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第23話 妹との因縁

 ある日の夜、私達は、寝室で休む準備をしていた。

 寝巻に着替え、鏡台の前でナイトクリームを顔に塗る。

 そして、髪をまとめていた。


「何よ、どうしたの?」


 私は、鏡に映るジョナルド様が、後ろのソファから私を、じっと見ているのに気がついた。


「いや、シェイラは、いつ見ても肌が綺麗だなと思って」


 ジョナルド様は、優しい笑顔を浮かべて言った。


「そんな事ありません。もう肌の調子は、曲がり角を曲がって、真っ逆さまよ。お手入れは、かかせません」


 私は、そう返した。


「そうか、では、私の為に、いつまでも綺麗でいてくれ」


 ジョナルド様は、立ち上がって私の肩に手を置き、言った。


「いつまでもは、無理よ。だから、今の私を、もっと大事にして」


 私は、肩に置かれたジョナルド様の手の上に、自分の手を重ねた。


「む?」


 その時、ジョナルド様の耳が動いた。


「ズガーン!」


 その次の瞬間、何かが私達の寝室のある城の塔にぶつかる音がした。

 塔が、少し揺れる。


「ガイン!ガイン!」


 金属と石がぶつかるような、音が響く。

 ジョナルド様が、身構えた。


「バリーン!」


 ガラスの割れる音が響き、寝室の窓が吹き飛んだ。

 強い風が吹き込み、部屋の灯りの大半が消えた。


 窓から、銀色の巨体が部屋に入ってくる。

 それは、7mはあろうかという金属の人型で、頭が無く、そこからコーデニスの上半身が見えた。

 中に乗って、操っているようだ。

 彼は、不敵な笑みを浮かべている。


「ブゥウン!」


 鈍い音を響かせて、人型の腕がジョナルド様を、薙ぎ払うように叩く。


「ぐはっ!」


 ジョナルド様は、壁まで、吹っ飛ばされた

 腕が当たった部分が、火傷の様に赤く傷ついていて、再生しない。


 何者かの侵入に気がついた城の者達が、騒ぎ出す声が聞こえてくる。

 それを聞いたコーデニスは、人型を私に向かわせる。


「きゃあ!」


 私は、短い悲鳴を上げて逃げようとする。

 しかし、私は、その腕に捕まってしまった。

 そして、魔法を封じる大きな金属製の足枷手枷をはめられる。


「ふははは!ジョナルドよ、シェイラを返してほしくば、一人で近くの廃教会まで来るのだ。仲間を連れてくれば、この女は即殺す!」


 コーデニスは、そう言い残すと、人型を塔からジャンプさせた。

 そのジャンプ力は、凄まじく、あっと言う間に城から離れていった。




 城の近くの廃教会。

 この近くの住民は、魔物が出る様になってから、全て引っ越してしまっている。

 

 私は、教会の中で、魔法を封じる大きな金属製の足枷手枷を付けられ、十字架に縛り付けられていた。


「うう、こんな事は神への冒涜よ。やめなさい」


 私は、目の前にいるコーデニスに言った。


 近くには、嬉しそうに私を見るジャスリンと、ベビーカーに乗せられた2人の赤ん坊の姿も見える。


「この私に、文句を言うなと教えていただろう!!」


 コーデニスは、私の顔を思いきりビンタした。


「うっ…」


 私は、苦痛に顔を歪める。

 彼との結婚中に、何度か叩かれた恐怖が蘇る。


「贅沢三昧させてやったのに、俺を浮気者だと言いおって!子も作れぬ、お前が言う事ではないわ!」


 コーデニスが、私を罵倒する。


「ううっ」


 私は、悲しくて悔しくて涙を流す。


「自分が美しいから贅沢させなさいなんて、若い頃だけしか通用しないのよ、お姉様」


 ジャスリンが、満足気に私に言った。


「私は、まだ若いわよ!十代にだって見られるんだから!この、ブス!」


 私は、叫んだ。


「何だと!その自慢の顔を焼いてやろうか!」


 ジャスリンは、魔法で手に炎を出して、私に近づいてくる。


「やめろ!」


 その時、教会の大きな扉が開き、ジョナルド様が教会に入ってくる。


「私の妻を、返してもらおうか」


 獣人化(ライカン)した、ジョナルド様の目が、暗闇を背に金色に光っている。


「待っていたぞ、ジョナルド。夫婦共々、ここで死ぬがいい!」


 コーデニスは、銀色の巨大な人型に乗り込んだ。

 金属が、こすれ合う音が響き、ジョナルド様に向かっていく。

 

 銀色の人型が繰り出したパンチを、ジョナルド様が両手で受け止める。

 その両手から、ぶすぶすと黒い煙が上がり、肌が焼ける。


「全身、銀で出来たシルバーゴーレムの力を見たか!」


 コーデニスが、勝ち誇って言う。




「さあ、あなたは、私が、ゆっくり焼いてあげるわ。もう、人質としての意味もないからね」


 ジャスリンが、炎を私の目の前に寄せてきた。


 私の脳裏に、忘れていた昔の記憶が蘇る。

 私は、再婚だった母の連れ子で、ジャスリンは今の父と母の本当の娘だった。


 父は、連れ子の私に気を使い、私の方を優先して可愛がってくれた。

 しかし私は、新しく出来た妹に嫉妬し、いつも、いじめてしまっていた。


 子供だった私は、ある日の庭、私の作った造花で母とジャスリンが遊んでいるのを見て、猛烈に怒った。


「返しなさい!」


 私は、ジャスリンから花を取り上げ、突き飛ばした。


「うわーん!お姉様なんて嫌い!」


 ジャスリンは、初めて魔法を発動させて、私の目の前に炎を出し、身を守ろうとした。


「きゃああ!」


 私は驚き、魔法を暴走させた。

 水流が辺りを薙ぎ払い、母や妹、遊びにきていた子供達、使用人に、怪我をさせた。

 そして、屋敷と庭に被害を出してしまった。


 そして、私の魔法は封印される事になった。


 それから余計に、父と母は私を優先して可愛がるようになった。

 ジャスリンは、それをいつも恨めしそうに見ていたのだった。

 そして私は、我儘放題に育つ事になる。




「そうね、私は我儘な女。あなたに殺されても当然だわ」


 今また、ジャスリンに炎の魔法を向けられ、私は呟いた。

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