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 大勢の護衛に囲まれて、団長殿下とクイズナー隊長の隊まで引き連れて第三騎士団の営所を訪ねることになったレイカさんは、容易に近付けないようなお姫様扱いだ。


 そのレイカさんが普通に接する自分に向けられる視線は、微妙に複雑そうなものだった。


 営所の中に入ると、直ぐに出迎えに第三騎士団のルーディック団長が出て来て団長室に案内された。


 ファデラート大神殿から戻って直ぐに第三騎士団を訪ねた時に通された部屋だが、今回は部屋の中には入れて貰ったものの、隅に立って待機しておくことにする。


 第二騎士団の団長のシルヴェイン王子とクイズナー隊長、王女殿下のレイカさん、そしてあちらはルーディック団長にコルターズ隊長と副隊長の父マーシーズと来ては、自分の存在の場違い感が半端ない。


「さて、シルヴェイン王子殿下並びにレイカルディナ王女殿下、ようこそ第三騎士団へ。」


「ルーディック団長、突然お邪魔して申し訳ない。ウチのケインズとレイカの聖獣達が世話になっている。帰還してから中々お礼に伺えなくて申し訳なかった。」


 確かに、自分の上司の団長として第三騎士団のルーディック団長に営所で間借りさせて貰っていることに改めてお礼を言うのは当然なのかもしれない。


 トイトニー隊長に話を付けてもらってそれで終わった気になっていた自分が少し恥ずかしくなった。


 当事者なのだから、この場に呼ばれたのも当然のことだったのだ。


「ルーディック団長、わたくしからもお礼申し上げます。不在中の出来事で、直接お話しも出来ずでご迷惑をお掛けしました。」


「いえいえ、我が第三騎士団としましては、レイカルディナ王女殿下にこれで少しでもご恩返しが出来たなら重畳。」


 ルーディック団長は以前からちょっと思っていたが、どうやら少々レイカさん贔屓のようだ。


 シルヴェイン王子に向ける団長同士としての顔と、レイカさんに向ける表情が違う。


「良かったです。もうしばらく、今後の方針が決まってサークマイトのほうを王城へ入れる許可が出るまではお世話になりますね。」


 にこりとレイカさんも話を纏めてしまって、自分の第三騎士団営所生活はもう暫く継続しそうな雰囲気だ。


「さてさて、それはそれで良いとして。今日は街中での魔法使い絡みの件で降りて来て下さったと聞いております。シルヴェイン団長としては、そろそろこの件に重い腰を上げて頂けるのでしょうか?」


 ルーディック団長としては、この件を話し合う為にここに通したのだろう。


「それについては、今上でも方針を協議中のようだ。簡単な問題ではなさそうで、またもやエダンミール絡みだ。」


 そう第二騎士団団長の立場で話し始めたシルヴェイン王子だが、これを自分は聞いていて良いのだろうかと少し腰が引ける。


「そう悠長なことを言っていられない状況だと今日の事件で感じなかったのだろうか?」


 これに、シルヴェイン王子が目を細めつつ小さな溜息と共にレイカさんにチラッと視線を向けた。


 それを受けてレイカさんが室内をサッと見渡したようだ。


「ルーディック団長。それについては、不本意ながらわたくしから事情説明を。」


 それを受けてルーディック団長も室内を見渡す仕草をした。


「この二人は飲み込める筈ですが、不都合でしたら外させますが?」


「いいえ、広めないで下さるならそれで良いです。今日の出来事を見た隊長が報告を上げればある程度はルーディック団長のお耳にも入るでしょうが。誤解のないように先に概要をお話ししておきますね。」


 中々に慎重な前置きだ。


「やれやれ、王女殿下が飛んでこられたから何かあるとは思いましたが、貴女絡みでしたか。」


 その溜息混じりのルーディック団長の言葉にレイカさんは少しだけ首を引っ込めて小さくなっている。


「えー実は、エダンミールで色々ありまして、帰りにエダンミールの中枢に居たかもしれない魔法使いと一緒に帰って来ることになってしまいまして。その兼ね合いも若干あるようですが、それなりの数の魔法使いがカダルシウスに移動して来ているようです。」


 それは言い難そうに概要をなぞるように説明しだしたレイカさんに、ルーディック団長が目を細めて険しい顔になった。


「エダンミールの魔法使いは、この間の騒動を引き起こした元凶ではありませんでしたかな?」


「そうですね。その件に関わっていた者もいると思うのですが、特定は出来ません。その上で、前回の件の実行犯で本当の元凶の魔法使い達がエダンミールに帰国出来ずに王都にまだ潜んでいるようなのです。」


 それが、先程魔法陣を起動させてウィルメインに呪詛を仕掛けたあの魔法使いのような者達なのだろう。


「それを見分けるのは内情をはっきりと知る者でもなければ不可能です。」


「確かにそうでしょうな。」


 眼光がどんどん鋭くなるルーディック団長に、レイカさんの肩に力が入っているのが分かる。


「ですから、それを探るのはおいおいとして、まずは王都の魔法使い達の掌握を目指そうと思っています。」


「・・・それはまさか、王女殿下が、ですかな?」


 ルーディック団長が首を傾げながら聞き返すのも尤もで、話を聞く限り自分にもそう感じた。


「・・・ええ、まあ。ここだけの話ですが、本日叔父様とお父様にもそのように言われました。補佐官を必要なだけ付けるから中心になって王都に移住して来た者達も含めて民間の魔法使い達を纏めて組織登録させて管理するようにと。」


「・・・失礼ながら、お出来になるので?」


 これもまたルーディック団長に同意してしまいたくなるような無茶振りではないかと思う。


「私の所為だから頑張るようにと。それは優秀な補佐官を沢山付けて下さるのではないですか?」


 答えたレイカさんも投げやりな言い方だったが、先程リッセンと対等にやり合った後に話していた言葉を思い出すと、実はもうレイカさんの中にはきちんと構想があるのではないだろうか。


「・・・それは、お手並み拝見させて頂くとして、急いで貰わなければなりませんぞ?」


「そうですね。叔父様はお仕事は早そうですから、明日には補佐官が挨拶に来ると思っていますが、法整備して魔法使いを登録させるのには少し時間が掛かる筈です。それを悠長に待っていられないのは分かりますから、現行法に王都内での魔法使用に制限を設けたり魔法使いの雇用契約書を届け出る制度を追記出来ないか急ぎで検討してみるつもりです。」


「成程、それでは第三騎士団の介入した魔法使い絡みの事件での捜査権限の拡張も、検討して頂くことにしましょうか。」


 ルーディック団長がレイカさんに対してもお仕事の顔になったようだ。


「捜査に法の壁があるんですか?」


「そうですな。魔法使いというのは貴重な存在です。偉い方に魔法至上主義の思想をお持ちの方も多いですから、魔法使いというだけで手を出せない領域があったりするのですよ。」


 そう真面目に返したルーディック団長に、レイカさんが溜息を漏らしていた。


「あー、それは私もこれから苦労する壁かもしれませんね。覚えておきます。」


 一気に沈んだ声になったレイカさんに、ルーディック団長が顔付きを緩めてふっと微笑んだ。


「まあ、魔法使い共もウチの王女殿下に絆されたというなら見る目があるのかもしれませんな。後はお行儀良くしておくなら、この王都の街に受け入れてやらなくもありませんが。殿下も仰った通り、後は地道な捜査で犯罪者共は徐々に炙り出していけば良いことですからな。」


 サラッと言い切ったルーディック団長はレイカさんを持ち上げつつも、魔法使い達には目を光らせておくつもりのようだ。


「さて、王女殿下はサークマイトを見にいらっしゃったのでしたな。マーシーズご案内して差し上げろ。」


 父にそう案内を頼んだルーディック団長はまだウチの団長やクイズナー隊長と話すことがあるのだろう。


「ケインズもレイカと一緒に行って良いぞ。」


 団長殿下からそう声を掛けられて頭を下げる。


 何処かホッとした様子のレイカさんが席を立って、続いて部屋を出たところで目が合うと少しだけ困ったような笑顔を向けられた。


「ケインズさん済みません。実はこの通りお仕事が更に増えまして。これからもコルちゃん達のお散歩や神殿に行くなら送り迎えやメルちゃん絡みのこととか、ケインズさんには色々お願いするかもしれないのですけど。」


 それは申し訳なさそうに言いだしたレイカさんに笑顔を向ける。


「分かっていますから大丈夫ですよ? どんなことでも殿下のお手助けが出来ることが嬉しいんです。是非お任せ下さい。」


 周りを気にして少し取り繕った口調で返すと、レイカさんは少しだけ嬉しそうな、それなのに困ったような笑顔になった。


「ケインズさんが優し過ぎるから、甘え過ぎてしまっているのだと思います。もしもご負担でしたら、その時ははっきりそう言って下さいね。」


 レイカさんのその言葉には、ギュッと胸を掴まれたような気がした。


 これだから、身の程知らずと言われても諦め切れなかったのだ。


「はい。」


 口に出してはそう返事をしたが、心の中ではもっと甘えて下さって構いませんと付け加えておいた。

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