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 ザッと室内を見渡してみると、補佐官達も真面目な表情でそれぞれ考え込んでいるようです。


「では、魔法使い支援委員会などはどうでしょう?」


「魔法使い救済協会?」


「でも、魔法使い達を釣り上げられる餌って何でしょうね?」


 補佐官達がポツポツと発言し始めて、素直にこちらの意見を尊重してくれたことにはホッとします。


「間に合うんでしょうか? エダンミールの魔法使いは、実は先般の守護の要半壊事件に関わっていたという噂が上層部で囁かれているとか。」


 言い出したのは宰相室のアレクシスさんですが。


 話すべきかどうしようかと思っていたところに真っ直ぐ切り込んで来てくれましたね。


「皆様は、わたくしの補佐官と相談役ですから、これからわたくしが話すことも上手く飲み込んで下さると信じています。」


 言って見渡してみると、皆がハッとした顔になってこちらを向きました。


「先般の事件にエダンミールの魔法使いが関わっていたことは間違いがありません。ですが、誰がと特定することは出来ませんでした。エダンミールのとある方との個人的な話し合いの結果、二度とそのような事件は起きないと約束しては貰いましたが、それ以上の追及はしないことになりました。但し、これからこの王都で問題を起こした魔法使いから、過去の罪状が明らかになれば、こちらでその魔法使いを捕らえることは問題ないでしょう。」


 言った途端に、ギョッとした顔になった人から強張った顔になった人、そしてイオラート兄がガタンと席を立ちました。


「レイカ殿下。その話は王弟殿下にはなさいましたか?」


「いいえ。聞かれませんでしたので。それに、その方とわたくしが話し合ったことはご存知でしたし、話し合った詳細はとある理由で話せません。」


 正直にそう答えると、イオラート兄は何故か泣きそうな顔になりました。


「どうしてそんな・・・。ラスファーン王子の件が婚約予定としてあっさりと纏まったのも、そのお方との交渉内容の一つだったのでは?」


 確かに、冗談のようにそんな話もしましたが。


「あ、えー。ラスファーン王子のことはまあ、色々とご本人ともその人とも話していまして、利害の一致?・・・なんでしょうかね。何故彼がこの契約婚約を受け入れてくれたのか、ちょっと疑問なところはありますけれど。」


 とここまで話したところで、半分くらいの皆さんに首を傾げられてしまいました。


「ラスファーン王子とは、そもそも契約婚約の予定なのですか?」


 驚いたように問い返して来る総務のコルドールさんに苦笑いです。


 意外に情報が降りてないんですね。


「ラスファーン王子は守護の要の件のエダンミール側からの賠償の一つだという話は聞いていませんか?」


「そういう形だということは聞きましたが、それならば王女殿下が婚約しなくても良いのでは?」


 法務のバステルさんですね。


 これも隠さず話すべきか迷いどころです。


「ラスファーン王子は、これまた色々訳ありなんです。一先ずこの宮で体調面を含め保護する必要があって、監視と先般の事件の未解決部分についての協力を要請しています。」


「では本当に、形ばかり婚約の予定ということでしょうか?」


 冷たい声音の財務のクランシオンさんに、頷き返します。


「彼の余命は、はっきりしていませんが、恐らく数年ではないかと見立てられています。その間だけの形ばかりのお話になりそうです。」


 ここははっきりと明かして問題ないでしょう。


「・・・失礼ながら、王女殿下には不透明なところが多過ぎるようです。それを上の方々が容認する理由も良く分かりません。それでも我々は従う必要があるのでしょうか?」


 アレクシスさん痛いところを突いてきましたね。


 これには苦笑いを返すしかありません。


「アレクシス、陛下はそれでも王女殿下を抱えると決められたのです。そうするだけの理由がお有りになるのでしょう。そして、貴方がたには王女殿下の補佐を命じられたのですから、従いなさいということです。もしもどうしても従えないようなら、今の内に補佐官を辞退しなさい。」


 セルドラルさんがアレクシスさんを窘めつつ、他の補佐官さん達にも最後の意思表示を促してくれましたね。


 これからも、変わらず話せないことは話せないままなので、それでも構わないという人に補佐して貰うのが一番でしょう。


「セルドラル殿、私達は色々と盛大に勘違いしていたようなのですが、王女殿下は噂されているような救国の聖女として王家が抱えた物知らぬ寵児の深窓のご令嬢などではなかったということですね?」


「その上、秘匿事情を山程抱えた油断ならない人物で、我々補佐官は失礼ながら王女殿下がとんでもないことを初めないように監視したり止めたりするのも仕事の内なのでは?」


 バルテルさんにクランシオンさん、ちょっと酷くないでしょうか?


 失礼ながらって枕詞を付けたら何を言っても良いってものではないと思いますよ。


 一人でこっそりむすっとしていると、不意にイオラート兄が笑い出しました。


「ははははっ。君達はそんなことを本人を目の前にして当てこすらなければ、上からの意図も汲めずに黙って励むことも出来ないのですか?」


 突然来たイオラート兄の鬼発言に、補佐官さん達の顔が一斉に青ざめました。


「とても残念ですね。王弟殿下には私の方からご報告しておきましょう。」


 イオラート兄のこれまで見た事のないそれはそれは背筋の凍るような笑顔です。


 流石は王弟殿下の下で働いているだけあります。


 王弟殿下は直接的な氷結ですが、イオラート兄は低温で燃え上がる目には見えない炎で気付いたら低温火傷してるようなちょっとタチの悪いタイプのようですね。


 将来の財務には近寄るの止めておきましょう。


「イオラート殿、そう若い子達を苛めるものじゃありませんよ?」


 とここで、にこにこ笑顔のカリアンさんが割って入ってくれました。


「若い? 私とそう歳は変わりませんが? 大体、ウチのレイカちゃ、いえ王女殿下に二心があるような者達など側に侍らせたくありません。」


 本音がダダ漏れだしたイオラート兄、大丈夫でしょうか?


「あの、わたくし的には真面目にお仕事してくれるなら、二心があろうが嫌われていようが実は監視員だろうが問題ないですよ? そもそも日々世界から派遣された監視員にがっちり監視されつつ誘導されてるみたいですし、いつ消されるか分からない身ですし。ある日突然能力消失なんてことも起こり得る訳ですし。まあ、チート能力頂いてる内に出来ることはしておこうと思ってるだけですから。お構いなく。」


 こちらも本音を漏らしておくと、補佐官さん達がはっとしたような目をこちらに向けて来て、ちょっと居心地悪くなりました。


「ちょっとクールダウンしましょうか。お茶をお願いします。」


 後ろで黙って控えていてくれたアンネリアさんにお願いしてみます。


「畏まりました、殿下。」


 そう返してくれたアンネリアさんの声音が優しくて、小首を傾げてしまいました。


 テーブルにお茶と茶菓子が配られていきますが、今日の茶菓子は一口大の摘める焼き菓子のようです。


 イオラート兄がさっと席を立ってこちらに回って来ると、目の前の取り皿に焼き菓子を取ってくれます。


「コルステアの婚約者ロザリーナ嬢の手作りを差し入れさせて頂きました。毒見させて頂きます。」


 断って焼き菓子を齧ってくれたイオラート兄ですが、止める間もなかったですね。


「ロザリーナさんお手製だったんですね? 毒見は不要ですから次からはしなくて大丈夫ですよ?」


 それにしてもロザリーナさん、食堂でコルステアくんと共に焼き菓子作りをした時より格段に腕を上げていますね。


 見た目はもう売り物レベルです。


「そういう訳には、これから殿下ももう少し御身の周りにはお気を付け下さい。」


「ええ。でも、毒見は本当に大丈夫です。目視解析出来ることが判明したので。」


 イオラート兄と他の人達もこの会話が聞こえていたのか目を瞬かせています。


「目視解析、ですか? 毒が入っているかどうか見たら分かるということでしょうか?」


 突っ込んで来たのはカリアンさんです。


「見ようと意識すれば見えるんですけれど、取り入れて人体にどれくらい影響があるのかは分からないです。接種すれば死ぬような猛毒とか、眠くなって即落ちな睡眠作用のあるものなら弾けそうですけど。あと、体質に合わないとかそういうのを加味して巧妙に組み合わせて仕掛けられたら確実には分からないですね。」


「・・・ああ、原理の分からない特殊能力の方ですか。でも、それがあるだけで安全確保が楽になりそうですね。判明されて良かった。」


 そう言って終わらせてくれたカリアンさんには感謝です。


 その能力ちょっと調べさせて下さいとか、試させて下さいとか言われると面倒なので。


「殿下、何故そんな能力の必要性を考えられたんでしょうか? まさか、エダンミールで何かあったとかではありませんよね?」


 イオラート兄がまた背中に目には見えない炎を燃やし始めましたよ?


「・・・ナンノコトカワカリマセン。」


 すっと目を逸らしておくと、イオラート兄の目がすっと挟まりました。


「ちょっとエダンミールに用事が出来ましたので、私はここで失礼」


「しないでください! もう直ぐキースカルク侯爵も戻って来るんですから、大人しく帰りを待ってて下さい!」


 ふうと仕方なさそうに息を吐き出して背後の炎を消したイオラート兄ですが、兄妹愛が重過ぎますね。


 という訳で場を誤魔化す為に焼き菓子をひと齧り、素朴な味付けにホッとしてしまいますね。


 これですよという手作りの良さが詰まっています。


「ロザリーナさんに、とても美味しかったですとお伝え下さい。落ち着いたら一度お茶に誘いたいですとも伝えておいて貰えますか?」


「承知致しました。それはそれは喜びそうですが、他からのお誘いが激増しそうですが、構いませんか?」


 それにはチラッとアンネリアさんを振り返ってしまいました。


 そのお手紙を捌いて処理してくれるのはアンネリアさんですからね。

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