩く者等の指示を素早く行う。

 本当に、いちいちクロウに構いたがる以外はとても優秀な人なのだと思う。


「カナン、しばらく〈探知〉を任せていい?」

「うん。了解」

 それ以外働く気がない。


 十八階ともなると、かなりの広さになっている。段々と階を増すごとにフロア面積が広くなるこの構造は、深くなれば魔物の強さが強くなる傾向にある迷宮において厄介でしかなかった。


「二つ先の通路に十。大きさはサファレ」

「罠の準備を。通路を一つ進んだところに張ろう」

 狩りは順調だった。

 騎士団のあとを行くのでそれほど強い魔物に当たることを心配しなくていい。


 が――、

「ストップ。止まって」

 接敵後何度目かの〈探知〉を使ったときに、サファレでない魔物がいた。


「サファレじゃないのがいる。大型……一つ階を上がって来たかも。一応確認してくれ」

 隣の銅級(バークル)に言うと、彼も同じように感じ取った。


「カナンの言うとおりだ。トゥジュだな」

「おお! ラッキーだ」

 湧く冒険者ときょとんとした様子のスルシュ。目が合ってしまって説明役になる。


「トゥジュは大きな魔物で、背がクロウくらいある。濃い茶色で四足歩行だがたまに二足歩行にもなる。前足の爪が危ない。とても力が強いから注意が必要だ。ただ、肝が上級回復薬の材料でかなり高く売れるし、魔石が三つもあるんだ。その魔石がまた金になる。一匹を五人で狩っても、一ヶ月はこの迷宮都市で暮らせるって言われてるんだ」


 私の知っている動物だと熊なのだが、そのように説明はできない。


「十八階のサファレは数が面倒だが、そこを越えてでも十九階に行きたがる冒険者が多いのはそういった理由。ただ、十九階は湧きもなかなか多いから、二匹同時に当たると死ぬ」

「死なねえよ! そのために位置取り、罠の数、しっかりだんどり組んで当たるんだ。二匹が近くにいるような時は場所を移動する」


 すかさず抗議が入る。が、それなら彼らは毎日十九階に通う。


「魔物の湧きが早く、一体以上接敵したくない敵だ。結局トゥジュと安心して戦える位置取りを探るのに半日費やすのがほとんどだ。トゥジュ狩りは十八階に上がる坂を中心に狙えるチャンスをさぐることになる」

 よっぽど運のないヤツだどうだと言っているが、これが真実だ。

 二十階を前にして、ここで足止めを食らうことも多いのだ。


「そんな危ないのが一匹で十八階にいるんだ。みんな大喜びしてるのはそういったわけ」

「サファレは何匹?」

「八匹。たぶん」

 私が言うと隣の彼も補足する。


「こっちも八匹だ。少しだけサファレが先行している」

 ほんの少しだけだが。


「罠を二つ使おう。サファレに手間をかけたくない。トゥジュには私が正面から当たる。罠から漏れたものを――」

 サファレはどんどん近づいてきている。指示を受けたものから素早く動き、準備を始めた。

「カナンはスルシュ様も含めて〈防護〉を」

「了解」

 素早く呪符を取り出すと、スルシュの横に立つ。


「サファレが来る」

 そう告げた瞬間、道の先に小さな魔物が見えた。奴らから見えるのはレンティとクロウだけだ。他の冒険者はすぐ横の脇道に隠れている。二人は通路の四つ辻、少し開けた場所で迎え撃つ。サファレ用の罠は、やってくる道に敷いてあった。


 そして、すぐ後ろから大きな黒い魔物が現れる。


「確認した。トゥジュだ」

 あちらも二人を認識吠える。サファレの足がさらに速まった。


 八匹中、五匹が罠で始末できた。

 すぐさま罠は紐で引かれて回収される。五体をそれぞれ手早く捌き、尻尾と魔石を回収したらまとめて捨て置く。血を流せば魔物が来る。それを探るため私は〈探知〉も発動している。

 残り三匹をクロウが始末した。


「スルシュ、怖くても動くなよ」

「ばっ、馬鹿な。別に怖くなんてない」

 剣も抜かず棒立ちで、指先が細かく震えているのに何を言う。だが、つまりそういうことだ。戦闘経験はほぼない。そりゃ立ち回れなくて当然だ。いったい何を思ってシウォールから冒険者を雇い入れたと嘘をついたのか。もう少しマシな嘘があっただろうに。


「〈防護〉があるから一発目は間違いなく防げる。二発目もすぐ次の呪符を発動掏るから平気だ。二発防げりゃ誰かが後ろから斬りかかる。〈防護〉の範囲から出るのが一番の悪手だからな」


 再度念を押すと、スルシュは何度も頷いた。

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