5.毒属性と冒険者
「いいですか、絶対にこの色が違う土は踏まないでくださいね」
「わかった、わかった、そんなに何度も言わなくたって大丈夫だよ」
普段ソロで活動する俺だが、今日は大勢で魔獣の討伐に来ている。
獲物は「苛立ち河馬」だ。
苛立ち河馬は川沿いに生息する体調2mほどの魔獣だ。
今は繁殖の時期なのだが、相手が見つからなかった苛立ち河馬は暴走する。
とにかく暴れて走り回るのだ。
時には街道にまで飛び出て、行きかう人や馬車に激突し、結構な被害が出る。
なので毎年この時期は冒険者組合総出で苛立ち河馬の討伐に向かう。
どのタイミングで苛立ち河馬が暴走するのかわかっていない。
ぱっと見、どの苛立ち河馬が番かわからないのだ。
そんな苛立ち河馬だが、番になれなかった苛立ち河馬はカップルや家族を見かけると、そこ目がけて突進して来る習性がある。
そこで冒険者は苛立ち河馬の群れの近くでカップルをいちゃつかせ、向かってきた苛立ち河馬を討伐しやすい開けた場所に誘導し、落とし穴に落として討伐するのだ。
毎年本当のカップルがいちゃつき役をするのだが、結構危険な役割である。
まず足が速くないといけない。
それも二人とも。
稀にではあるがいちゃつくことに夢中になり、怪我をするバカップルもいたそうだ。
誘導して討伐といっても体長2mもある魔獣だ。
うまく落とし穴に落とせない時もあるし、逃げてきたカップルが落とし穴にはまってしまうこともあったらしい。
だが今年は俺がいる。
簡易的な麻痺毒沼を作って、それで討伐することになった。
「いやあ、でも助かるよ。落とし穴っていっても結構でかいの作るの大変だったんだ」
「小さいと乗り越えてくるしな」
俺は縦長の麻痺毒沼を作っている。
逃げてくる2人はその両脇を走り抜ければいいのだ。
土の色が変わっているのすぐにわかるが、暴走している苛立ち河馬ならそのまま突っ込んでくるだろう。
ちなみにこの毒沼は教授で実験済みである。
靴を履いていても麻痺したので、裸足の動物なら間違いなく麻痺するだろう。
「よーし1本目。いってみよーか」
こうして暴走苛立ち河馬討伐作戦は始まった。
想定とは違うことはあったが作戦はうまくいった。
苛立ち河馬の勢いが激しすぎて、麻痺毒沼に入ったとたんに麻痺して、走れなくなった苛立ち河馬がそのまま転がってしまうのだ。
ゴロゴロドンッ!
ゴロゴロドンッ!
次から次に苛立ち河馬が木に衝突して積み重なっていく。
10頭ほど討伐してその日はお開きになった。
「俺たち何もやっていないよな」
ほとんどの冒険者は討伐した苛立ち河馬の肉運び役になったが、まあいいとしよう。




