7.毒属性とヘタレ代官
遅ればせながらのお姫様救出イベント、ではなかった。
この街は辺境伯領の1つなのだが、今度辺境伯自身がこの街にやってくる。
この街の代官は非常に心配症で、万一辺境伯がこの街で毒殺などされようものなら、一族郎党の命をもって償わなければならない。
何としても辺境伯様を守らなければならない。
と一大決心をしたそうだ。
そこに古今東西の毒を知り尽くし、毒の治療までできる「毒使い」が街にいるという噂を聞き、呼び出した。
とのことだった。
「それで辺境伯様を毒殺しようとしている噂などがあるのですか」
「一切ございません」
「はあ」
「ですのでこっそりお連れして、こっそり調べていただこうと思っていたのですが、思ったより大事になってしまいました。ふぉっふぉっふぉ」
「なんかすいません」
「いえいえ、一応この話は内密にお願いします」
ようはヘタレな代官の杞憂を晴らせばいいという簡単なお仕事ってことだな。
「お主が毒使いか」
「ヴェノムと申します」
代官屋敷につくとヘタレ代官にすぐに謁見。
辺境伯が到着するのは3日後なので、それまで厨房を中心に、屋敷内の毒をすべて無くしてくれとのことだ。
「だが、その前に、お前の実力を見てみたい。何か出来ぬか」
ヘタレのくせにいきなり無茶ぶりだな。
「この屋敷で最も屈強な兵士をご用意していただけますか」
「それは構わぬが、毒で殺されては堪らん」
「いえいえ、ご心配なく。毒にも様々ございます。今回は麻痺させる毒です。さらにその毒を解毒してご覧にいれましょう」
すぐに屈強を体現したような大柄な兵士がやってきた。
「お呼びにより参上しました」
「うむ、この毒使いとひとつ手合わせをしてくれ」
あれ?実験だよね。戦うなんていってないけど。
「代官様」
さすがにセバスが止めに入る。
「いいではないか。毒使いのお手並み拝見だ」
代官がいやらしく笑う。
普段は魔獣用なので結構強力な毒を使っている。
短剣に塗ってちょっと傷つければ即座に麻痺だ。
それ以外にいくつも小瓶にいれて毒は持ち歩いている。
まあ、護身用だ。
ちょっとイラついたんで少々派手にお手並みをみせてやろう。
兵士と向かい合う。
「始め!」
審判役の兵士が合図する。
すかさず腰の小瓶のふたを開ける。
空気感染する麻痺毒だ。
剣を振りかぶった兵士がそのまま動けなくなる。
ついでに周りにいる人も。
観戦していた兵士、セバス、そして代官もだ。
「毒にもいろいろあるのですが、今回は麻痺毒を使いました。どうぞ動いてみてください」
そしてセバスの毒を解除。
「セバスさん、いかがでしょう。こんなお手並みでよかったでしょうか」
「こんな広範囲に効く毒もあるのですね。驚きました」
コツンと対戦相手の頭を軽くこずいて審判役の兵士の毒を解除。
「勝負ありでよろしいでしょうか」
「う、ああ。勝負あり」
続いて対戦した兵士とその他の兵士の毒も解除。
「代官様、こんな私でもお役にたつでしょうか」
もちろん代官は動けない。わざと解毒してなからな。
「麻痺ではなく、死に至る毒もございます。お試しになりますか」
瓶を片手に代官に近づく。
「ヴェノム殿、そのくらいで」
セバスが止めに入る。
「ああ、失礼しました。忘れていました」
そういって代官の毒も解除。
「ふう、ふう」
ヘタレの代官には薬が効きすぎたか。
「代官様」
何もしゃべれない代官にセバスが促す。
「あ、ああ、お前の実力はよくわかった。では頼むぞ」
そういうとそそくさと代官は謁見室を出ていった。
「ヴェノム殿、少しやりすぎですぞ」
セバスが俺の耳元で囁く。
「ですよね。申し訳ございません」
それから辺境伯が来るまでの3日間。
一応屋敷内の毒物を調べた。
何も出なかったけど。
ただ屋敷中の人間が俺を見ると、皆目を逸らして逃げ出したのはちょっと傷ついた。




