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第34話 魂胆は見え見えですよ、お義父様

 次の日、ジョナルド卿は、父親であるライオット家当主エドガスト・ライオットと一緒に、アースキン家にやってきた。


 さすがに無下に追い返すわけにはいかなかったのか、アースキン家の応接間に通される。


 二人の前に、シェイラと父親のボイド・アースキンが並んで座る。


「ほんっとうに、申し訳ない!あの二人を選んで送ったのは私だ。ジョナルドは一切知らなかった。私のせいで、お嬢様の気分を害しました。すいません」


 ジョナルド卿の父が、深々と頭を下げる。


「ええ、そうでしょうね。お義父様の魂胆は分かっています。ジョナルド卿に愛人を作らせ、跡継ぎを作らせようとされたんでしょう?そんな事は経験済みなので分かっています。でも、私は、そんな扱いを受けるほど安い女ではないの。舐めないで下さる?」


 私は、ひどく冷たい喋り方で、ジョナルド卿の父を上から見下ろす。


「確かに。しかし、それは貴族の当主なら誰しも考える事。家と息子の繁栄と幸せを考えると、致し方ないかと…」


 ジョナルド卿の父が、言い訳をした。


「は?その様な女性を子供を作る道具として見る家には、戻れるわけがありませんわね」


 私は、聞き入れない。


「いやいやいや、お嬢様は別だ。それに、息子の事を愛してくれているのだろう。今回は、その愛に免じて戻ってやってくれ」


 ジョナルド卿の父が、食い下がる。


「愛してません。それどころか、マイナスです。顔も見たくありませんわ」


 私は、決して折れない。


「マイナス…」


 ジョナルド卿が、ショックを受けて茫然としている。


「すまない、シェイラ」


 ジョナルド卿が、やっと私に話しかける。


「シェイラ?…さんをつけなさい!無礼者!」


 私は、声を荒げる。


「シェイラさん…彼女達は確かに昔の友人達だが、私から厳しく言ってあるし、父からも妾にするのはやめたと伝えてある。私が愛しているのは、シェイラさんだけです。どうか、私を許してほしい」


 ジョナルド卿が、頭を下げる。


「は?結局、二人を雇うのね。馬鹿にしてるわ。まだ未練があるんでしょう?全然モテないのに、気持ち悪い」


 私は、さらに憤慨する。


「彼女達も、今追い出したら行き場が無いし、昔の知り合いをそんな目には合わせられない。契約を守るのが騎士道というものだろう」


 ジョナルド様が、困った顔で言った。


「お優しい事で!でも、どの女にでも優しい男は最低よ!」


 私は、半泣きで言った。

 そして、1時間に渡って、辛かった過去の話をし続けた。


「分かった、すぐに解雇して出ていってもらう。許してくれ」


 見かねたジョナルド卿が、きっぱりと言う。


「分かりました。なら、一度だけ許します。後、すぐには辞めさせなくていいわ。もしかしたら、自分から辞めたくなるかもしれませんけどね、うふふふふ」


 長時間喋って、少し気持ちが回復してきている。

 私はジョナルド卿の言葉に、やっと満足し、そう言って笑った。

 あの二人は、私が直々に”分らせて”やらなければならない。




「おお、私のシェイラ!会いたかったぞ!」


 ライオット城に帰った私に、いきなり実父のジャックが走り寄ってくる。


「近づかないで!!!この、ゴキ〇リ!」


 私は、震え上がって拒否する。


「とにかく、パパと話をしよう。なっ!」


 ジャックが涙目で、私に訴えかけてくる。


「駄目!超迷惑だから、消えて!」


 私は、断固拒否する。


「なあ、ジョナルド君。なんとか言ってやってくれ」


 ジャックが、ジョナルド様に頼む。


「シェイラ、実は彼はリバースシールドの司令官。つまり、我々の上司、上官なんだ。アンリーヌの件で、我々に直接、力を貸して下さるらしい。仕事と割り切って、話を聞いてくれ」


 ジョナルド様が、彼が上司だと説明する。


 私達は、仕方なく応接室に向かった。


「で、あなたは失踪後にリバースシールドに入って、養育費を作って送金していたと…」


 ティーカップを持ちながら、私はジャックに言った。


「そうなんだ。決して、アンジェラと君を忘れたわけじゃない。手紙と養育費を全て、あのアースキン家の坊ちゃんが突き返してきて、シェイラに届かなかったただけなんだ」


 ジャックが、必死で私に訴える。


「ほう、それで他に何か?」


 私は、一切無視して言う。


「いいえ、ありません」


 私の冷たい目を見て、ジャックが黙る。


「では、消えなさい」


 私は、扉の方を指さす。


「また、来るからねシェイラ。私の力が必要な時は、いつでも言うんだぞ」


 ジャックは、そう言うと、すごすごと退散した。


「シェイラ、本当のお父さんに、その態度は無いんじゃないの?」


 ジョナルド様が、ジャックを擁護する。


「ガチャン!」


 私は、ティーカップを乱暴に置いた。


「クララとリリを、早くここへ」


 私は、二人を連れてくるようにジョナルド様に言った。


「旦那様に色目を使ってしまい、申し訳ありません、若奥様」


 二人は、そう言ってハモると、深々と頭を下げる。


「いいのよ。お義父様の命令だったんでしょう?あなた達は、悪くないわ」


 私は、にっこりと笑いながら言った。


「しかぁあし!お前達の思い上がった態度は、許せないわ」


 私は、少し大きな声を出した。

 クララとリリが、びくっとして体を固くする。


「まず、リリ。そんな貧弱な体で、旦那様に言い寄るとは、いい度胸してるじゃない。ウエストもハムもお尻も全部駄目。若さに甘えて、細いだけのプロポーション。あんたなんて、私の歳になれば、ただの、おばちゃんよ。私の男を寝取りたいなら、もっと鍛えなさい!」


 私は、リリにそう言った。


「はぃいい、私はみじめなゴミ虫でございます、シェイラ様。旦那様に言い寄り、まことに申し訳ありませんでしたぁああ」


 リリは、泣き出した。


「次にクララ。あんた自分が美形だと自覚してて、男を振り回せると思ってるわね?悪いけど、あんた程度の女は、社交界にはごろごろいるわ。ちょっと身分がいい美人だと思って、お高く止まってるんじゃないわよ。あんたのルックスなんて、私の足元にも及ばないわ。そんなんで、旦那様を口説くとは100年早い」


 私は、美形のクララの自信を否定しにかかった。


「いえ、私からは何も。むしろ言いよってきたのは旦那様の方で。元々私は、そんな気はないというか…」


 クララが、私から視線を外して言った。


「い、いや、そんな事をしたつもりはないぞ!」


 ジョナルド様が、慌てて否定する。


「だまらっしゃい!こっちは見てたのよ!」


 私は、テーブルをドンと叩く。


「とにかく、明日から二人は私について廻って仕事をする事。ビシバシ行きますからね!」


 私は、クララとリリに強く言った。

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