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「それでは、名称は“魔法使い協会”と簡素シンプルに掲げることで決定しましょう。」


 お茶の時間後、補佐官さん達が一斉に謝って来て、抜けると言った人が出なくて済んだのにはホッとしました。


 その後、セルドラルさんの司会で改めて名称の候補を出し合い、決まったのが“魔法使い協会”でした。


 今後の展開次第では立ち位置が変わっていくことも考えられる組織なので、広義に扱えて簡素で広まり易いという観点からの選出でした。


「では、次は殿下が色々とお話し下さったことも踏まえて、活動方針や内容の詳細について、今思い付く限りを出しておきましょうか。」


 初めにドカンと打ち上げておいたので、補佐官さん達はそれに沿ったものや追加するもの、想定になかったものも含めて、遠慮なく色々と意見を出してくれて、有意義な会議の時間になりました。


「魔法使いにとって理想の環境というのは、衣食住が確保された上で、魔法の追求や探究を思う存分出来る設備や資金があること、でしょうね。」


 テスマンさんの濁すことのない理想像には、会議室中の皆が苦笑いを浮かべました。


「ただ、全てを与え過ぎるのは良くないでしょうから、条件付きで魅力的な何かを満たして引き込むのが良さそうですが。」


 セルドラルさんはそう言って、こちらに視線を投げて来ました。


「研究の為の場所と最低限の設備は用意しても良いのではないでしょうか? かえって何処か分からない場所で隠れて怪しげな実験施設を作られてしまうよりは、その場所を協会所有にしておけば、視察も出来るでしょうし。」


「では、王都内に魔法使いの為の研究施設を建設するということですね?」


 セルドラルさんが今度はイオラート兄に目を向けました。


「クランシオン、施設建設の試算を出してみましょうか。最低限必要な設備はテスマンと詰めてみて下さい。」


 イオラート兄がいきなりクランシオンさんにそんなお仕事を振っていますが、その辺りは全くお役に立てそうにないので、お任せしてしまおうと思います。


「あの、その施設を作るとして立地には何か制限はあったりしますか?」


 ちょっと思い付いたことがあって声を上げると、皆さんの視線が来ます。


「そうですね。現在王都は先般の事件で建物が倒壊した地域もそれなりにありまして、今ならばそういった場所の内、まだ復興が進んでいない比較的纏まった土地も残っています。」


 やはりそういう場所を国家で買い取って建設する流れになるんですね。


「あくまで素人の提案なのですが、昨日街に降りて第三騎士団の営所に寄った時に、その周りも中々の被害にあっていたようで復興が始まっていないようでした。」


「そうですね。魔物達が王都内に出没した際、魔物の中でも厄介なものは第三騎士団営所に追い込んで始末していましたから、周囲も相当な被害が出ていたことでしょう。」


 イオラート兄の解説にはなるほどと納得です。


「その第三騎士団営所の側に、魔法使いの実験施設をと。」


 セルドラルさんがにやりと笑いながらこちらに視線を返して来ました。


「“魔法使い協会”は、本部は王城内に置きますが、魔法使い達の登録や相談の窓口はその施設に置くのはどうでしょうか? そこに王城から職員を派遣するという形で。」


「悪くはないでしょう。勿論上の方々からの許可は必要でしょうが。その方が魔法使い達も登録し易いでしょうし。いざ何かあれば、お隣は第三騎士団営所、素早く対応して頂けるし、普段からそれとなく監視もして貰えると。」


 すっかり悪い顔になっているセルドラルさんですが、補佐官の皆さんは頷いてくれているようなので良しとしましょう。


「総務のコルドールくん、第三騎士団営所周辺の復興状況と計画、支援要請の有無など直ぐに調べておいて下さい。但し、あくまで調べるだけで具体的に何かをしてはいけません。そして、この場で話されたことはくれぐれも漏らさないように。」


 コルドールさんにもお仕事が降って来たようです。


「アレクシスは今日の会議を受けて御前会議で発表する“魔法使い協会”の概要の資料作りを。」


 セルドラルさんが纏めに入ってくれていますね。


「あの、個人的なお願いになるのですが。バステルさん、この国の法律を勉強したいので、法律全書的なものと解説書、過去の判例集などでわたくしが閲覧可能なものを見繕って届けて貰えませんか?」


 また一斉にこちらに視線が来て、不勉強なことが少し恥ずかしくなりますね。


「一から、学ばれるおつもりですか?」


 バステルさんが驚いたように問い返して来るのに頷き返します。


「全く知らずにこの立場にいるのは流石に恥ずかしいので、付け焼き刃でも学んでおきたいです。」


「どなたか法律に詳しい者を講師としてお迎えになりますか?」


 そう言われますが、まだその段階ですらないですからね。


「いずれはお願いするべきでしょうが、一先ず隙間時間に独学で知識だけは入れておきたいので。」


「・・・承知致しました。」


 戸惑いがちにそう返事をくれたバステルさんですが、直後に考え込んでいる様子だったので、きちんと見繕って持って来てくれそうです。


「レイカ殿下。」


 そこへイオラート兄の低い声が掛かります。


「例の資料の読み込みもされているのでしょう? 毎日ラスファーン王子のお世話に聖獣達のこと、守護の要関連の報告を聞きに王城魔法使いの塔にも顔を出そうとしているとか? 何処に隙間時間をお作りになる予定です?」


 相変わらず低い声の追求にギクリと肩が上がってしまいました。


「あー、あの資料は、一先ず纏めて禁書扱いで処理してしまおうかと思っていますし。」


「図書館司書が禁書魔法を教示しに来るのではありませんでしたか? あれは中々複雑な魔法だと聞いておりますし、修得には普通なら時間が掛かるそうですよ? それに午後からはラスファーン王子を第二騎士団ナイザリークの魔法訓練場にお連れして、見守られるのでしょう? ハザインバースからサークマイトまで聖獣様達との触れ合いもあれは最早不可欠な公務です。守護の要の件は目立った進展はまだないと聞いていますので、しばらくは放置で構いません。さて、何処に隙間時間が?」


 ズバズバと言い放ってくれるイオラート兄ですが、何故か隣からアンネリアさんが差し出した予定帳を覗き込んでの発言だったようです。


「時間は捻り出すものだと何処かの財務長官様が仰っていましたよ?」


 すっと視線を明後日の方に向けながら言い訳してみると、ふうと溜息を吐かれました。


「いくら非常識な読書速度だと言っても、疲れない訳ではない筈です。過労でお倒れにでもなられたら、貴女様を最低でも数日間はベッドに縛り付けようとするのは私一人ではありませんからね。覚えておいて下さい。」


 そんな脅し文句を口にしたイオラート兄の背後にメラメラと燃える炎の幻影が見えた気がしながら、ヘラヘラと笑い返してしまいました。


「という訳でアンネリア殿、殿下の予定調整はくれぐれもしっかりと頼む。」


「畏まりました。お任せ下さい。」


 何故かガッチリとタッグを組んでいるイオラート兄とアンネリアさんをじっとりした目で見守っていると、セルドラルさんの微笑ましげな視線を感じました。


「さて、それではそろそろ本日の会議は終了といたしましょうか。それでは補佐官達はそれぞれ与えられた業務を進めるように。明日のまた同じ時間にこちらに集合して経過報告をすることとする。」


 そんな纏めの言葉に皆が頷き返して解散となりました。

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