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第29話 姉妹の協力

 ライオット城の私とジョナルド様の寝室。

 そこに、邪魔者がいた。

 妹のジャスリン、いや今はリバースシールドのメンバーであるパイロ・ブラスト。


「あらあら、新婚だというのに、家具の大半が中古。ジョナルド卿は、ろくに仕度金をくれなかったのかしら?」


 ジャスリンが、ソファーの背面にもたれながら、鼻で笑った。


「違うわ!私が、気を廻して彼に高級車を買ってあげたの!相場の5倍は、頂いたわよ!」


 ジャスリンの言葉に、私は怒る。


「あらいやだ、お姉様。私はもう死んだ事になっていて、本当の名前で実家に戻る事すら叶わないのですよ。そんな、きつい言い方をしないで。可哀想だと思わないの?」


 ジャスリンが、嘘泣きしながら言う。


「自業自得でしょうが、この犯罪者!」


 私は、その態度に、余計に怒った。


「それより、それを試してみたらどうかしら?」


 パイロは、テーブルの上に置かれたイブニングドレスと、革製のスーツに目をやった。

 これらは、クライシ―卿から贈られた、リバースシールドのメンバーとしての装備だ。


 私はイブニングドレス、ジョナルド様はスーツに身を包む。


 イブニングドレスは、銀色に青と水色の波を描いた刺繍が施されている。

 背中には、青いドラゴンの刺繍。

 妹とお揃いのデザインだ。

 正体を隠す、青い仮面がセットになっている。


 魔法金属で作られた糸が織り込まれ、一応の防弾防刃耐熱性能を持つ。

 動きやすく丈夫。

 魔力を増幅する機能もある、魔法使い用の衣服だ。


 革製のスーツは、ブラックドラゴンの皮に魔法で樹脂コーティングしたもので、非常に柔軟性が高く、破れない。

 ジョナルド様が変身しても破れず、防弾防刃性能が高い。

 柔軟すぎるので衝撃は中に伝わってしまうが、弱点である銀の攻撃を体に接触させない事が出来る。

 他に何の機能もないが、ジョナルド様には、それで充分だった。


「なかなか、決まってますわよ、お二方」


 パイロが、珍しくストレートに褒めた。


「あんたが、私とお揃いで喜ぶなんて、どういう風の吹き回し?」


 私は、そう言った。


「だって、お姉様の同じ物を着せられるのが今までの私。それが、今日は私の方が先だったんだから、こんなに気持ちのいい事はないわ」


 パイロは、そう言うと高笑いした。

 まったく、こういうところは小物臭い。


 その時、私の瞳が青に変わって光った。


「来たわ!もう、同じ手は食わないわよ!」


 私は、そう叫ぶと、窓に向かって水の弾丸を放つ。


 窓が吹き飛び、水の弾丸は夜の闇の中に浮いている、緑のコート姿のエミリアン卿に命中する。

 彼は、それを両手をクロスして受け止めた。


「これはこれは、シェイラお嬢様。なかなか素敵な御召し物で。今日こそ、お迎えに参りました」


 エミリアン卿は、頭を下げて礼をする。


「ふん、一回躍っただけで、すぐに調子に乗る男は嫌いよ。お仕置きしてやるわ」


 私と、パイロ、ジョナルド様は、窓からバルコニーに飛び出し、塔の屋上へジャンプした。

 魔力で身体が強化され、軽々と飛ぶ事が出来る。


「さて、これはどうかな?」


 エミリアン卿は、懐から拳銃を取り出すと、ジョナルド卿に目掛けて放った。

 変身した旦那様は、それを革のスーツを着た腕で受け止める。

 銀の弾丸は腕に、めり込んだが、再生能力ですぐに外に吐き出された。


「これは、もう効きませんか」


 エミリアン卿は、拳銃を投げ捨て、私に殴りかかってきた。

 私は、その拳を払いのけ、彼をヒールで蹴り飛ばす。


「元々は騎士の家系であるアースキン家の娘たるもの、この程度の事は出来ます!」


 私は、そう叫ぶ。


 エミリアン卿の体が、すっと消え、今度はパイロの前に現れて殴りかかる。

 その拳を受け止め、炎で出来た剣で、彼を切りつけた。

 彼は、それを寸前でかわして後退する。


「ふふふ、真似事だけのお姉様と違って、私はアースキン家の血筋を受け継いでいるんですからね。騎士としての魔法も使えるのよ」


 パイロが、そう言って私の方を見る。

 確かに私は母の連れ子だから、アースキン家に伝わる魔法は使えない。

 いちいち、腹の立つ妹だ!


「なかなか、お強いお嬢様方だ。では、これではどうかな?」


 エミリアン卿は、次々と瞬間移動して、私達3人に連続攻撃を仕掛けてくる。

 前後左右、とても目が追い付かない。


「背中合わせになるんだ!」


 ジョナルド様のかけ声に合わせて、私達は背中合わせになって戦う。

 前から攻撃してくるエミリアン卿に集中して攻撃を返す。


「姉妹は協力するものでしょう?背中は任せたわ」


 パイロが、私に言う。


「これで最後にしてほしいもんだわ!」


 私は、そう叫んで従う。


「これでは、埒が明かないな!こうなれば、仕方ない」


 エミリアン卿の体に鱗が浮かび上がり、顔が魚の様になる。

 服がちぎれ飛び、手と足の爪が、するどく伸びる。


「半魚人?魚の獣人化(ライカン)?」


 私は、首をかしげる。


「いや、あの気配は悪魔。海の悪魔、海魔だ!」


 ジョナルド様が叫んだ。


 エミリアン卿の変身した海魔と、ジョナルド卿が両手を組み合わせて力比べの体勢になる。

 最初は互角の力に見えたが、ジョナルド様がジリジリ押され始める。


「今だ!私ごと攻撃するんだ!私は平気だ!」


 ジョナルド様が、叫ぶ。


 パイロは、片手を空中にかざし、そこに大きな火球を作り始めた。

 こうなれば、やるしかない。

 私も、空中に手をかざし、大きな水球を作り始めた。


「ハイドロ・ブラスト!」


「パイロ・ブラスト!」


 私達は、自分のコードネームを、その魔法に付けた。

 二つの魔法の球が、ジョナルド様とエミリアン卿に飛んでいく。


 巨大な水蒸気爆発の音が響き、辺りが霧に包まれる。

 その霧の中から、ゆっくりとジョナルド様が現れる。

 顔に火傷をおっていたが、みるみるうちに回復していく。


「やったようだ。しかし、捕まえて口を割らせる事は出来なかった」


 ジョナルド様は、そう言って無事を告げる。


「ジョナルド様!」


 私は、ジョナルド様に抱きついた。

 旦那様も、私を抱きしめた。


「あーあー、見せつけてくれちゃって。たぶん、これでボディーガードはもう必要ないでしょう。私は消えるわ」


 パイロが、呆れた顔で言った。


「そうね、これっきりにして」


 私は、ジョナルド様と抱き合ったまま言う。


「駄目よ。姉妹の縁は切れない」


 パイロは、そう言った。


「そうね、姉妹は協力し合うもの」


 私は、くすりと笑って返した。


「…」


 パイロは、両手から炎を噴き出して空中に浮き上がると、夜の闇の中に飛び去った。

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