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 市街での事件から一夜明けた翌日の午後、王族の皆様で集まって昨日の件の内々の報告会が開催されました。


 参加メンバーは国王陛下、王弟殿下、王太子にシルヴェイン王子、王女の自分、そして陛下の付き添いという形で同席した宰相だけです。


 部屋の隅には国王陛下の護衛騎士が控えているようですが空気の様に存在感を消し去っています。


 完全防音盗聴防止の施された部屋で本音トークが炸裂する中で、昨日の各所での事件の全貌が細かく共有されましたが、かなりショッキングな内容でした。


 魔王信者達の元施設に残されていたとんでもない遺産というのは、魔力を吸い上げる魔石と呪詛を仕込まれた動く遺体だったそうです。


 これの放った呪詛をラスファーン王子がシルヴェイン王子を庇って受けたそうなのですが、この呪詛も次々と新しい呪詛を無数に生み出しながら消えていく厄介な造りのもので、間違いなくこちらの聖なる魔法での解呪に対策した代物だったのでしょう。


 解呪しなければ身体を破壊しながら広がっていく呪詛が全身を崩し終わるまで止まらない仕組みだったようなので、ラスファーン王子の腕を切り落とすことで呪詛を途切れさせたということでした。


 その後は、駆け付けたコルちゃんが次々生成されてくる呪詛の打ち消しを、ケインズさんがメルちゃんから受け取った魔力を使って防御結界を張り、遺体と魔石をかなりの力業で燃やし尽くしたのだそうです。


 続いてマティスリン子爵邸内に踏み込んでの捜査内容が王太子の口から報告されました。


 邸内では子爵令嬢と使用人、魔法使いのローブを着けた纏まった数の遺体が態と配置されたように各所で見付かったそうです。


 死後一日以上が経っている様子の遺体の数々は、延焼を途中で防げていなければ、焼死として処理されただろうとのことで、予めそのように見えるように偽装工作されて配置されていたのではないかと王太子が引き続き調査中だそうです。


 つまりそこから、マティスリン子爵が魔法使いを領地に連れ帰って隠す為に行われた、これは隠蔽工作なのではないかと報告会ではそんな予想が立てられていました。


 そこから矛先は井戸の魔物のことに移っていって、井戸を囲む壊れていた古代魔法陣を無理矢理繋ぎ合わせて、魔物が無敵化する再生魔法が施されていたようだとこちらも報告しておくことにしました。


 結果としてそれを破る為に古代魔法陣は破壊したということにしておいたので、アルティミアさんに作用したかもしれない復活の古代魔法のことは言わずにおきました。


 禁忌の魔法で復活したアルティミアさんが晒し者にされるような事態は避けたかったんです。


 ただ、瀕死の重傷を負ったアルティミアさんを治療魔法で無理矢理助けたので、その後の容態が心配だということは溢しておきました。


「さて、レイカルディナの聖獣についてだが。」


 そう次の話題として口火を切った王弟殿下は、ジャックの巨大化のことを聞きたいのでしょう。


「ウチのペット達の性能につきましては、自然発覚したもの以外は把握していませんが、ジャックは空気を読んで巨大化して抱えて運んでくれるみたいです。」


 とこれはもう正直に言うしかありません。


「・・・空気を読んで?」


 王太子が何か引っ掛かっているようですが、それ以上に的確な表現がありません。


 王弟殿下が何か忌々しそうに唸り声を上げています。


「サークマイトの方は、空気を読んで?仲間とケインズを連れ出したとでも言うのか?」


 的確に空気を読んでの用法を掴んでいる辺り、王弟殿下流石ですね。


「厄介な呪詛が展開されたのをなのか、遺産の方が動き出すのをなのか、察知して動いたということだと思いますけれど。コルちゃんはちょっと神様の意向的なものも時折受け取ってるようなところがありますからね。」


「神の使いか。ある意味厄介な。」


 王弟殿下のその気持ちも分からなくはないですが、そんなに忌々しそうに言ってくれなくても良いと思うのですが。


「まあ、差し引きで今のところレイカルディナに都合良く働いているようだからな。それは今しばらく見守ることにしよう。」


 ここで国王陛下の取りなしが入って、王弟殿下も引いたようです。


「因みに、ジャックの方ですが、入室する時にはくっ付いて来たので、今もこの部屋にいる筈ですけど、何処にいるのかは私にも分かりません。」


 言った途端に、部屋の隅に控えている国王陛下の護衛騎士達が身動ぎしたようですが、やはり察知出来なかったのでしょう、居心地悪そうにしていますね。


「・・・陛下の影に勧誘スカウトしたいくらいですね。」


 宰相がにこやかにそんな口を挟んでくれましたが、全く場は和みませんでした。


「さて次に、魔法捜査部隊の新設について、いきましょうか。」


 王弟殿下が国王陛下に窺うように目を向けてそう切り出しました。


 初めて聞く名称ですが、何処に新設されるんでしょうか?


「一先ずは、市街の捜査や活動が主になることを見越して、第三騎士団の下に付けることになった。」


 そう説明した王弟殿下に、首を傾げてみせます。


「今回のような魔法使い絡みの捕物や捜査の際には、魔法使いの力が必要になって来る。何かあった時に毎回、第二の騎士達や王城魔法使いから人を出すよりも、任期を設けて王城魔法使いを出向させで常駐させた方が良いだろうという話が出ているんだ。」


 そう説明してくれたのはこちらの様子に気付いてくれた王太子です。


「今回もそういった専属の人員がいれば、もっと効率良く捜査が進んだだろうと実感したところだしな。」


 これは確かに成程という妙案です。


 これで、“魔法使い協会”の件でスネ気味な王城魔法使い達の気を逸らしてご機嫌取りも出来るかもしれません。


第二騎士団ナイザリークからも出してみるかという話もあるんだ。」


 シルヴェイン王子もそう付け加えてくれて、それから少しこちらをジッと窺うような目を向けて来ました。


「第三のルーディック団長に、ケインズに重点的に魔法を学ばせるのに2年くらい引き取ろうかと冗談混じりに打診されたが、一先ず断った。」


 これにはえっと思わず小さく声が出てしまいました。


「今度、騎士団長会議で話すことになるだろうが、はっきり断るのを手伝いに付いて来るか?」


 これには大真面目にコクコクと頷き返してしまいました。


「その魔法捜査部隊だが、レイカルディナお前も噛んでおくか? 実働人員には入らず顧問とか相談役とか適当な椅子を用意してやれるが?」


 王弟殿下に唐突にそんな話を振られて、反射的にプルプルと首を振りました。


「・・・本当に良いのか? “魔法使い協会”とセットでお前が上にちょこんと座っておくことで、王家の魔法担当としての対外的地位が更に固まることになるが?」


 何だか嫌な囲い込み構成が掛かっていないでしょうか?


「そういった地位の確立によって、守れるものが増える訳だが、これからのお前には必要になるものではないのか? 少なくともつまらん横槍が少しはマシになるだろう。」


 具体的に何のことを言っているのか勘繰ってしまいますが、恐らくケインズさんとかこちらの周りの人達のことを言っているのでしょう。


 確かにそうかもしれませんが、そこまで政治の世界にどっぷり浸かるつもりはないのですが。


「レイカルディナ、まだ実感は薄いのかもしれないが、其方に与えられたものは、能力も地位も立場も何もせずとも隠しておけるようなものではないのだ。」


 国王陛下が真面目な顔で王弟殿下から話を引き継いでいきます。


「自ら立ち上がって振り翳すか、強固な砦を築いて守るか、より高い壁の後ろに隠れるか。どれかを選ばなければ、いずれ暴き立てられて崩壊する。」


 確かに、それはそうなのかもしれません。


「どうしていくのかは、今直ぐ結論を出せとは言わぬが、遠からず選ばねばならないことになるだろう。」


 何というか、ちょっと聞きたくなかった予言のように聞こえました。


「さて、今日ここでどうしても共有しておかねばならないことは出尽くしたようだ。ここでお開きとしよう。」


 そう言って国王陛下が立ち上がりました。


 それに王弟殿下と宰相が続きます。


 自分達もと席を立とうとしたところで、王太子が何か思い詰めたような目をこちらに向けていることに気付きました。


「レイカ、シルヴェインと3人でもう少しだけ話していこう。」


 そんなお誘いを受けるとは思わなくて驚いていると、シルヴェイン王子も王太子と似たような憂い顔になっていることに気付きました。

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