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第22話 子爵への陞爵

「…」


 私の意識が戻ると、そこは城の寝室だった。

 横に座るジョナルド様が、私の手を握っている。


 そういえば、今回は精霊が命を削るとまでは言っていなかった。

 ただ、全開で魔力を放出したので、気絶しただけのようだ。

 今回の危機は、国の存亡に関わるものではなかったのか?


「魔物の侵攻は、止まったのですか?」


 私は、ジョナルド様に聞いた。


「ああ、止まったとも!領民も無事だ」


 ジョナルド様が答える前に、後ろに立っていたクライシ―卿が、笑顔を浮かべながら言った。

 ああ、なんて爽やかなイケメンなんでしょう。

 こういう人こそ、私の横を歩くのにふさわしいと思っていたのだが…。

 旦那様の前では、口が裂けても言えない。


「また、無理をなさって!」


 ジェーンが、涙目で私を叱る。


「まあ、あれは仕方ないでしょう。他に方法が無かったわ」


 私は、力なく笑った。


「しかし、この城を守っていたジョナルド卿の力は素晴らしい。ぜひとも、我が騎士団に入ってもらいたいものだ」


 クライシ―卿が、そう言った。


「いえ、私の様な身分では、とてもとても…」


 私の手を握ったまま、ジョナルド卿が首を横に振る。


「はっはっは、その件は、また話そうではないか」


 クライシ―卿は、そう言うと、部屋を去っていった。




 後日、ジョナルド様と回復した私は、王宮に呼び出される事になった。


 大広間で、王の前に膝まづく私達。


「今回の魔物の侵攻を止めた功績、まことに素晴らしいものであった。そこで、ジョナルド卿に名誉騎士の称号を与える。また、その称号を受ける事が出来る身分として、子爵へ陞爵する」


 白髪に、白い髭を蓄えた優しそうな王様が、ジョナルド様に言った。


「ありがたき幸せ!」


 ジョナルド様と私は、王様に礼を言う。


「そして、シェイラよ。お前達の結婚式と披露宴の費用を、私が持ってやろう」


 王様が、悪戯っぽい笑顔を浮かべて言ってくれた。


「ありがとうございます!」


 私は、目をキラキラさせながら、感謝を伝える。


「お前の元義父としての、結婚への祝儀だ。遠慮なく受け取れ。お前の事は、今でも娘の様に思っている。イブラークの件では、苦労をかけたな。やっと、似合いの男性に出会えたようで良かった」


 王様は、にこにこしながら言って下さった。


「勿体ないお言葉痛み入ります」


 私は、深々と頭を下げた。


「しかし、ジョナルド卿。本当にシールド名誉騎士団への移籍を断ってよいのか?格段に待遇が違うぞ」


 王様は、ジョナルド様に確認した。


「私は、自分の騎士団を守り育てていきたいのです」


 ジョナルド様は、そう言った。

 ああ、なんて勿体ない!

 でも、彼なら、そうすると思っていた。


「では、後日、正式に名誉騎士への叙任式を行うとしよう」


 王様は、そう言って締めくくった。




 帰りに王宮の廊下で、白い礼服姿のクライシ―卿に出会った。


「また、ジョナルド卿と一緒に仕事をしたかったのだが、残念だ」


 彼は、そう言った。


「今回の話、クライシ―卿が推薦して下さったのでしょう。ありがとうございます。期待に答えられなくて、すいません」


 ジョナルド様が、答える。


「まあ、いずれジョナルド卿は、私達と一緒に戦う事になる。人は、ふさわしい場所に集まるものだ。それを楽しみにしていよう」


 クライシー卿は、そう言うと去っていった。




「ねえねえ、私達の結婚式と披露宴のプランを練り直しましょう。どうせタダなら、もっと豪勢にしないと!」


 城を出て、自動車に乗り込んだ私は、運転席のジョナルド卿に抱きついて頼んだ。


「駄目だ。自重してくれ。出してくださるだけでもありがたいのに、後付けで負担を増やすでない」


 ジョナルド卿は、認めない。


「ねえ、今夜は許してあげるから…。それでも駄目?」


 私は、甘い声で囁く。


「駄目だ!」


 彼は、がんとして認めなかった。




 森の中にある、大きな小屋。

 コーデニスとジャスリンの、アジトの一つ。

 そこに彼等はいた。


「あの女に、あそこまでの力があったなんて」


 ジャリスンは、爪を噛んで悔しがった。


「仕方ない、今度は直接、あの二人を地獄に送ってやる」


 コーデニスは、小屋に隠してあった、布を被せた大きなものに近づいた。

 彼が、覆っていた布をはぎ取ると、そこには銀色に輝く7mはあろうかという巨大な人型が立っている。


「魔法が効きにくく、獣人化(ライカン)の天敵とも言える銀製のシルバーゴーレムだ。こいつで、直接始末してやる」


 コーデニスが、恨みの籠った目で言う。


「素晴らしいわ、コーデニス。今度こそ、あいつらを両方殺して!」


 ジャスリンが、コーデニスに頼む。

 その瞳は、悪意でギラギラと輝いて見えた。

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