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「結界魔法に付与する魔法は、予め構成を組んで多重魔法にするなら組み合わせの相性とか混ぜ方を試しておくと良いんだ。」


 コルステアくんの説明に耳を傾けながら、昨日付け焼き刃で張った魔石なしの結界魔法について検証を重ねていく。


「つまり、魔法防御結界を目視試算した人の纏まりを包むようにかけたんだよね?」


 徐々に下がりながら逃げていたので、場所の固定が出来なかったからだ。


「成程ね。本来ならそんな無謀な結界魔法なんて魔力が足りずに即行で崩壊するところだけど。メルから多めに受け取った魔力で間に合ったってことだろうね。」


「効果があったのかどうかは検証出来ていないんだけど、少なくとも最初の一撃は防げてたみたいだ。」


 細かくこうやって検証していくと、本当に危うい状況で、付け焼き刃の適当な魔法結界を張っていたのだとヒヤッとする。


 何事もなくて良かったが、次回の為にも真面目に結界魔法を学んでおきたいと切に思った。


「ケインズ、一先ず大事なことから順に結界魔法について基礎から詰め込むから。おねー様の側にいるとまたいつ何が起こるか分からないし。ちょっと大変かもしれないけど、付いてきて。」


 コルステアくんに言われて一も二もなく頷き返す。


 結界魔法をモノに出来れば、第二騎士団ナイザリークの討伐任務でも何かしら役に立つ筈だ。


「結界魔法とは何かって簡単に言うと、魔力を幕状に広げてそこに魔法効果を織り込んでいくことだと思えば良い。慣れて来ると、魔法の展開と同時に魔力を広げて維持していくことが出来るようになる。」


 コルステアくんのこの説明には少しだけ驚いてしまった。


 魔力を広げるというより、付与したい魔法を展開してそれを広げていくのだと思っていた。


「結界魔法に魔石を使うのは、魔力を均等に広げるのが楽になるからなんだ。魔石に魔力を注いでおいて、魔石から均一に取り出すほうが、自分の中から均一に魔力を展開するより制御が簡単になる。」


 これは何となく分かる気がする。


「魔石の個数やそこからの魔力の広げ方は、個人の好みだけど、大抵は師事した人の張り方を真似て覚えていくから、流派みたいになっていくんだ。」


 それは、結界魔法に限らず凡ゆる分野で弟子は師匠の流派を継いでいくものだ。


「因みに、僕の結界魔法は魔石を4つ配置して展開するんだけど、縦に伸ばして高さを持たせたところで横展開して箱状にするんじゃなくて、独自に工夫アレンジを加えていて、4点から上じゃなく斜めに魔力を伸ばして、ぶつかったら反対に飛ばすを繰り返して、網目状に広がった魔力を同一分量に調整する為に中央に集約していくように設計しているんだ。そうすると、自ずと天頂部で半円形に閉じるように展開出来る。」


 と説明されたが、正直良く分からなかった。


 ただ、レイカさんがコルステアくんの魔法結界は綺麗だと言っていたのでその工夫が活かされているのだろう。


「実は、その方法で結界を張ると魔力消費も抑えられることに気付いたんだ。」


 コルステアくんのこういうところが天才肌で、王城魔法使いの中でも結界魔法を張る腕前が一二位を争うと言われる所以なのだろうと思う。


「それと、おねー様の張り方だけど、これも規格外。あの人、基本的に魔石無しで張るでしょ? どうやってるのかって検証してみたんだけど、とんでもないことが分かったんだ。」


 レイカさんだからこれは何が出ても驚かない。


「あの人、結界魔法を張る時、自分とか対象にしたものを中心に魔力を無数の触手を伸ばすように放出して小さな円を作ってるみたいだ。それに魔力を注ぎ続けながら均一に広げて行くんだけど。それを感覚でやってるんだよ。あれももしかしたら僕達には分からない円の概念を持ってるのかも。」


 これまたよく分からなかったが、レイカさんの魔法結界は円形のようだ。


 だが、それなら結果としてコルステアくんのものと違わないのではないだろうかと思ってしまった。


「つまり、まあ何を言いたいかって言うと、おねー様の魔法結界は、半円形ではなく円形。地面の下にまで展開されている訳だ。だから、単純計算で消費は僕の2倍の筈なのに、これまた簡単に張ってくれる。安定率も完璧と来た。」


 本来なら不要な筈の地面の下まで反映されている魔法結界はだからこそ抜群の安定率を導き出しているのかもしれない。


 だがやはり、説明されても余り現実味がなくて、やはりレイカさんは凄いとそれしか分からなかった。


「さて、それを踏まえて、ケインズの結界魔法も検証してみた。魔石なしで展開したこの間の訓練場でのものと、昨日例の施設跡で展開したものだけど、どちらも僕は実際には目にしていないけど。多分、対象物を中心に目視試算して囲い込める範囲を割り出して、地面を範囲指定してそこから半円形を外枠から作り出したんじゃないかってこと。」


 そんな高度なことをあの状況下で出来ていたのだろうかと首を傾げたくなる。


「だから、形はもしかしたら綺麗な半円形じゃなかったかもしれないけど、おねー様のと同じく、魔力で外枠に内側から一定の圧を与えるように膨らませてた可能性が高いってことだね。」


 これまた目を瞬かせるしかない。


「他の誰かには真似出来ないような概念と魔力消費なんだけど。無意識におねー様の魔法結界を参考にしてたんだろうね。」


 それは確かにそうなのだろうと思うが、ちょっと危なかったかもしれないと背筋が冷たくなった。


「言いたいこと分かる? つまりね、今サークマイトがやる気でどんどん増幅魔力を送り込んでくれてる状態ならいいけど、サークマイトからの増幅魔力の受け取りが制限されてる状態や、受け取りが終了した後にそんな使い方をしたら危ないってこと。」


 これには納得出来て、コクコクと頷き返してしまった。


「という訳で、ケインズにはこれから魔石を使った理論立てた結界魔法を学んで貰うからね。」


 前置きは長かったが、自己流は一時封印ということだ。


「はい。お願いします。」


 これは素直にコルステアくんに師事することに異論はない。


「まず、魔石を使って魔力を広げる訓練から始めようか。」


 言ってコルステアくんがゴロゴロと魔石を取り出して目の前に置いた。


 その数、10個くらいだろうか。


「起点とする魔石が1個から10個まで、それぞれ使って魔力の膜を作って自分を覆うこと。はい、これを参考にしてやってみて。」


 言われて渡されたのは一冊の書物だ。


 パラっと中を捲ると、魔石の数によって展開出来る結界の形が解説されている。


 中々親切仕様の解説書だが、読み進めるとそれぞれの形にする為の理論が細々と解説されていて、ちょっと読んだだけで頭がこんがらがりそうになった。


「ケインズもおねー様も多分感覚主義者寄りだろうから、理論を頭に入れろとは言わないけど、ちょっとくらいは参考にしておいてくれる? ケインズは特に。」


 言われて、コルステアくんは本当はレイカさんを案じているのだと気付いた。


 本当はこの場にレイカさんも同席して貰って、危ういのだと言及したかったのかもしれない。


「分かった。俺がレイカさんの分も学んでおいて、何かあった時に出来る限りで伝えていけるように頑張るな。」


 そう返しておくと、コルステアくんは少しだけ照れ臭そうに、でも素直に頷き返してくれた。


「ケインズが頼みの綱なんだから、頼むよ。」


 ぶっきらぼうだが、こういうところがコルステアくんは素直で可愛い弟分だと思う。


 そんなコルステアくんが直接関わることが難しくなったレイカさんのことを自分に託してくれるなら、頑張ってレイカさんとの関わりを維持しつつ中継役を引き受けていきたい。


「分かった、頑張るよ。」


 答えたこちらに、コルステアくんが満足そうな笑み浮かべて返して来た。

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